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3章
魔法無効の恩恵と……
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窃盗犯を捕まえた俺は、ようやくピザを食べることが出来た。セレストと共に大通り沿いのベンチに座ってピザを味わう。
「熱々の料理、とろけるチーズ、トマトの酸味と甘味のちょうど良いピザは美味しい。辛みを足すと更に美味しい」
「五回以上かけるのはタバスコ掛けすぎじゃない?」
「いつもこうだぞ」
「今後の健康が心配」
「食事のために運動はしているぞ。散歩とか」
「健康のために運動しようね、その食生活ヤバイから」
「人の事言えるのかよ……」
ハチミツを飲み干したセレストを思い浮かべる。セレストも暴食の割には体は細い。努力しているのが分かる。俺もちゃんと体を管理しないと。
ピザを食べ終えた俺たちはまた町へと戻った。
「セレストのおすすめの屋台とかある?」
「揚げたこ焼きとか」
「いいね。調味料かけ放題だ、ソース、かつお節、マヨネーズ、青のり、チーズをかけても良いな」
「魔法が出ないから、食べすぎでは?」
「ここまで我慢していたんだ、これくらいは掛けるよ」
「シナモンをスプーン三杯が加減だったの……」
それからセレストと屋台を巡った。その全てにいつも通り大量の調味料をかけた。久々に心休まる休日だった。
「城に行ってみない?」
「良いけど、何かあったっけ?」
「ほら、褒賞金」
「ああ、そうだな。貰えるものは貰おう。セレストにたかるのも悪いし」
俺たちは大通りを歩いて城まで着いた。城の外観は綺麗だが、中へ入ると相変わらずの破壊された建物だ。
「おお。悠人様か。丁度身代わ……。王が迎え入れる準備をしていますよ。治安維持のご協力の褒賞金を、お受け取りください」
「不穏な言葉が聞こえたけど大丈夫だよな?」
「ここの王さま評判は悪くないよ。気配りはするし、仲間思いなのも事実。城は壊すけどね」
「この前みたいにならないようにしないと」
騎士に案内されて、俺たちは玉座まで来た。複数人の騎士と料理人が控えている。彼らが壊れた武器を片付けているのとすれ違った。
「おう、悠人か。また変わった格好だな。戦おうぜ」
「今日の要件はバトルじゃない。人助けしたから騎士から褒賞金を貰いに来いって言われたんだ。」
「おお、そうか。じゃあ大臣、褒賞金の支度を」
ドラクの指示で動いたのは、豪華な服を着た大臣だ。年老いた男性で、人を呼んで褒賞金を用意してくれた。
「畏まりました。悠人様、これをお納めください」
俺は大臣から、袋いっぱいの金貨を手渡しした。けれど大臣が手を離す前に質問した。
「多すぎでは? 俺は窃盗犯を捕まえただけなのに」
「十分な功績です。あの窃盗犯はなかなか捕まらない大罪人でした。それに地図と鍵の件では、解決に助力してくれる。あと、王の暇潰しの相手もしていただいた」
「そうでしたか、お役に立てて何よりです」
「それと折り入って頼みが……」
「遠慮しておきます」
袋を引っ張ったが、大臣は離さない。
「一日一バトルでも良いですから! 王の相手を」
「俺は一般人ですので!」
「この金貨には協力費が含まれます!」
「そこだけ差し引きますから!」
「この老体を助けると思って!」
「それは、確かに助けたいですけど」
「私、戦いませんが」
「他人事かよ!」
金貨の袋を引っ張るから、押し付け会う形なってきた。そんな俺にセレストが苦笑いしている。
「力強いな、じいさん!」
「腰をやってしもうたから戦えん!」
「ほーう。腰が治ればやってくれる訳だな?」
大臣の背後にドラクが立った。彼は大臣に手をかざす。
「ヒール」
「おお。久しぶりに直立出来る!」
「じいや強かったもんなー、じゃあやろうぜ」
「嫌じゃー!」
ドラクが斧を構えたので、俺は引き下がる。大臣は思いの外善戦した後に、倒れた。ドラクにヒールをかけて貰った大臣は下がった。
城は大分ボロボロで、魔法使いや騎士が修復作業に勤しんでいる。
俺は褒賞金も貰ったし帰ろうとしたが、肩に手を置かれた。
「ドラク。俺の要件は終わったから」
「金、余計に貰ったよな」
「返すから! 帰してくれ!」
「じゃあ返せ、体でなぁ!」
こうして始まったバトル。俺は回避に集中して、良い修行になった。スカーフとの連携も慣れてきた。どっと疲れが出たのだが。
「飯食っていけよ。相手して貰ったかんな」
「有り難くもらう。今回だけな」
「そう言うなって、俺も強くなりてえからな」
「やっぱり、リュセラに勝ちたいのか?」
「ああ、負けっぱなしだからよ」
「リュセラの魔法は強かった」
「だろうな。リュセラは勇者パーティーの魔法使いだからな」
「そうなのか! だから伝説って呼ばれてたのか」
彼の魔法に納得した。敵の言っていた、世界を救える魔法使いの意味も。体で体感した。
「本当に勝てるのだろうか……」
「勝てなければ何度でも挑もう。でしょ?」
「ああ、そうだな。鍋を助ければ、リュセラは解放されるから。俺たちで何度も挑戦する」
セレストは笑った。年相応の少女なのに、どこか昔の安らぎに触れたような。柔らかな笑み。
父さんみたいな考え方のセレストに俺もそんな笑顔になる。
「それと、明日は覚悟してね。たぶん午前中は魔法まみれだから」
「魔法無効が切れるの忘れてた!」
明日への不安は俺の食欲を減衰させた。だが、食べることを止められず、夕食を楽しんだ。
「熱々の料理、とろけるチーズ、トマトの酸味と甘味のちょうど良いピザは美味しい。辛みを足すと更に美味しい」
「五回以上かけるのはタバスコ掛けすぎじゃない?」
「いつもこうだぞ」
「今後の健康が心配」
「食事のために運動はしているぞ。散歩とか」
「健康のために運動しようね、その食生活ヤバイから」
「人の事言えるのかよ……」
ハチミツを飲み干したセレストを思い浮かべる。セレストも暴食の割には体は細い。努力しているのが分かる。俺もちゃんと体を管理しないと。
ピザを食べ終えた俺たちはまた町へと戻った。
「セレストのおすすめの屋台とかある?」
「揚げたこ焼きとか」
「いいね。調味料かけ放題だ、ソース、かつお節、マヨネーズ、青のり、チーズをかけても良いな」
「魔法が出ないから、食べすぎでは?」
「ここまで我慢していたんだ、これくらいは掛けるよ」
「シナモンをスプーン三杯が加減だったの……」
それからセレストと屋台を巡った。その全てにいつも通り大量の調味料をかけた。久々に心休まる休日だった。
「城に行ってみない?」
「良いけど、何かあったっけ?」
「ほら、褒賞金」
「ああ、そうだな。貰えるものは貰おう。セレストにたかるのも悪いし」
俺たちは大通りを歩いて城まで着いた。城の外観は綺麗だが、中へ入ると相変わらずの破壊された建物だ。
「おお。悠人様か。丁度身代わ……。王が迎え入れる準備をしていますよ。治安維持のご協力の褒賞金を、お受け取りください」
「不穏な言葉が聞こえたけど大丈夫だよな?」
「ここの王さま評判は悪くないよ。気配りはするし、仲間思いなのも事実。城は壊すけどね」
「この前みたいにならないようにしないと」
騎士に案内されて、俺たちは玉座まで来た。複数人の騎士と料理人が控えている。彼らが壊れた武器を片付けているのとすれ違った。
「おう、悠人か。また変わった格好だな。戦おうぜ」
「今日の要件はバトルじゃない。人助けしたから騎士から褒賞金を貰いに来いって言われたんだ。」
「おお、そうか。じゃあ大臣、褒賞金の支度を」
ドラクの指示で動いたのは、豪華な服を着た大臣だ。年老いた男性で、人を呼んで褒賞金を用意してくれた。
「畏まりました。悠人様、これをお納めください」
俺は大臣から、袋いっぱいの金貨を手渡しした。けれど大臣が手を離す前に質問した。
「多すぎでは? 俺は窃盗犯を捕まえただけなのに」
「十分な功績です。あの窃盗犯はなかなか捕まらない大罪人でした。それに地図と鍵の件では、解決に助力してくれる。あと、王の暇潰しの相手もしていただいた」
「そうでしたか、お役に立てて何よりです」
「それと折り入って頼みが……」
「遠慮しておきます」
袋を引っ張ったが、大臣は離さない。
「一日一バトルでも良いですから! 王の相手を」
「俺は一般人ですので!」
「この金貨には協力費が含まれます!」
「そこだけ差し引きますから!」
「この老体を助けると思って!」
「それは、確かに助けたいですけど」
「私、戦いませんが」
「他人事かよ!」
金貨の袋を引っ張るから、押し付け会う形なってきた。そんな俺にセレストが苦笑いしている。
「力強いな、じいさん!」
「腰をやってしもうたから戦えん!」
「ほーう。腰が治ればやってくれる訳だな?」
大臣の背後にドラクが立った。彼は大臣に手をかざす。
「ヒール」
「おお。久しぶりに直立出来る!」
「じいや強かったもんなー、じゃあやろうぜ」
「嫌じゃー!」
ドラクが斧を構えたので、俺は引き下がる。大臣は思いの外善戦した後に、倒れた。ドラクにヒールをかけて貰った大臣は下がった。
城は大分ボロボロで、魔法使いや騎士が修復作業に勤しんでいる。
俺は褒賞金も貰ったし帰ろうとしたが、肩に手を置かれた。
「ドラク。俺の要件は終わったから」
「金、余計に貰ったよな」
「返すから! 帰してくれ!」
「じゃあ返せ、体でなぁ!」
こうして始まったバトル。俺は回避に集中して、良い修行になった。スカーフとの連携も慣れてきた。どっと疲れが出たのだが。
「飯食っていけよ。相手して貰ったかんな」
「有り難くもらう。今回だけな」
「そう言うなって、俺も強くなりてえからな」
「やっぱり、リュセラに勝ちたいのか?」
「ああ、負けっぱなしだからよ」
「リュセラの魔法は強かった」
「だろうな。リュセラは勇者パーティーの魔法使いだからな」
「そうなのか! だから伝説って呼ばれてたのか」
彼の魔法に納得した。敵の言っていた、世界を救える魔法使いの意味も。体で体感した。
「本当に勝てるのだろうか……」
「勝てなければ何度でも挑もう。でしょ?」
「ああ、そうだな。鍋を助ければ、リュセラは解放されるから。俺たちで何度も挑戦する」
セレストは笑った。年相応の少女なのに、どこか昔の安らぎに触れたような。柔らかな笑み。
父さんみたいな考え方のセレストに俺もそんな笑顔になる。
「それと、明日は覚悟してね。たぶん午前中は魔法まみれだから」
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