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3章
城へ行こう2
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戦闘で壊れた城内。俺たちはこの城の王さまであるドラクと対峙していた。
拘束を解かれたリュセラは、俺たちの方に戻ってきた。彼は移動しながら使った竹串などを回収した。戦闘で使った物でも、リュセラは大事にしている。それ戦闘用ではないけどな。
「すまない。負けた」
「仕方ないよ、リュセラ本気で戦えなかったもん」
凛音の言葉にリュセラは落ち込む。意地を通したい気持ちもあっただろうに。
リュセラの戦闘が終わり、俺たちも城の中に入った。城の中は豪華な飾りで一杯だ。高価そうなツボや鎧、武器などが飾られている。
だが、戦いの後なので壊れた飾りが散乱している。かつて華やかだった装飾は、今や崩れ落ちている。壊れた物を魔法で直せるとは言われても、壊すのは怖い。高そうな物だから。
「で、次はどいつだ?」
凛音が意気揚々と手を上げたが、俺は彼女を制止した。
「私やりたいのに!」
「凛音、ここは俺が行くよ」
「でも悠人。こう見えて私、結構戦えるよ?」
凛音は鞄から杖を出した。最初に拾ったあの杖だ。
「温存しといてくれ。俺の魔法はいつ効果が切れるか分からないから」
「仕方ないなー」
俺はドラクの前に立った。手に武器は持っていない。ゴールドボーイを使えない。発動している魔法だけで勝たないといけない。作っておいた追加の魔法もあるけど。
「魔法で身体強化ってところか?」
「ああ、エンチャントお菓子でな」
「正気か? 使える魔法が出るとは限らないぜ」
「魔法を見分ける方法が有るとしたら?」
「面白え!」
「でも、俺は戦闘の素人だから手加減して欲し……」
戦闘経験など皆無だから交渉をと思った。
次の瞬間にはリュセラを捕らえた斧の刃先が目の前に。俺は目をつむり、慌てて腕でガードするけど、こんなの防げるわけ無いだろ!
ガキンッ。金属同士が衝突するような鋭い音がした。あっちだって木製のはずなのに。
「凛音! 俺の腕付いてる? 切断されてたりとかしてない?」
「ないよー!」
「ないの!?」
「そう、怪我一つね」
俺は目を開けた。自分の腕は付いている。鱗に覆われた、人間と思えないような腕が。
「鱗が生えすぎ! でも助かった」
取り敢えず手加減をして貰おうと前を見た俺。しかし、ドラクは居ない。
「悠人後ろ!」
俺は視線だけを背後に向けた。間に合ったのは視線だけ、からだの反応は間に合わない。そこにはドラクが斧を横薙ぎする姿が。
斧が当たった感触がある。俺はそのまま弾き飛ばされた。
「胴が、どうなった?!」
「親父ギャグだー。平気だよ。お腹にも鱗が見えたから」
「平気なのかなそれ。人間でなくなってるじゃん!」
体に触れて、俺は安心した。切れてはない。服は破けたのだが。
「やりすぎだろ! 命が持たんわ!」
「安心しな、切れても治してやるよ」
「意識が途切れるわ!!」
「平気だぜ。この前両断した奴も生きてたから、スライムだったか」
「それと一緒にすんな!」
ドラクが走り出し、俺の頭に斧を振り下ろす。手で受けようと思ったが、体が自然に動き横飛びをした。
「なんだこれ!」
「猫の反射神経だ! 悠人、猫耳が有るから」
「すごいな。そんなことが出来るのか」
「よそ見は良かねえぜ!」
回避した俺に合わせ、ドラクは斧を振り回した。それらを目で追いかけている自分がいる。
「すげえ、斧の動きが見える」
「猫の目だー! 私も欲しい」
「やるな、お前!」
「魔法のお陰だ。でなきゃ、あんたの攻撃でやられるっての」
「だろ。腕力ならリュセラより強ええかんな」
「身に染みてますっての」
「で、いつ攻撃してくんだよ?」
「俺、戦闘したこと無いんだよ!」
「それでよく挑んで来たなあ!」
ドラクの攻撃は激しさを増していく。俺の体に斧が当たったのだ。猫の回避の限界みたい。服しか破けないけど。ここで全裸はまずい。社会的に!
「なら、武器を止めれば良いんだ!」
俺は手を振り上げた、そのままドラクの肩に手を軽く置いた。はずなのに。
ドゴォッ!
激しい衝突音か響く。ドラクの斧が当たった音でなく、ドラクの体が城の床に埋まった音だ。
「なんで、こんなパワーが?」
俺は肩を押さえようとしたのに。
「おそらく。ドラゴンの膂力、水牛のパワーに鬼の怪力が合わさった超パワーだよ!」
床に埋まり頭だけが見えているドラクは顔を伏せたまま黙っている。
「やりやがったな!」
「ごめん、やりすぎたのは謝る。弁償出来ないかも知れないけど……」
「いや、クリアだ。お前なら回復の杖を探すことを許可するぜ」
「良いのか?」
「俺に勝っといて、なよなよした質問すんなよ。修理も何も家の回復力は国家最強だ」
「やったな。凛音!」
「そうだね。これで探せるけど……」
「何か有ったのか?」
「あんたも戦いたいんじゃねえのか?」
床から這い出てきたドラクが凛音を見つめる。
「まさか、勝ったからいいだろ。それに……」
俺はリュセラの方を見た。彼の真意は凛音を戦わせたくなかったからだ。俺もそう思って名乗り出たんだ。彼女は危なっかしいし、危険な目に合わせたくなかった。でも、なぜかリュセラが怯えた表情に見えた。
拘束を解かれたリュセラは、俺たちの方に戻ってきた。彼は移動しながら使った竹串などを回収した。戦闘で使った物でも、リュセラは大事にしている。それ戦闘用ではないけどな。
「すまない。負けた」
「仕方ないよ、リュセラ本気で戦えなかったもん」
凛音の言葉にリュセラは落ち込む。意地を通したい気持ちもあっただろうに。
リュセラの戦闘が終わり、俺たちも城の中に入った。城の中は豪華な飾りで一杯だ。高価そうなツボや鎧、武器などが飾られている。
だが、戦いの後なので壊れた飾りが散乱している。かつて華やかだった装飾は、今や崩れ落ちている。壊れた物を魔法で直せるとは言われても、壊すのは怖い。高そうな物だから。
「で、次はどいつだ?」
凛音が意気揚々と手を上げたが、俺は彼女を制止した。
「私やりたいのに!」
「凛音、ここは俺が行くよ」
「でも悠人。こう見えて私、結構戦えるよ?」
凛音は鞄から杖を出した。最初に拾ったあの杖だ。
「温存しといてくれ。俺の魔法はいつ効果が切れるか分からないから」
「仕方ないなー」
俺はドラクの前に立った。手に武器は持っていない。ゴールドボーイを使えない。発動している魔法だけで勝たないといけない。作っておいた追加の魔法もあるけど。
「魔法で身体強化ってところか?」
「ああ、エンチャントお菓子でな」
「正気か? 使える魔法が出るとは限らないぜ」
「魔法を見分ける方法が有るとしたら?」
「面白え!」
「でも、俺は戦闘の素人だから手加減して欲し……」
戦闘経験など皆無だから交渉をと思った。
次の瞬間にはリュセラを捕らえた斧の刃先が目の前に。俺は目をつむり、慌てて腕でガードするけど、こんなの防げるわけ無いだろ!
ガキンッ。金属同士が衝突するような鋭い音がした。あっちだって木製のはずなのに。
「凛音! 俺の腕付いてる? 切断されてたりとかしてない?」
「ないよー!」
「ないの!?」
「そう、怪我一つね」
俺は目を開けた。自分の腕は付いている。鱗に覆われた、人間と思えないような腕が。
「鱗が生えすぎ! でも助かった」
取り敢えず手加減をして貰おうと前を見た俺。しかし、ドラクは居ない。
「悠人後ろ!」
俺は視線だけを背後に向けた。間に合ったのは視線だけ、からだの反応は間に合わない。そこにはドラクが斧を横薙ぎする姿が。
斧が当たった感触がある。俺はそのまま弾き飛ばされた。
「胴が、どうなった?!」
「親父ギャグだー。平気だよ。お腹にも鱗が見えたから」
「平気なのかなそれ。人間でなくなってるじゃん!」
体に触れて、俺は安心した。切れてはない。服は破けたのだが。
「やりすぎだろ! 命が持たんわ!」
「安心しな、切れても治してやるよ」
「意識が途切れるわ!!」
「平気だぜ。この前両断した奴も生きてたから、スライムだったか」
「それと一緒にすんな!」
ドラクが走り出し、俺の頭に斧を振り下ろす。手で受けようと思ったが、体が自然に動き横飛びをした。
「なんだこれ!」
「猫の反射神経だ! 悠人、猫耳が有るから」
「すごいな。そんなことが出来るのか」
「よそ見は良かねえぜ!」
回避した俺に合わせ、ドラクは斧を振り回した。それらを目で追いかけている自分がいる。
「すげえ、斧の動きが見える」
「猫の目だー! 私も欲しい」
「やるな、お前!」
「魔法のお陰だ。でなきゃ、あんたの攻撃でやられるっての」
「だろ。腕力ならリュセラより強ええかんな」
「身に染みてますっての」
「で、いつ攻撃してくんだよ?」
「俺、戦闘したこと無いんだよ!」
「それでよく挑んで来たなあ!」
ドラクの攻撃は激しさを増していく。俺の体に斧が当たったのだ。猫の回避の限界みたい。服しか破けないけど。ここで全裸はまずい。社会的に!
「なら、武器を止めれば良いんだ!」
俺は手を振り上げた、そのままドラクの肩に手を軽く置いた。はずなのに。
ドゴォッ!
激しい衝突音か響く。ドラクの斧が当たった音でなく、ドラクの体が城の床に埋まった音だ。
「なんで、こんなパワーが?」
俺は肩を押さえようとしたのに。
「おそらく。ドラゴンの膂力、水牛のパワーに鬼の怪力が合わさった超パワーだよ!」
床に埋まり頭だけが見えているドラクは顔を伏せたまま黙っている。
「やりやがったな!」
「ごめん、やりすぎたのは謝る。弁償出来ないかも知れないけど……」
「いや、クリアだ。お前なら回復の杖を探すことを許可するぜ」
「良いのか?」
「俺に勝っといて、なよなよした質問すんなよ。修理も何も家の回復力は国家最強だ」
「やったな。凛音!」
「そうだね。これで探せるけど……」
「何か有ったのか?」
「あんたも戦いたいんじゃねえのか?」
床から這い出てきたドラクが凛音を見つめる。
「まさか、勝ったからいいだろ。それに……」
俺はリュセラの方を見た。彼の真意は凛音を戦わせたくなかったからだ。俺もそう思って名乗り出たんだ。彼女は危なっかしいし、危険な目に合わせたくなかった。でも、なぜかリュセラが怯えた表情に見えた。
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