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3章
お菓子お試し
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宿に戻った俺は調理場に立ち、お菓子作りに取り掛かった。セレストは俺の後ろに立って様子を伺っている。
「何を作るの?」
「クラッカーだ」
「名前聞いても分からないけど、それは美味しいのかな?」
「多分似たお菓子はあると思う。小麦粉を使ったお菓子だね」
「でも、魔法の料理にはこの世界の調味料が必要よ」
「生地に入れてオーブンで焼くんだ」
「確かにそれならエンチャントお菓子にはなるね。砂糖は?」
「入れないけど、ジャムとか付けて食べてもいい」
「最高じゃん!」
「作るのは初めてだけど」
市販のクラッカーが美味しかったので、作ろうとは思わなかったのだ。地味な料理だと思っていたが、味付け出来るのいいな。出費がでかいけど。
オーブンを余熱してから、俺は生地を練った。混ぜ合わせるのはオリーブオイル、全粒粉小麦粉など。そして、この世界の塩を。
生地を分けて、カレーのスパイス、胡椒、粉チーズ、シナモンとナツメグを加えてそれぞれ仕上げた。
「スマホ、レシピ通りか?」
俺のポケットからスマホが浮かび出てきて画面を映す。
「大体合ってる。私も貰っていい?」
「良いぞ。カメラとゴールドボーイもどう?」
「はい、ありがたく頂きます」
「俺もか、食事なんて久しぶりだな」
ゴールドボーイも大事な仲間だから。それと。
「スカーフの分も用意しとこう」
スカーフが擬人化した彼とあまり話せてない。元々父さんから貰ったものだからずっと側に居たのに。今頃洗濯されて天日干しだろう。太陽無いけど。
オーブンの熱を確認していると、調理場の入り口に立っている幼い少女が目に入った。
こちらを見つめている彼女はメイドのヘッドドレスを付けている。リュセラのもののメイドの一人だろう。俺に気がついた少女は顔を引っ込めて隠れてしまった。
「何か用があるのかな?」
「さあ? お菓子を欲しがっていたりしてね」
「そうかもなリュセラと凛音にメイドたちの分も作っちゃおう」
俺は生地を薄く伸ばして、小分けにカットした。プレートにクッキングシート(百均製)を敷いて、オーブンに手を掛けた時にまた、少女がこちらを覗いているのを発見した。
「手伝ってくれるか?」
「独り言?」
「いや彼女に言った」
俺がしばらく入り口を見つめていると、少女が出てきた。メイドの少女の身長は俺たちの胸程だ。
「名前を聞いていいか?」
「まな板……」
「どうして隠れて見ていたの?」
「あの、料理は私の役目なのに……」
「そうだったな。じゃあ、残りの生地を仕上げてくれるか?」
「うん!」
まな板の協力により、調理は早く終わった。四種類の小さなクラッカーをストックパック(百均製)に入れる。そして、俺はシールのラベルを用意した。
「セレスト。俺が味見をするから、魔法が出たら打ち消してくれるか?」
「いいよ。一緒に味見しましょ。私は魔法平気だから」
「ドラゴンも打ち消しておこうか?」
「慣れすぎて忘れてた。大丈夫だろ」
俺は手始めに、胡椒味のクラッカーを一欠片食べた。
「効かずの加護」
「もう魔法出たのか?」
「そう。今要らない魔法だから消しといた」
「じゃあ同じのをもう一口食ってみる?」
「なんでそんなことを?」
「同じ魔法が発動するなら、持ち歩けばいつでも魔法を使えるようになる」
「頭いいね。でも、見分け付かないよ?」
「そこでこれだ、百均のラベルシール。これに魔法名を書いて張るんだ。それなら間違わないだろ」
「そんな方法があったなんて、素晴らしいね!」
「後でセレストにもあげる。要らない魔法かもだけど」
「欲しい! 今後も分けて貰えるかな?」
俺は同じ胡椒の味を食べた。セレストも同じ味を食べる。俺の方は何も起こらないが。セレストの頭に猫耳が生えた。
「一応、分かりやすいように見せてあげる。悠人も今、同じ魔法がかかってる」
「属性増えすぎ! 今、角と猫耳は要らないな」
「ちゃんと身体能力も猫らしい脚力強化と俊敏性が身に付いているよ」
「これなら俺も戦える!」
「魔法は調理の際にランダムで付与されるから、手間は掛かるけどね」
「でも、複数の魔法を一度に使える!」
「これは想像以上ね!」
テンションが上がった俺たちは残りのクラッカーも食べた。凛音たちの分も残したまま。ジャムを塗ったり、食材を挟んだり。お腹いっぱいになった俺は借りている宿の部屋に戻った。
ソファーで休んでいる俺とセレスト。セレストが急に倒れて、俺の膝に頭を乗せる。
「セ、セレスト何を?」
「お腹いっぱい、魔法も結構使っちゃったし。眠い」
膝枕だこれ。でも、俺は膝枕なんてしたことがない。ズボン越しに感じる温かさに、戸惑ってしまう。
「これはさすがに……」
今日の実験はセレストのお陰だった為に、振り落とすわけにもいかない。
「セレスト。気が済んだら、解放してくれ」
「はーい。それと、私が寝ると魔法打ち消せなくなるから、頑張ってねー」
「ちょっと待って、それはヤバいって!」
すでにセレストは寝息を立てて眠ってしまった。起こそうか迷った俺は自分の頭が重たく感じた、触れてみると、ドラゴンの角の他に、猫耳、水牛の横長の角、鹿に、鬼にとなんかいっぱい付いている。
「頭に来すぎだろ!」
俺は大声でセレストを起こそうとしたが、そんな俺の頬に誰かが触れた。
触れたのはまな板だった。彼女は俺の耳元にささやく。
「本当はね、邪魔しちゃ悪いと思って入れなかったの。二人は仲良しだったから」
セレストを起こそうとしたが止めた。いや、俺は硬直した。そのまま、リュセラが来るまで固まっていた。
「何を作るの?」
「クラッカーだ」
「名前聞いても分からないけど、それは美味しいのかな?」
「多分似たお菓子はあると思う。小麦粉を使ったお菓子だね」
「でも、魔法の料理にはこの世界の調味料が必要よ」
「生地に入れてオーブンで焼くんだ」
「確かにそれならエンチャントお菓子にはなるね。砂糖は?」
「入れないけど、ジャムとか付けて食べてもいい」
「最高じゃん!」
「作るのは初めてだけど」
市販のクラッカーが美味しかったので、作ろうとは思わなかったのだ。地味な料理だと思っていたが、味付け出来るのいいな。出費がでかいけど。
オーブンを余熱してから、俺は生地を練った。混ぜ合わせるのはオリーブオイル、全粒粉小麦粉など。そして、この世界の塩を。
生地を分けて、カレーのスパイス、胡椒、粉チーズ、シナモンとナツメグを加えてそれぞれ仕上げた。
「スマホ、レシピ通りか?」
俺のポケットからスマホが浮かび出てきて画面を映す。
「大体合ってる。私も貰っていい?」
「良いぞ。カメラとゴールドボーイもどう?」
「はい、ありがたく頂きます」
「俺もか、食事なんて久しぶりだな」
ゴールドボーイも大事な仲間だから。それと。
「スカーフの分も用意しとこう」
スカーフが擬人化した彼とあまり話せてない。元々父さんから貰ったものだからずっと側に居たのに。今頃洗濯されて天日干しだろう。太陽無いけど。
オーブンの熱を確認していると、調理場の入り口に立っている幼い少女が目に入った。
こちらを見つめている彼女はメイドのヘッドドレスを付けている。リュセラのもののメイドの一人だろう。俺に気がついた少女は顔を引っ込めて隠れてしまった。
「何か用があるのかな?」
「さあ? お菓子を欲しがっていたりしてね」
「そうかもなリュセラと凛音にメイドたちの分も作っちゃおう」
俺は生地を薄く伸ばして、小分けにカットした。プレートにクッキングシート(百均製)を敷いて、オーブンに手を掛けた時にまた、少女がこちらを覗いているのを発見した。
「手伝ってくれるか?」
「独り言?」
「いや彼女に言った」
俺がしばらく入り口を見つめていると、少女が出てきた。メイドの少女の身長は俺たちの胸程だ。
「名前を聞いていいか?」
「まな板……」
「どうして隠れて見ていたの?」
「あの、料理は私の役目なのに……」
「そうだったな。じゃあ、残りの生地を仕上げてくれるか?」
「うん!」
まな板の協力により、調理は早く終わった。四種類の小さなクラッカーをストックパック(百均製)に入れる。そして、俺はシールのラベルを用意した。
「セレスト。俺が味見をするから、魔法が出たら打ち消してくれるか?」
「いいよ。一緒に味見しましょ。私は魔法平気だから」
「ドラゴンも打ち消しておこうか?」
「慣れすぎて忘れてた。大丈夫だろ」
俺は手始めに、胡椒味のクラッカーを一欠片食べた。
「効かずの加護」
「もう魔法出たのか?」
「そう。今要らない魔法だから消しといた」
「じゃあ同じのをもう一口食ってみる?」
「なんでそんなことを?」
「同じ魔法が発動するなら、持ち歩けばいつでも魔法を使えるようになる」
「頭いいね。でも、見分け付かないよ?」
「そこでこれだ、百均のラベルシール。これに魔法名を書いて張るんだ。それなら間違わないだろ」
「そんな方法があったなんて、素晴らしいね!」
「後でセレストにもあげる。要らない魔法かもだけど」
「欲しい! 今後も分けて貰えるかな?」
俺は同じ胡椒の味を食べた。セレストも同じ味を食べる。俺の方は何も起こらないが。セレストの頭に猫耳が生えた。
「一応、分かりやすいように見せてあげる。悠人も今、同じ魔法がかかってる」
「属性増えすぎ! 今、角と猫耳は要らないな」
「ちゃんと身体能力も猫らしい脚力強化と俊敏性が身に付いているよ」
「これなら俺も戦える!」
「魔法は調理の際にランダムで付与されるから、手間は掛かるけどね」
「でも、複数の魔法を一度に使える!」
「これは想像以上ね!」
テンションが上がった俺たちは残りのクラッカーも食べた。凛音たちの分も残したまま。ジャムを塗ったり、食材を挟んだり。お腹いっぱいになった俺は借りている宿の部屋に戻った。
ソファーで休んでいる俺とセレスト。セレストが急に倒れて、俺の膝に頭を乗せる。
「セ、セレスト何を?」
「お腹いっぱい、魔法も結構使っちゃったし。眠い」
膝枕だこれ。でも、俺は膝枕なんてしたことがない。ズボン越しに感じる温かさに、戸惑ってしまう。
「これはさすがに……」
今日の実験はセレストのお陰だった為に、振り落とすわけにもいかない。
「セレスト。気が済んだら、解放してくれ」
「はーい。それと、私が寝ると魔法打ち消せなくなるから、頑張ってねー」
「ちょっと待って、それはヤバいって!」
すでにセレストは寝息を立てて眠ってしまった。起こそうか迷った俺は自分の頭が重たく感じた、触れてみると、ドラゴンの角の他に、猫耳、水牛の横長の角、鹿に、鬼にとなんかいっぱい付いている。
「頭に来すぎだろ!」
俺は大声でセレストを起こそうとしたが、そんな俺の頬に誰かが触れた。
触れたのはまな板だった。彼女は俺の耳元にささやく。
「本当はね、邪魔しちゃ悪いと思って入れなかったの。二人は仲良しだったから」
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