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2章
朝のない朝
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アラームの音が聞こえた。俺が起きる時はこの音で起きる。寝覚めが悪い時もあるが。
目を閉じたまま、昨日から起きた出来事を思い浮かべる。凛音に連れられ、リュセラやセレストに出会い。
擬人化した自分のものとの会話をしたり。ここに来てから楽しいことに満ちている。俺の思い描いた冒険、最初で最後かもしれない冒険の朝。
俺の周りでガタガタと音がするが、きっと凛音が昨日に買ってきた道具を漁っているのだろう。
仲間との楽しい日々を迎えるために目を開けると、目の前にはリュセラが……。お玉を振り下ろしてきた。
寝起きの俺は殴られて、再びベッドに倒れた。
「何するんだ、リュセラ!」
「気を付けろ悠人、聞き慣れない音が響いてる! 止まる気配がない!」
「それはなリュセラ」
俺はスマホに手を伸ばし、アラームを解除した。
「止まった、来るぞ!」
「待てって。これは朝に起きるためにセットした目覚ましなんだよ」
「目覚まし。悠人の居たところではこうなのか。僕も目覚ましの魔法で起きたのだが」
「魔法のない世界から来たからな」
「成る程。すまなかった」
叩き起こされた俺は凛音の方を見た。彼女はすでに起きていて、荷物を探って虫眼鏡とか、ライトを用いながら道具を観察していた。予想を裏切らないな凛音。
寝坊したのは俺だけだった。それでもスマホの時計で午前の四時なのでいつもより早いが。
だが、安らかや寝息が聞こえる。凛音のとなりではセレストが寝ていた。
「昨日は結構魔法で助けられたし、疲れているみたいだな」
セレストは半分布団が掛かっていない。良く眠れているのだろう。旅先での人助け。昨日だって俺を助けてくれた。
「さて、どうだろうな!」
リュセラがペンを手に持つ。
「何を?」
彼は素早くセレストへと投擲した。止めに入ろうとベットから動いたが間に合わない。だが、間に合う必要がなかった。ペンは空中で何かに当たると、床へと落ちたからだ。
「そいつは魔法で壁を作って寝ていた。よほど疑り深いようだな」
俺たちの話し声に気がついたのか、セレストは軽く腕や足を伸ばしながらベッドから身を起こす。
「それはそうでしょう。年頃の乙女は用心深くないと。凛音は純粋っぽいから仕方ないけど」
「お前。夜中に何をしていた? 僕が見る限りこそこそしていたが?」
「それはそうでしょう。化粧水とか肌のケアは人に見せないものですよ」
起き上がったセレストは部屋の入り口まで歩いていった。
「凛音にも魔法の壁作っといたけど、反応なはなかったみたい。割りと我慢できるタイプなようで」
「なんだと!」
「落ち着けリュセラ。セレストもあんまり争わない」
「そうですね。じゃ、顔を洗ってきますね」
朝の支度を終えて、全員が再び合流した。相変わらずリュセラはセレストを睨み。セレストはそっぽを向いている。切り出したのはリュセラだった。
「回復の杖を手に入れる為に、二人は魔法の修行をしよう」
「待っていたぞ!」
「やった!」
凛音も喜んでいるが、俺も魔法の修行に興味があった。
「今日は魔法ギルドに行って、講習だ」
「え? 飯を食うのが修行じゃないのか?」
「それも大事だが、知識がないと。魔法は危険が伴うからな」
露骨に落ち込んだ俺。側でははしゃいでいる凛音。
「では、行く前に朝食だ。魔法の料理を作ろう」
「魔法の料理! 楽しみ!」
「リュセラ、丁度調味料とか買ってきたから手伝う」
「頼もう」
俺とリュセラは下の階へと降りた。
「カレーとかどう?」
「カレー、あれは重くないか?」
「確かに、朝食だもんな……」
せっかくスパイスを買ったが、ここは無難にトーストだな。だが、疑問が出てきた。
「なぜカレーを知っている?」
「勇者たちが下々の人々に振る舞った」
「成る程」
調理をしてから皆のもとへ持っていった。持っているトーストを見た凛音は拍子抜けた顔をした。
「いつものトーストじゃん!」
「ガッカリするには、まだ早いぞ」
俺たちはテーブルを囲んで座った。人数分のトーストとベーコンエッグ、サラダを置く。俺の買ってきたこの世界の調味料も用意した。ジャム、ハチミツ、チーズなど。お茶も用意したので完璧だな、栄養素は足りないかもだが。
「「「「いただきます」」」」
凛音がイチゴジャムを塗ってトーストを食べると、彼女の体が輝いた。
「何これ何これ!」
「ふうん属性系ね、手のひら見せて」
凛音が手を開いて見せると、明るい火が灯った。
「燃えてるのに熱くない? 魔法が効かない? むしろ、魔法に順応した体になった」
「流石の観察眼だ。一時的に魔法を使いこなせるのが、マジカルスパイスの特徴だ」
「じゃあ俺も」
トーストにチーズを乗せて食べた。俺の体が輝く。前回のこともあり、危険かもと緊張していた。ワクワクもしてるが。
「俺にはどんな魔法が?」
「手のひらを下に向けてみて」
言う通りにすると、俺の手から何かがこぼれた。さらさらとした砂だった。
「土の魔法だな」
「良いけど、この魔法使い道あるか?」
「砂に集中しながら手をゆっくり上げてみろ」
砂を見ながら集中し、手を動かすと、砂が浮かび上がった。
「操れるのか。すごいな!」
リュセラとセレストもトーストを食べると手を動かした。リュセラはコップの水を浮かせ。セレストはカーテンを揺らす風を起こした。
俺と凛音は魔法を使い、色々とトライした。ものを持ち上げたり、焼き加減を変えたりなど。とても楽しんだが、食事の場で砂はダメだと思ったので食事の後で。火事も怖いしな。
目を閉じたまま、昨日から起きた出来事を思い浮かべる。凛音に連れられ、リュセラやセレストに出会い。
擬人化した自分のものとの会話をしたり。ここに来てから楽しいことに満ちている。俺の思い描いた冒険、最初で最後かもしれない冒険の朝。
俺の周りでガタガタと音がするが、きっと凛音が昨日に買ってきた道具を漁っているのだろう。
仲間との楽しい日々を迎えるために目を開けると、目の前にはリュセラが……。お玉を振り下ろしてきた。
寝起きの俺は殴られて、再びベッドに倒れた。
「何するんだ、リュセラ!」
「気を付けろ悠人、聞き慣れない音が響いてる! 止まる気配がない!」
「それはなリュセラ」
俺はスマホに手を伸ばし、アラームを解除した。
「止まった、来るぞ!」
「待てって。これは朝に起きるためにセットした目覚ましなんだよ」
「目覚まし。悠人の居たところではこうなのか。僕も目覚ましの魔法で起きたのだが」
「魔法のない世界から来たからな」
「成る程。すまなかった」
叩き起こされた俺は凛音の方を見た。彼女はすでに起きていて、荷物を探って虫眼鏡とか、ライトを用いながら道具を観察していた。予想を裏切らないな凛音。
寝坊したのは俺だけだった。それでもスマホの時計で午前の四時なのでいつもより早いが。
だが、安らかや寝息が聞こえる。凛音のとなりではセレストが寝ていた。
「昨日は結構魔法で助けられたし、疲れているみたいだな」
セレストは半分布団が掛かっていない。良く眠れているのだろう。旅先での人助け。昨日だって俺を助けてくれた。
「さて、どうだろうな!」
リュセラがペンを手に持つ。
「何を?」
彼は素早くセレストへと投擲した。止めに入ろうとベットから動いたが間に合わない。だが、間に合う必要がなかった。ペンは空中で何かに当たると、床へと落ちたからだ。
「そいつは魔法で壁を作って寝ていた。よほど疑り深いようだな」
俺たちの話し声に気がついたのか、セレストは軽く腕や足を伸ばしながらベッドから身を起こす。
「それはそうでしょう。年頃の乙女は用心深くないと。凛音は純粋っぽいから仕方ないけど」
「お前。夜中に何をしていた? 僕が見る限りこそこそしていたが?」
「それはそうでしょう。化粧水とか肌のケアは人に見せないものですよ」
起き上がったセレストは部屋の入り口まで歩いていった。
「凛音にも魔法の壁作っといたけど、反応なはなかったみたい。割りと我慢できるタイプなようで」
「なんだと!」
「落ち着けリュセラ。セレストもあんまり争わない」
「そうですね。じゃ、顔を洗ってきますね」
朝の支度を終えて、全員が再び合流した。相変わらずリュセラはセレストを睨み。セレストはそっぽを向いている。切り出したのはリュセラだった。
「回復の杖を手に入れる為に、二人は魔法の修行をしよう」
「待っていたぞ!」
「やった!」
凛音も喜んでいるが、俺も魔法の修行に興味があった。
「今日は魔法ギルドに行って、講習だ」
「え? 飯を食うのが修行じゃないのか?」
「それも大事だが、知識がないと。魔法は危険が伴うからな」
露骨に落ち込んだ俺。側でははしゃいでいる凛音。
「では、行く前に朝食だ。魔法の料理を作ろう」
「魔法の料理! 楽しみ!」
「リュセラ、丁度調味料とか買ってきたから手伝う」
「頼もう」
俺とリュセラは下の階へと降りた。
「カレーとかどう?」
「カレー、あれは重くないか?」
「確かに、朝食だもんな……」
せっかくスパイスを買ったが、ここは無難にトーストだな。だが、疑問が出てきた。
「なぜカレーを知っている?」
「勇者たちが下々の人々に振る舞った」
「成る程」
調理をしてから皆のもとへ持っていった。持っているトーストを見た凛音は拍子抜けた顔をした。
「いつものトーストじゃん!」
「ガッカリするには、まだ早いぞ」
俺たちはテーブルを囲んで座った。人数分のトーストとベーコンエッグ、サラダを置く。俺の買ってきたこの世界の調味料も用意した。ジャム、ハチミツ、チーズなど。お茶も用意したので完璧だな、栄養素は足りないかもだが。
「「「「いただきます」」」」
凛音がイチゴジャムを塗ってトーストを食べると、彼女の体が輝いた。
「何これ何これ!」
「ふうん属性系ね、手のひら見せて」
凛音が手を開いて見せると、明るい火が灯った。
「燃えてるのに熱くない? 魔法が効かない? むしろ、魔法に順応した体になった」
「流石の観察眼だ。一時的に魔法を使いこなせるのが、マジカルスパイスの特徴だ」
「じゃあ俺も」
トーストにチーズを乗せて食べた。俺の体が輝く。前回のこともあり、危険かもと緊張していた。ワクワクもしてるが。
「俺にはどんな魔法が?」
「手のひらを下に向けてみて」
言う通りにすると、俺の手から何かがこぼれた。さらさらとした砂だった。
「土の魔法だな」
「良いけど、この魔法使い道あるか?」
「砂に集中しながら手をゆっくり上げてみろ」
砂を見ながら集中し、手を動かすと、砂が浮かび上がった。
「操れるのか。すごいな!」
リュセラとセレストもトーストを食べると手を動かした。リュセラはコップの水を浮かせ。セレストはカーテンを揺らす風を起こした。
俺と凛音は魔法を使い、色々とトライした。ものを持ち上げたり、焼き加減を変えたりなど。とても楽しんだが、食事の場で砂はダメだと思ったので食事の後で。火事も怖いしな。
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