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12 本心

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 細い階段の続く道で立ち止まったオレたち。周囲には民家や小さな畑がある。いつもなら高台から下る時に見える景色を堪能するけど、今日は景色に目もくれず後方にいる柚佳を注視していた。

 オレの方が幾分柚佳より身長が高い。柚佳の身長は女子の平均より少し高い方でオレのいる位置より階段の一段分上にいる彼女と今、目線の高さが同じくらいだ……。

 間近で彼女を観察している。授業中使う眼鏡は今はしていない。ポニーテールは短めで、長さが足りなくて結べない部分の髪は黒のヘアピンで留めている。睫が長い。化粧もしていないのにこの可愛さはどういう事だろうか。

 そんな彼女が、目を合わせてくれない。


「柚佳、『行かないで』ってもしかして……オレに傍にいてほしいって思ってる?」


 繋いでいた手に再びぎゅっと握られる感覚があった。柚佳は視線を上げ、オレの瞳を見つめてきた。苦しげに目を細めた彼女の小さな小さなその声を、オレは確かに拾った。


「うん……」


 涙が出そうだった。これって両想いなのではないだろうか。……でも。オレの不安は消えない。彼女は篤ともいい雰囲気だった。意を決して核心を聞いた。


「それって、オレの事が好きって事?」


 柚佳の目が大きく瞠られるのを見た。繋ぐ手にさっきよりも強い感触があった。だけど彼女は表情を曇らせるように瞳を下へ逸らした。


「ううん。違うよ」

「嘘だな」

 オレは断言した。


「何でお前が嘘ついてるのか知らないけど、オレはもう遠慮しないからな?」

 逃げられないように、彼女の両手をしっかりと握った。


「何で今朝、オレにキスしたのかな?」

 彼女は返事に困ったように歯噛みした後、オレを睨め付けた。

「……キライ」

「嘘だな」

 即断する。もう自信を持って言える。彼女はオレの事が好きだ。


「あ、それと。オレたちの関係を秘密にするって言ってたけど、皆の前でお前を連れ出したから相当怪しまれてると思う。悪いな。本当は篤と帰りたかったんだろう?」


「~~キライ!」


「嘘だよ。お前は篤じゃなくてオレと一緒にいたかったんだよな?」


 暫くの間、言葉もなく見つめ合った。
 柚佳が降参したと言いたげに溜め息をついて苦笑した。そして白状した。


「嬉しかった」

 それはきっと教室から連れ出した時の事を言っているのだろう。

「何で?」

 欲張って確実な言質を求めたけど、最後はやっぱりはぐらかされた。

「何でかな……?」


 顔と顔が近い。オレの目もまともに見れない程相手は余裕がなさそうだ。恥じらうように頬を染める幼馴染と唇を交わした。

 いい雰囲気だったけど散歩中の犬に吠えられて我に返った。


 笑い合って階段を下った。


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