45 / 55
二章 復讐のその後
45 テスト
しおりを挟む「明、ごめん」
薄く目を開けた。
「オレが悪かったです」
春夜君が謝ってくる。直前までしていたキスに夢見心地だったのにぎゅっと抱きしめられて不安が過る。
「春夜君?」
「オレたち、暫くイチャイチャするのやめましょう」
言い渡されて息を呑んだ。
「何で?」
尋ねる声が震えてしまう。春夜君は私を抱きしめたまま苦々しい響きで返答した。
「オレ、このまま何時間も明とイチャイチャすると思うんです。明の貴重な時間をオレの欲の為に使わせたくない」
彼の肩に手を置く。体を少し離して見つめた。
「私もイチャイチャしたいよ?」
彼は何故か右手で両目を覆い顔を上に向けた。暫くの沈黙ののち、絞り出すような嗄れ声が聞こえた。
「だ、め、で、す……ッ! オレが今どんな気持ちで言ってると思ってるんですかっ! テストが終わったら幾らでもしていいですから! テストが終わるまで我慢してくださいっ!」
「フフッ」
つい笑ってしまった。私の為に気にしてくれてるんだ。嬉しいな。でもイチャイチャし足りなくて残念。名残惜しく思いながらも了承した。
「分かった。私も勉強に集中する。でも言った事は忘れないでね。……あと、さっきの罰ゲームもあるから」
「……はい?」
春夜君はよく分かっていないみたいで首を傾げていたけど、詳しくは教えないで勉強する為の準備をした。
休みの日やテスト期間中も私たちはなるべく会うのを控えた。会ったらイチャイチャしたくなるって分かっていたから。
「へぇ~~。最近見掛けないなと思ってたら、そんな事約束してたんだ。はぁ~、二人とも偉いねぇ」
二日目の試験科目が終了した。帰り際に晴菜ちゃんに呼び止められ「あのいつも明ちゃんの周囲をうろちょろして目障りな男はどうしたの?」と聞かれたので経緯を話した。口では褒めてくれているのに、こちらへ向けられた目からは呆れられている気配を感じる。
晴菜ちゃんが机に頬杖をついていた姿勢から身を起こした。
「じゃあ、私は帰るから。また明日ね!」
「うん。また明日!」
晴菜ちゃんに手を振り返した。教室を出て行く背中を見送る。独り言ちた。
「いいなぁ」
彼女は今日も彼氏さんと会う約束をしているらしい。「テスト勉強は?」と言いたくなるけど、要点を押さえて取り組みいつも成績のいい部類の人なのだ。彼女の心配をするより自分の心配をした方が得策だ。
「さ、私も帰ろう」
机に置いていた鞄を持ち、立ち上がった。
「坂上」
思い掛けず呼び止められた。振り返る。尋ねた。
「何? 岸谷君」
彼と話すのは久しぶりだなと軽く考えていた。まさかあんな事態に発展するとは、この時は予想もしていなかった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
神様自学
天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。
それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。
自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。
果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。
人の恋心は、どうなるのだろうか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる