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一章 本編
57 報告
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その日の夕刻。いつものように龍君、咲月ちゃん、透、私のメンバーで帰宅中だ。
道の途中で咲月ちゃんと手を振って別れた。
彼女は手を振る時、こちらを見てニマニマした。
理由は分かっている。
……今日の給食の時間。
お盆を持って列に並んでいると、後ろにススス……と咲月ちゃんも並んだ。彼女は手に持ったお盆で口元を隠すようにして私にヒソヒソと話しかけてきた。
「で? 由利花ちゃん。昨日は何かあったんでしょ? そして今朝、鈴谷と一緒に遅刻なんて意味深~。皆、気になって二人の事を噂してたよ」
確かに今日、チラチラ視線を感じる事あったな……。皆、暇なの?
咲月ちゃんに言っていいのかな?
昨日龍君のお家に遊びに行った時の話を聞きたそうにしている彼女。言わないのも誠実じゃない気がする。彼女もいつも私の味方でいてくれたのだ。でも言ったら噂になるだろうし……。
「咲月ちゃん、誰にも言わないでね?」
「うんうん! 言わない言わない! 何何、何があったの?」
目を輝かせている咲月ちゃん。その言動にそこはかとなく不安な気持ちになるけど、彼女を信じるしかない。私もお盆で口元を隠し、彼女を手招きした。二人、前屈みにヒソヒソ話。
「プレゼントをもらって」
「うん」
「ケーキを食べて」
「うん」
「キスした」
「うん……はっ?」
咲月ちゃんは眼球が落ちてしまいそうな程目を開いて身を起こし、口の形を「キ」にしたのですぐさま左手で彼女の口を覆った。
私はゾッとしながら彼女に首を振って見せた。
彼女も目を大きくしたまま黙ってコクコク頷いた。
止めなかったら大惨事であっただろう。もう噂のネタになるのも卒業したい。
「もう大丈夫? 大丈夫だよね、落ち着いたよね? 咲月ちゃん」
咲月ちゃんが頷いたので手を離した。
「はぁぁ、そっか……そっかぁ」
彼女は私を見て、そう感慨深げに微笑んだ。
「おめでとう。二人、末永く幸せにね」
「……ありがとう」
友人の祝福を受け、私も彼女に心からの笑顔を向けた。
そこまではよかったんだけど……。
「はぁぁ、そっかぁ。由利花ちゃん、それってもう大人じゃん。私はそこまで進むのにまだまだ何年もかかるわ~」
「咲月ちゃん? 語弊があるよ!」
咲月ちゃんの放った一言は大きく教室に響いた気がする。それは多分、周りの子たちが私たちの話に静かに集中してたからかもしれないと後から思った。
即刻訂正したけど既にクラスメイトたちには変なざわつきが起こっていた。
咲月ちゃんに悪気がないのはよく分かっている。これは私が対処を間違ったのだ。もっと人けがない場所を選ぶとか二人だけの時に報告すればよかったのかもしれない。もう遅いけど。
これじゃあさっき咲月ちゃんが「キスしたの?」って叫んでた方がマシだったかもしれない。そう思いながら右手で痛くなりそうな頭を押さえた。
道の途中で咲月ちゃんと手を振って別れた。
彼女は手を振る時、こちらを見てニマニマした。
理由は分かっている。
……今日の給食の時間。
お盆を持って列に並んでいると、後ろにススス……と咲月ちゃんも並んだ。彼女は手に持ったお盆で口元を隠すようにして私にヒソヒソと話しかけてきた。
「で? 由利花ちゃん。昨日は何かあったんでしょ? そして今朝、鈴谷と一緒に遅刻なんて意味深~。皆、気になって二人の事を噂してたよ」
確かに今日、チラチラ視線を感じる事あったな……。皆、暇なの?
咲月ちゃんに言っていいのかな?
昨日龍君のお家に遊びに行った時の話を聞きたそうにしている彼女。言わないのも誠実じゃない気がする。彼女もいつも私の味方でいてくれたのだ。でも言ったら噂になるだろうし……。
「咲月ちゃん、誰にも言わないでね?」
「うんうん! 言わない言わない! 何何、何があったの?」
目を輝かせている咲月ちゃん。その言動にそこはかとなく不安な気持ちになるけど、彼女を信じるしかない。私もお盆で口元を隠し、彼女を手招きした。二人、前屈みにヒソヒソ話。
「プレゼントをもらって」
「うん」
「ケーキを食べて」
「うん」
「キスした」
「うん……はっ?」
咲月ちゃんは眼球が落ちてしまいそうな程目を開いて身を起こし、口の形を「キ」にしたのですぐさま左手で彼女の口を覆った。
私はゾッとしながら彼女に首を振って見せた。
彼女も目を大きくしたまま黙ってコクコク頷いた。
止めなかったら大惨事であっただろう。もう噂のネタになるのも卒業したい。
「もう大丈夫? 大丈夫だよね、落ち着いたよね? 咲月ちゃん」
咲月ちゃんが頷いたので手を離した。
「はぁぁ、そっか……そっかぁ」
彼女は私を見て、そう感慨深げに微笑んだ。
「おめでとう。二人、末永く幸せにね」
「……ありがとう」
友人の祝福を受け、私も彼女に心からの笑顔を向けた。
そこまではよかったんだけど……。
「はぁぁ、そっかぁ。由利花ちゃん、それってもう大人じゃん。私はそこまで進むのにまだまだ何年もかかるわ~」
「咲月ちゃん? 語弊があるよ!」
咲月ちゃんの放った一言は大きく教室に響いた気がする。それは多分、周りの子たちが私たちの話に静かに集中してたからかもしれないと後から思った。
即刻訂正したけど既にクラスメイトたちには変なざわつきが起こっていた。
咲月ちゃんに悪気がないのはよく分かっている。これは私が対処を間違ったのだ。もっと人けがない場所を選ぶとか二人だけの時に報告すればよかったのかもしれない。もう遅いけど。
これじゃあさっき咲月ちゃんが「キスしたの?」って叫んでた方がマシだったかもしれない。そう思いながら右手で痛くなりそうな頭を押さえた。
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