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一章 本編

13 告白

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 このクラスだけじゃ飽き足らず、他のクラスや先生にまで噂が伝わってるなんて。

 昨日の、後から増えたメンバーのうちの誰かが……もしくは皆が喋りまくったようにも思える。あの子たちも恋バナをする咲月ちゃん同様、水を得た魚のように生き生きとした目をしていた。
 雪絵ちゃんは機会があれば喋るけど、わざわざ自分から話を広めにはいかないような気がする。

 昨日、咲月ちゃんの機嫌が悪くなる前まではとても楽しかったお喋りを思い出しちょっと笑った。



 志崎君に昨日何があったのか尋ねられたけど答える事ができなかった。
 咲月ちゃんが睨んでいたから。

 この状況で志崎君に昨日の事を教えるって事は龍君にも聞こえてしまうし、即ち咲月ちゃんとの友情の崩壊を意味する。


「……ごめん。私からは何も言えない」

 それだけ伝えて自分の席に座った。

「そっか。こっちこそごめん。でも、何かがあったのは分かったよ」


 元はと言えば私が志崎君への過去に抱いた感情をスッパリ断ち切れていなかったのがいけないのだ。
 彼は私の事を好きでもないのに、私が好きな人は志崎君じゃないって昨日のお喋りで皆に話してしまったから噂の中で志崎君が振られたような扱いになったようだ。

 志崎君も龍君も咲月ちゃんも……。
 私がしっかりしていないせいで大切な友達に迷惑をかけてる。



「……全部、私のせいなんだ」

 机の染みを見つめて唇を噛む。小さく思いを零す。
 その時の私は、自分に失望してとんでもない事を口走っている事に気付いていなかった。



「そもそも私が一方的に志崎君を好きだっただけで、志崎君からしたらいい迷惑にも程がある……」



 そこまでスラスラと心の声を独り言にしてしまい、途中で「あらっ?」っとここが教室なのを思い出す。しかもすぐ隣に本人がいるし。



 顔を上げて彼を見た。
 彼も大きく見開いた目で私を見ている。



 今までヒソヒソザワザワしていた教室が水を打ったように静寂に包まれていて、過ちを犯してしまったと理解した私は一度机の染みに視線を戻した。

 一呼吸置いてから再び顔を上げて志崎君を見る。
 彼はさっき見た時と同じ表情・姿勢で動きを止めたまま、まだこっちを見ている。


 だめだ。白昼夢だったらいいなと願ったけど現実だ。


 じわじわと、やらかした感が私の心を占める。
 静寂のプレッシャーに耐えかねて何か言おうとしたけど言葉にならない。

 どうする事もできなくてまた机の染みに視線を戻した時、志崎君の凛とした声を聞いた。


「オレも好きだよ。付き合おう」


 染みを見ていた目を大きくしてゆっくりと顔を上げる。
 聞き間違いだよね?

 恐る恐る彼の目を見る。私を安心させるかのように志崎君は微笑んだ。


「よろしく! 笹木さん」


 一拍置いて教室がどっと喧騒に満たされる。「おめでとー!」の声や口笛や拍手が入り交じり、小さなお祭りのようだ。

 他のクラスメイトと笑顔で話し、肩を小突かれたりしている志崎君から視線をゆっくり……後ろの席にいる二人へとスライドさせる。

 咲月ちゃんは呆れたような目。龍君は顔を廊下側に向けて頬杖をつき、目も合わせてくれない。



 もう一度、志崎君に視線を戻す。
 他の男子たちと楽しそうに喋っていた志崎君は、私と合った目を面白そうに細めた。

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