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64 脱出、モーザーの謎解き
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壁を流れ落ちる滝を止めなければ、一時間を待たずに私たちは水没するだろう。
「ガイドブックにヒントは書いてないのか?」
レイモンドが訊いてきた。
「勇者が手に入れた装備を使って、てしか書いてないわ」
「魔王の拘束が解けたので、エポスに頼めば水流を止める事ができると思います」
エベルがそう提案すると、モーザーがそれを止めた。
「いや、天使さんに頼まなくても、僕にはトリックが分かった気がします」
「この際、エポスに頼んだ方が早いんじゃない?」
「でも、それじゃダンジョンをクリアした事にならないじゃないですか。
僕は景品の『伝説の秘宝』が欲しいんです。その景品を換金して、魔力がほとんど空になっちゃった魔法石板をチャージしたいんですよ」
「そういう事なら、私だって伝説の秘宝が欲しいわ!モーザー、トリックって何なの?」
私が訊くと、モーザーは得意げに話し始めた。
「水流を止めるんじゃなくて、水流を利用するんですよ」
「具体的には?」
「滝をよく見ると、壁面に水力で回っている歯車がいくつも付いているのが透けて見えるでしょう」
「私には良く分かんないけど?」
「その中に、一つだけ回ってない歯車があるんです」
モーザーは私の疑問をガン無視して話を続けた。
「僕の予想では、回ってない歯車は排水装置に繋がってるはずです…なので歯車を一つ加えて、回っている歯車と繋げば、排水装置が動きだすと思うんです」
「だけど、それが本当だとして歯車はどこにあるのよ?」
「そこです!エベルさんの被っている冠、その周囲のギザギザが、ちょうど歯車として使えそうに見えるんですよね」
「この第四の試練で入手した物ですか?確かにお姫様と言えばティアラが定番なのに、なぜ冠なんだろうとは思っていましたけど…」
エベルは頭から冠を外して改めた見た。
モーザーは魔法工学院を首席で卒業していて、機械系の技術には詳しい(はず)。
「分かった、信じるわ。どうすればいい?」
「まず、フィリップの持ってる聖剣を鞘ごと冠の中心に挿して軸にします」
モーザーに言われるままに、フィリップはエベルから冠を受け取ると剣に通した。冠は剣のツバで止まる。
「オモシローい!」
レイモンドは手で冠をカラカラと回した。
「回ってない歯車と回ってる歯車の間に穴があると思うんで、そこに剣をさし込んでください」
滝に向かって歩き出したフィリップは、腰まである水に阻まれ中々進めない。
「歩きにくいよー」
「フィリップ様、レイモンドがお連れします」
レイモンドはフィリップの手を取ると、その手を引いて滝の前まで行った。
「フィリップ様、どこに穴があるか分かりますか?」
「僕、分かる、穴はここだよ。でも水がジャマで剣がさせないよ…」
「お任せください」
示された場所の水流を、レイモンドが手でせき止める。
「今です、それを穴に入れてください」
「レイモンド、グショグショに濡れてるじゃない」
「構いません、早く入れてください」
「じゃあ、入れるよ!」
ズボッ!フィリップは穴に剣を突き刺した。
冠(型の歯車)は二つの歯車とカッチリかみ合い、止まっていた歯車が動き出した。
ゴゴゴ…どこからか石と石がこすれ合うような音と振動が響く。
「排水口が開いたみたいですね」
エベルがポツリとつぶやく。すると、水位が急速に下がりはじめた。
床面まで水が引くと、その後は下がる水位に合わせて、床も下がっていく。
「いちいち大仕掛けね…」
私は感心するとともに呆れて言った。
「なんか秘密基地みたいだね!」
フィリップは楽しそうだ。
「地下に何があるんですかね?」
モーザーが私を見る。
「そんなの決まってるじゃない…『伝説の秘宝』よ!」
もう、冒険のゴールはそこまで来ていた。
「ガイドブックにヒントは書いてないのか?」
レイモンドが訊いてきた。
「勇者が手に入れた装備を使って、てしか書いてないわ」
「魔王の拘束が解けたので、エポスに頼めば水流を止める事ができると思います」
エベルがそう提案すると、モーザーがそれを止めた。
「いや、天使さんに頼まなくても、僕にはトリックが分かった気がします」
「この際、エポスに頼んだ方が早いんじゃない?」
「でも、それじゃダンジョンをクリアした事にならないじゃないですか。
僕は景品の『伝説の秘宝』が欲しいんです。その景品を換金して、魔力がほとんど空になっちゃった魔法石板をチャージしたいんですよ」
「そういう事なら、私だって伝説の秘宝が欲しいわ!モーザー、トリックって何なの?」
私が訊くと、モーザーは得意げに話し始めた。
「水流を止めるんじゃなくて、水流を利用するんですよ」
「具体的には?」
「滝をよく見ると、壁面に水力で回っている歯車がいくつも付いているのが透けて見えるでしょう」
「私には良く分かんないけど?」
「その中に、一つだけ回ってない歯車があるんです」
モーザーは私の疑問をガン無視して話を続けた。
「僕の予想では、回ってない歯車は排水装置に繋がってるはずです…なので歯車を一つ加えて、回っている歯車と繋げば、排水装置が動きだすと思うんです」
「だけど、それが本当だとして歯車はどこにあるのよ?」
「そこです!エベルさんの被っている冠、その周囲のギザギザが、ちょうど歯車として使えそうに見えるんですよね」
「この第四の試練で入手した物ですか?確かにお姫様と言えばティアラが定番なのに、なぜ冠なんだろうとは思っていましたけど…」
エベルは頭から冠を外して改めた見た。
モーザーは魔法工学院を首席で卒業していて、機械系の技術には詳しい(はず)。
「分かった、信じるわ。どうすればいい?」
「まず、フィリップの持ってる聖剣を鞘ごと冠の中心に挿して軸にします」
モーザーに言われるままに、フィリップはエベルから冠を受け取ると剣に通した。冠は剣のツバで止まる。
「オモシローい!」
レイモンドは手で冠をカラカラと回した。
「回ってない歯車と回ってる歯車の間に穴があると思うんで、そこに剣をさし込んでください」
滝に向かって歩き出したフィリップは、腰まである水に阻まれ中々進めない。
「歩きにくいよー」
「フィリップ様、レイモンドがお連れします」
レイモンドはフィリップの手を取ると、その手を引いて滝の前まで行った。
「フィリップ様、どこに穴があるか分かりますか?」
「僕、分かる、穴はここだよ。でも水がジャマで剣がさせないよ…」
「お任せください」
示された場所の水流を、レイモンドが手でせき止める。
「今です、それを穴に入れてください」
「レイモンド、グショグショに濡れてるじゃない」
「構いません、早く入れてください」
「じゃあ、入れるよ!」
ズボッ!フィリップは穴に剣を突き刺した。
冠(型の歯車)は二つの歯車とカッチリかみ合い、止まっていた歯車が動き出した。
ゴゴゴ…どこからか石と石がこすれ合うような音と振動が響く。
「排水口が開いたみたいですね」
エベルがポツリとつぶやく。すると、水位が急速に下がりはじめた。
床面まで水が引くと、その後は下がる水位に合わせて、床も下がっていく。
「いちいち大仕掛けね…」
私は感心するとともに呆れて言った。
「なんか秘密基地みたいだね!」
フィリップは楽しそうだ。
「地下に何があるんですかね?」
モーザーが私を見る。
「そんなの決まってるじゃない…『伝説の秘宝』よ!」
もう、冒険のゴールはそこまで来ていた。
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