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41 聖女の登場、伝説の勇者と王子の命

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「これが聖女としての初仕事なんです」

エベルはおろしたての聖女の制服を着ていた。

「戦うのは待ってください。周囲に与える被害が大きすぎます」

「でもフィリップを助けるにはゾディアックを倒すしかないじゃない」

「そう言わずに、平和的に解決しましょう。悪魔さんも」

エベルがそう言ってもゾディアックが従う訳がない、私がそう思ったのに対して、

「ヘッ、しょうがねえな…」

意外にもゾディアックは素直に同意した。

「悪魔さんは、フィリップが二十歳の時に命を奪えれば、魔王から与えられたミッションを達成した事になるんですよね?」

「ヘッヘ、そういう事だな」

「認めましたね?絶対忘れないでくださいよ」

「ヘッ、どういう意味だ?」

なぜかゾディアックは怯えているように見えた。

エベルはフィリップに近寄っていく。

「お久しぶりです、フィリップ」

「やあ久しぶり、エベル」

挨拶が済むなり、エベルは制服の前ボタンを外し、清楚な外見とは不釣り合いに豊かな胸をはだけると、グイグイとフィリップに迫った。

「フィリップ、私をよく見て」

「エベル、これはどういうゲーム?」

フィリップは能天気に聞いた。

「ふーん、なるほど…こう言う事ね」

エベルは納得したようにうなずくと、制服の前を閉じた。

「な、何してるのよ!」

女性同士とはいえ、私は顔を赤くしながらエベルに叫んだ。

「フィリップが二十歳なる前に子作りだけ済ませられないかと考えたのですが、問題はフィリップがそういった事にまるで興味がないという点ですね」

「まさか、恋愛感情抜きで子供だけ作らせるつもり?それじゃフィリップは助からないじゃない」

「でもこの方法なら、預言された魔王を倒す勇者は無事に生まれ、悪魔さんも呪いを完遂して堂々と魔界に帰れます」

「フィリップの命より、魔王を倒す勇者の事がそんなに大事?」

「大事です!天界に仕える者にとっては、魔王を倒す勇者が生まれる事が最優先事項で、フィリップを救う方法を考えるのはその後です」

「ヘッヘッヘ、ちょっと待てよ、俺がそんなインチキくさい妥協案に納得するとでも思ってるのか?魔王を倒す勇者が生まれちまったら呪いの意味がねえじゃねえか…」

威勢のいいセリフとは裏腹にその口調は弱々しい。

「一級悪魔ゾディアックよ、フィリップが二十歳の時に命を奪えればいいと言ったお前の発言、今更取り消す事は許されませんよ」

天から降り注ぐように声が響く、と同時に、エベルの頭上に守護天使が現れた。

さっきからずっとゾディアックが怯えていた理由はこれだったのか…私は思い出した、聖女になったエベルには特級天使のエポスがついているのだった。
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