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23 聖女の義務と天使の戦略
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私が修道院の入場門に戻ると、モーザーがまだウロウロしていた。
「あれー、パテックさん、もう話し終わったんですか?」
「もうって…少なくとも三十分はたってると思うけど」
「なに言ってるんですか、別れてまだ五分もたってないですよ」
どういう事だろう、私は困惑した。
「ヘッヘッヘ、俺たちは知らないうちに天使の領域に隔離されていたのさ」
ゾディアックが疑問に答えた。
「隔離されると時間の長さが変わるの?」
「ああ、誰もが同じ時間の流れにいるってのは、現世の人間だけの決まり事だからな。現世から隔離された領域では時間の流れは意識に支配されるんだ、ヘッヘッヘ」
「あんた一級悪魔なんでしょ、隔離されたのに気が付かなかったの?」
「ヘッ、あのランゲって天使、たぶん特級だ。周りに被害が及ばないように隔離して、俺を本気で潰しにきやがった、やり合ってたらヤバかったかもな…」
「珍しく弱気じゃない、これなら悪魔祓いやってもらえばよかったわ!」
私は皮肉めかして言った。
「そりゃあどうかな…パティ、魔王の呪いを無かった事にする簡単な方法が分かるか?」
「そんな都合いい方法があるの?」
「ヘッヘ、呪いの遂行者である俺と、対象者であるお前を一度に葬っちまう事さ。天使の陣営にとっちゃフィリップの命をねらうお前はジャマな存在だ、一級悪魔もろとも亡きものにできれば好都合ってわけさ」
「命をねらうってスゴい語弊があるんだけど…だって、ゾーネは私を救いたいって言ってたじゃない?」
「聖女ならそう言うしかないさ。それに、悪魔祓い儀式を行うにはお前の了承がいる。一応、儀式の危険性も説明しているし、結果としてお前の命が失われても責任は負わないって事だ、ヘッヘッヘ」
「そんなの詐欺じゃん!」
「あのー、パテックさん、さっきから誰と話してるんですか?」
モーザーが怪訝そうに私を見ていた。
「ああ…独り言よ。考えをまとめようと思って」
私は、モーザーの存在をすっかり忘れて、ゾディアックと話しこんでいた。
「これ、返しておきますね」
モーザーは魔法石板を差し出した。
「そう言えば、レイモンドさんから返信が来てましたよ」
「えっ!早く言ってよ、で、なんだって?」
「『俺はエベルの故郷がル・サンティエだと言っただけで、そこに行くとは言ってない』だって」
「なんじゃその屁理屈は!それで、今どこにいるって?」
「グレンヘン王国だそうです。シャフハウゼンとは国交のない黒魔導士の国なんで身を隠すにはちょうどいいとか…」
「レイモンドの野郎…好き勝手ばっかして、ムカつくわ!」
「パテックさん、これからどうするんですか?」
ゾーネの言葉を信じて精霊の国グラスヒュッテを目指すか、レイモンドを信じて黒魔導士の国グレンヘンに向かうか、私は悩んでいた。ゾーネは何か罠を用意しているかも知れないし、かといってレイモンドの行動に振り回されるのも何だかシャクだった。
「グラスヒュッテに行くわ!聖女見習いを連れたフィリップが敵対する黒魔導士に近づくのは不自然よ」
「グラスヒュッテって、何かと謎の多い精霊の国ですよね。あの世とこの世の境目にあるとか…またなんで?」
「めんどくさいから説明はカット。モーザー、グラスヒュッテに行く最速の方法って知ってる?」
「魔法石板で飛行系の魔法を使えば列車より速いですけど、せっかくチャージした魔力をあっという間に消費しちゃいますよ。次はいつ魔法石を買えるかも分かんないし」
普段の私ならケチって列車を使うと言っていただろう。しかし、この時の私は、ここで急がなければ間に合わなくなるという予感に襲われていた。
「構わないわ、今回だけは派手に空飛んで行ってやろうじゃないの!」
「あれー、パテックさん、もう話し終わったんですか?」
「もうって…少なくとも三十分はたってると思うけど」
「なに言ってるんですか、別れてまだ五分もたってないですよ」
どういう事だろう、私は困惑した。
「ヘッヘッヘ、俺たちは知らないうちに天使の領域に隔離されていたのさ」
ゾディアックが疑問に答えた。
「隔離されると時間の長さが変わるの?」
「ああ、誰もが同じ時間の流れにいるってのは、現世の人間だけの決まり事だからな。現世から隔離された領域では時間の流れは意識に支配されるんだ、ヘッヘッヘ」
「あんた一級悪魔なんでしょ、隔離されたのに気が付かなかったの?」
「ヘッ、あのランゲって天使、たぶん特級だ。周りに被害が及ばないように隔離して、俺を本気で潰しにきやがった、やり合ってたらヤバかったかもな…」
「珍しく弱気じゃない、これなら悪魔祓いやってもらえばよかったわ!」
私は皮肉めかして言った。
「そりゃあどうかな…パティ、魔王の呪いを無かった事にする簡単な方法が分かるか?」
「そんな都合いい方法があるの?」
「ヘッヘ、呪いの遂行者である俺と、対象者であるお前を一度に葬っちまう事さ。天使の陣営にとっちゃフィリップの命をねらうお前はジャマな存在だ、一級悪魔もろとも亡きものにできれば好都合ってわけさ」
「命をねらうってスゴい語弊があるんだけど…だって、ゾーネは私を救いたいって言ってたじゃない?」
「聖女ならそう言うしかないさ。それに、悪魔祓い儀式を行うにはお前の了承がいる。一応、儀式の危険性も説明しているし、結果としてお前の命が失われても責任は負わないって事だ、ヘッヘッヘ」
「そんなの詐欺じゃん!」
「あのー、パテックさん、さっきから誰と話してるんですか?」
モーザーが怪訝そうに私を見ていた。
「ああ…独り言よ。考えをまとめようと思って」
私は、モーザーの存在をすっかり忘れて、ゾディアックと話しこんでいた。
「これ、返しておきますね」
モーザーは魔法石板を差し出した。
「そう言えば、レイモンドさんから返信が来てましたよ」
「えっ!早く言ってよ、で、なんだって?」
「『俺はエベルの故郷がル・サンティエだと言っただけで、そこに行くとは言ってない』だって」
「なんじゃその屁理屈は!それで、今どこにいるって?」
「グレンヘン王国だそうです。シャフハウゼンとは国交のない黒魔導士の国なんで身を隠すにはちょうどいいとか…」
「レイモンドの野郎…好き勝手ばっかして、ムカつくわ!」
「パテックさん、これからどうするんですか?」
ゾーネの言葉を信じて精霊の国グラスヒュッテを目指すか、レイモンドを信じて黒魔導士の国グレンヘンに向かうか、私は悩んでいた。ゾーネは何か罠を用意しているかも知れないし、かといってレイモンドの行動に振り回されるのも何だかシャクだった。
「グラスヒュッテに行くわ!聖女見習いを連れたフィリップが敵対する黒魔導士に近づくのは不自然よ」
「グラスヒュッテって、何かと謎の多い精霊の国ですよね。あの世とこの世の境目にあるとか…またなんで?」
「めんどくさいから説明はカット。モーザー、グラスヒュッテに行く最速の方法って知ってる?」
「魔法石板で飛行系の魔法を使えば列車より速いですけど、せっかくチャージした魔力をあっという間に消費しちゃいますよ。次はいつ魔法石を買えるかも分かんないし」
普段の私ならケチって列車を使うと言っていただろう。しかし、この時の私は、ここで急がなければ間に合わなくなるという予感に襲われていた。
「構わないわ、今回だけは派手に空飛んで行ってやろうじゃないの!」
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