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15 王子の残した手紙の謎

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「手掛かりはこれしかなさそうだな…」

レイモンドはテーブルに置かれた手紙の束を取り上げた。

「なんて書いてあるの?」

私の質問を無視して、レイモンドは黙々と手紙を読み続けた。

「ちょっと!」

「お嬢ちゃん宛だ、自分で読め」

「なら勝手に読まないでよ!」

差し出された手紙を、私は奪い取った。

手紙の内容は―いかに私がフィリップをいじめてきたか、いかに聖女見習いのエベルに優しくされたかが、フィリップの主観で書き連ねられていた。

「ヤバい、めまいがしてきた…」

私は途中で読むのをやめた。

「最後まで読んだか?」

レイモンドが訊いてきた。

「そんなに私を落ち込ませたいの?」

「違う、最後に魔法陣が書いてあるだろ」

「え?」

私はあわてて手紙の最後を見た。

「本当だ、これ添付動画よね」

「再生できる道具はあるか?」

「えっへん、あるわよ!」

私は自慢げに魔法石板を取り出した。

「魔法石板!なんでお嬢ちゃんが持ってるんだ?」

レイモンドは少し驚いた顔をした。

(どうだ、羨ましいか!)私は心の中でガッツポーズした。

「なら、俺の魔法石板を貸さなくていいか」

(あ、持ってるのね)私はちょっとガッカリした。

魔法陣に魔法石板をかざすと、空中にフィリップの映像が浮かび上がった。

『やあ、パティ…驚かせてしまったよね?ごめんなさい…でも僕はどうしても行かなきゃならないんだ…だから君を嫌いになったわけじゃないんだよ、安心してね…それじゃあお元気で、さよなら』

「説明になってない!」

動画を見終わった私は思わずツッコんだ。わざわざ動画を付けたんだから、駆け落ちした本当の理由が語られると期待したのに、フィリップは相変わらず的外れな事ばかりほざいていた。

「この動画、誰が撮ったんだろうな…」

レイモンドが独り言のように言った。

「動画を圧縮した魔法陣を描くには、魔法使いの鏡がいりますよね。やはり魔法使いの協力者がいると考えるしかないのでは?」

ダニエル王子は探偵気取りで言った。

「やっぱりエベルが魔法使いなのよ。聖女見習いに化けてるんだわ」

私がそう言うと、すかさずレイモンドが否定した。

「エベル嬢の身元は調査済みだ。聖女見習いなのは間違いない」

「じゃあどっかの魔法使いが駆け落ちに協力してるって事?」

「それも考え難い。フィリップ王子には常に護衛がついているんだ、魔法使いと知り合う機会などなかったはずだ」

「じゃあ、どうやったって言うのよ?」

「それが分からないから考えている。近衛隊は、お嬢ちゃんみたいに即断だけで行動しているわけではない!」

レイモンドの圧に押されて私は黙った、その時、

「パテックさーん…やっと追いついたー」

一本あとの列車に乗ったモーザーが現れた。
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