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第17話
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ロボットモーターショーTV関係者控え室
新谷ろんりは渋るマネージャーを強引に説き伏せ、今日もトークショーに出演する予定だった。
「なんか胸がぞわぞわする‥あの日と同じ感覚、始まったんだ‥何かは分からないけど、それは確かにいる」
* * *
ロボットモーターショー屋外展示場
冬馬と佐伯が話している。
「アメリカからドライバーを呼ぶとか、黒崎の冬馬嫌いも相当な物ね」
佐伯は呆れた様に言った。
「シミュレーションの為には直哉にスキルが近い方がいいんだろ」
冬馬はぶっきら棒に答えた。
「まあ、そういう意味では好都合だったんだけどね」
「ところで、例の準備はして貰えたか?」
一段トーンを落とした声で冬馬が言った。
「したけど、これってどんな意味があるのよ?」
佐伯も声を潜めて答えた。
「ドライバーの勘って言うか‥念の為さ」
「何それ、説明になって無いんだけど‥」
* * *
イベントホール『ドリーメッセ』 駐車場 TV中継車
章生の許に氷室から連絡が入る、
『そろそろディープスペース内ではデモンストレーションバトルが始まるよ』
「現実世界のデモンストレーションバトルも予定通り10分後に始まるそうです。
‥あの、事故は本当に起こるんでしょうか?」
『シミュレーションの話をしてるなら、99パーセントの確率で起こる筈さ。
現実の話なら僕の知ったこっちゃないけど、犯人が態度を改めるか、小久保直哉が犯人だったら起こんないんじゃない、どっちにしろ後は調査官がどうするか次第だと思うよ』
「もちろん現実の事故は防ぎます、絶対に」
* * *
ディープスペース内でデモンストレーションバトルが始まる。
「さあ始まりました!どちらが勝つんでしょうか、楽しみですね」
女性リポーターの当たり障りのない言葉に対し、ろんりはロボットオタクらしい答えを返す、
「パワーならPD-105、速さなら軽量なTEIMO、接戦になるんじゃないでしょうか」
* * *
城杜大学ロボット研究室
「これって‥」
「ああ、絶対変だよな‥」
ディープスペースでPD-105のシミュレーションをしていた学生達がひそひそと話をしている。
「そこ!何かあったなら、とっとと報告したまえ」
川田教授がイライラした声で問い詰めた。
「PD-105の動きが変なんです」
「どう変なんだ?」
「動きが速すぎるんです。おい‥嘘だろ‥」
律華が学生のPCをのぞき込む。
「‥何これ‥想定速度の‥3倍?」
* * *
章生は十数台のモニターでシミュレーションと現実、二つのモーターショーをチェックしていた。
『誰か105のパラメータを書き換えたかね?』
モニター越しの川田教授が呼びかける。
『ンな事する訳無いっしょ。PD管理サーバーからダウンロードされた動作パターンのせいじゃない?』
氷室が答える。
「どうかしましたか?」
章生が訊く。
『動きが想定とまるで違う、パラメータかOSが変わったとしか思えん』
『ふーん‥面白いね、調べるからちょっと待ってて』
「やっぱりOSに裏モードが存在した‥」
章生は誰に向けるともなく呟いた。
『えーと、分かった事だけ言うよ。105はPD管理サーバーじゃなくて、シミュレーション内のどっかにあるPCを中継して外部のコンピュータと通信してるんだ』
氷室の言葉に章生が疑問を投げる、
「それは事故当日も同じ外部コンピュータにアクセスしていたという事ですか?」
『そだね、つまりそのPCの持ち主が犯人、って言うか外部コンピュータを使って105に何かしたって事になるね。‥調査官、出番が来たんじゃない?』
「はい、ディープスペースにダイブして通信元を調べてきます」
章生はVRゴーグルを装着しながら言った。
『くれぐれもシミュレーションへの干渉は慎重にね』
「了解しています」
* * *
ディープスペース内のロボットモーターショー会場
物陰に現れる章生。
「これがシミュレーション?現実としか思えないな‥」
『はじめてのダイブで感動しているのは分かるけど、急いだ方がいい、時間は限られてるよ』
イヤホンから氷室の声がする。
「そうでした」
デモンストレーションバトル中の特設ステージに来る章生。PD-105は素早い動きでTEIMOを翻弄していた。
バックヤードでは佐伯がモニターを見ながら指示を出している。
「氷室さん、問題のPCはどこですか?」
章生はイヤホンのマイクに話しかけた。
『待って、今、WiFiのIPアドレスを追っかけてるから‥分かった、電波の出所は関係者控室3だよ』
「分かりました、すぐに向かいます」
「やりすぎよ、直チン!」
佐伯の声が響いた。ステージではPD-105が TEIMO の腕を引き千切ろうとしているところだった。
「始まったか!」
章生は関係者控室3に向かって走り出した。
関係者控室3の前に来た章生、ドア横のプレートには『ハヤセモーターススタッフルーム』と書かれていた。
(やっぱり‥だったらこの部屋にいる筈なのは‥)
章生はドアを開けようとする、が、ドアにはロックが掛かっていた。
「くそっ鍵が‥」
『しょうがないなあ、サービスですよ』
イヤホンから氷室の声がすると、カチャっと音がしてロックが解除された。
ドアを開けて部屋に飛び込む章生。しかし、そこにいた意外な人物を見て章生の足は止まった。
「君は‥蓼丸‥綾可さん?どうして君がここに‥」
新谷ろんりは渋るマネージャーを強引に説き伏せ、今日もトークショーに出演する予定だった。
「なんか胸がぞわぞわする‥あの日と同じ感覚、始まったんだ‥何かは分からないけど、それは確かにいる」
* * *
ロボットモーターショー屋外展示場
冬馬と佐伯が話している。
「アメリカからドライバーを呼ぶとか、黒崎の冬馬嫌いも相当な物ね」
佐伯は呆れた様に言った。
「シミュレーションの為には直哉にスキルが近い方がいいんだろ」
冬馬はぶっきら棒に答えた。
「まあ、そういう意味では好都合だったんだけどね」
「ところで、例の準備はして貰えたか?」
一段トーンを落とした声で冬馬が言った。
「したけど、これってどんな意味があるのよ?」
佐伯も声を潜めて答えた。
「ドライバーの勘って言うか‥念の為さ」
「何それ、説明になって無いんだけど‥」
* * *
イベントホール『ドリーメッセ』 駐車場 TV中継車
章生の許に氷室から連絡が入る、
『そろそろディープスペース内ではデモンストレーションバトルが始まるよ』
「現実世界のデモンストレーションバトルも予定通り10分後に始まるそうです。
‥あの、事故は本当に起こるんでしょうか?」
『シミュレーションの話をしてるなら、99パーセントの確率で起こる筈さ。
現実の話なら僕の知ったこっちゃないけど、犯人が態度を改めるか、小久保直哉が犯人だったら起こんないんじゃない、どっちにしろ後は調査官がどうするか次第だと思うよ』
「もちろん現実の事故は防ぎます、絶対に」
* * *
ディープスペース内でデモンストレーションバトルが始まる。
「さあ始まりました!どちらが勝つんでしょうか、楽しみですね」
女性リポーターの当たり障りのない言葉に対し、ろんりはロボットオタクらしい答えを返す、
「パワーならPD-105、速さなら軽量なTEIMO、接戦になるんじゃないでしょうか」
* * *
城杜大学ロボット研究室
「これって‥」
「ああ、絶対変だよな‥」
ディープスペースでPD-105のシミュレーションをしていた学生達がひそひそと話をしている。
「そこ!何かあったなら、とっとと報告したまえ」
川田教授がイライラした声で問い詰めた。
「PD-105の動きが変なんです」
「どう変なんだ?」
「動きが速すぎるんです。おい‥嘘だろ‥」
律華が学生のPCをのぞき込む。
「‥何これ‥想定速度の‥3倍?」
* * *
章生は十数台のモニターでシミュレーションと現実、二つのモーターショーをチェックしていた。
『誰か105のパラメータを書き換えたかね?』
モニター越しの川田教授が呼びかける。
『ンな事する訳無いっしょ。PD管理サーバーからダウンロードされた動作パターンのせいじゃない?』
氷室が答える。
「どうかしましたか?」
章生が訊く。
『動きが想定とまるで違う、パラメータかOSが変わったとしか思えん』
『ふーん‥面白いね、調べるからちょっと待ってて』
「やっぱりOSに裏モードが存在した‥」
章生は誰に向けるともなく呟いた。
『えーと、分かった事だけ言うよ。105はPD管理サーバーじゃなくて、シミュレーション内のどっかにあるPCを中継して外部のコンピュータと通信してるんだ』
氷室の言葉に章生が疑問を投げる、
「それは事故当日も同じ外部コンピュータにアクセスしていたという事ですか?」
『そだね、つまりそのPCの持ち主が犯人、って言うか外部コンピュータを使って105に何かしたって事になるね。‥調査官、出番が来たんじゃない?』
「はい、ディープスペースにダイブして通信元を調べてきます」
章生はVRゴーグルを装着しながら言った。
『くれぐれもシミュレーションへの干渉は慎重にね』
「了解しています」
* * *
ディープスペース内のロボットモーターショー会場
物陰に現れる章生。
「これがシミュレーション?現実としか思えないな‥」
『はじめてのダイブで感動しているのは分かるけど、急いだ方がいい、時間は限られてるよ』
イヤホンから氷室の声がする。
「そうでした」
デモンストレーションバトル中の特設ステージに来る章生。PD-105は素早い動きでTEIMOを翻弄していた。
バックヤードでは佐伯がモニターを見ながら指示を出している。
「氷室さん、問題のPCはどこですか?」
章生はイヤホンのマイクに話しかけた。
『待って、今、WiFiのIPアドレスを追っかけてるから‥分かった、電波の出所は関係者控室3だよ』
「分かりました、すぐに向かいます」
「やりすぎよ、直チン!」
佐伯の声が響いた。ステージではPD-105が TEIMO の腕を引き千切ろうとしているところだった。
「始まったか!」
章生は関係者控室3に向かって走り出した。
関係者控室3の前に来た章生、ドア横のプレートには『ハヤセモーターススタッフルーム』と書かれていた。
(やっぱり‥だったらこの部屋にいる筈なのは‥)
章生はドアを開けようとする、が、ドアにはロックが掛かっていた。
「くそっ鍵が‥」
『しょうがないなあ、サービスですよ』
イヤホンから氷室の声がすると、カチャっと音がしてロックが解除された。
ドアを開けて部屋に飛び込む章生。しかし、そこにいた意外な人物を見て章生の足は止まった。
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