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第14話 俺は丘の上に立つ屋敷に来た

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俺は、とある屋敷の前に立っていた。ここは領主ランバートの息子、コーディの屋敷だ。

俺の名はエドワード、この国の第一王子だ。いや、だったと言うべきか…おれの王位継承権はおそらく抹消されたはずだ。

あの舞踏会の夜、置手紙を残して消えたエレーヌ。
父王、母王妃、ハバロッティ伯爵、伯爵夫人、皆がエレーヌをなじり、婚約を解消すると言った。

でも俺は信じなかった、きっとこれには何か事情があるはずだ。
協力してくれる者はいない、俺は周囲の反対を押し切ってエレーヌを探す旅に出た。
父王は「お前は王位継承者、失格だ」と言った。上等だ、もう周囲の人間に愛想笑いをふりまく事にもウンザリしていた。

いくつもの町や村を訪れたが、エレーヌの足取りはまるで掴めなかった。そのことが逆にエレーヌの身に何か起こっている事を想像させた。

俺は裏社会のギルドに接触し、ある有力な情報を入手する事に成功した。
それは『地方領主の息子が密偵組織を作り、その組織が城から伯爵令嬢を誘拐した』というものだった。

俺は確信した。そして、ここにやって来た。

正門を手で押すとギギギ…と音を立てて開いた、カンヌキは掛けられていなかった。
(罠かもしれない)夕日で赤く染まる屋敷はまるで燃えているようで、これから起こる事を予感させた。

屋敷に鍵は掛かっておらず、建物内は静まり返っていた。
俺は剣を抜くと部屋の扉をひとつずつ開けていった…

二階のある部屋の前に来た時、俺はただならぬ殺気を感じて立ち止まった。

俺は剣を握り直すと、思い切りドアを蹴り開けた。

逆光でシルエットしか判らないが、それは若い男だった。

「コーディ・ランバートだな?」

返事はない。目が慣れてくるとその男の顔が見えた、やつれているが眼光は鋭い。

「エレーヌはどこだ、返答次第では…お前を切る!」

「なぜここに来た…君はエレーヌに振られたんだ、諦めろよ」

「お前の悪だくみだという事はもう分かっているんだ。さあ、エレーヌを返せ」

「君にはいくらでも代わりがいるじゃないか、なんでエレーヌに拘るんだ?」

「お前に俺とエレーヌの何が分かる?俺が愛を伝えたのはエレーヌだけだ!」

 * * *

学院の食堂、俺はクラスの悪友たちと昼食を食べていた。

「じゃあ昼飯代を誰が払うかジャンケンしようぜ!」

ジャックが言い出した、まあ、いつもの事だ。

「たまには飯代以外のものを賭けないか?」

ビルがいたずらっぽく言った。

「面白そうだな、何を賭ける?」

俺は話に乗った。

「負けた奴が女子に告白するってのは?」

ビルの提案に俺達は賛成した。

「じゃあいくよ。ジャーンケーン…ポン!」

俺はグー、他の奴らはパーだった。

「…はめたな?」

「そんな事はないさ、偶然だよ」

ビルは笑いをこらえながら言った。

「さあ、王子様は誰がお好きなのかな?」

ジャックが俺をからかった。

ここで怒って無かった事にしてしまうのも無粋というものだ、かと言って俺もそれなりに女子人気がある、特定の女子に告白すれば大騒ぎになるのは目に見えていた。

さて、どうしたものか?俺は考えた。
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