修復スキルで無限魔法!?

lion

文字の大きさ
上 下
38 / 48

ミズィの忠告

しおりを挟む
  「ところでぇ、あぁたたちは何しにこの街に来たのさ?見たところ冒険者家業もベテランって感じに見えないけど?」

「えぇ……っと、特にこの街に目的があってって訳じゃ無いんです。ここより少し先に行った山の中にあるハツラ村から出てきたんですが、まずは持っているコドクグモの素材を売ろうって話になって、で、この街の商人さんにメラスまで行けば買い取ってもらえるって話だったんで、とりあえず来たみたいな感じですね」

「あぁー!もしかしてあのコドクグモの素材をギルドに売ったのってあぁたたちだったの!へえぇ~!コドクグモを狩るなんて中々やるじゃないの!」

「そうなんスよ!中々やるんですよぉオレたち!なぁ!?」

「あ、いや、あれはオレたちだけじゃなくて、村の人総出で倒しただけで、オレらの取り分ってだけですよ」

 ちゃんと言っておかないとゼニが調子のいい事を言ってしまいそうだからな。

「それにしたって大したもんだよ。コドクグモって言ったらCランクの魔物でしょーよ。それを村人とメガ級冒険者でねぇ。あ、おねーさんワイン追加でお願いねー」

 なんかサラッと追加注文したぞ?奢りだって言うのに。あと魔物のランクはABCで表すのか?

「いやぁーしかしさぁー、あぁたたちも何でまたこんなタイミングでこの街に来たのさ、タイミング悪すぎでしょうよ」

「タイミングが悪い?」

「そうだよぅ~タイミング激悪だねぇ~。今だいーぶエンシェントエルフとのいざこざが拗れてるところだからねぇ~。あ、ワインありがと」

 ミズィさんはワインを運んできたお姉さんに気持ちの悪い笑顔でお礼を言った。にしてもエンシェントエルフ?なんかそれ、ちょこちょこ聞くな?

「エンシェントエルフってなぁ、この街の少し先にある、誤ちの森?だったっけ?なんかそんな名前の森ん中にいるエルフなんだっけかぁ?」

 ゼニは少し知っている様だ。

「そそ、それそれー。あ、このワインうまっ。んでね、そのエンシェントエルフと近々大規模な戦いをふっかけようって話になってるのよ、この国の奴らはさ。で、この国はほら、王国騎士団って言ったって、大きな声では言えないけど中々お粗末な騎士団じゃない?だから我々冒険者にも依頼が出されるって話になってんの。どこからともなくそんな噂を聞きつけた冒険者がこの街に集まって来てる訳だ」

「そうなんだ……。でも王国騎士団も強そうでしたけどね?」

「なぁに、王国騎士団を見たの?」

「この街に着く直前に、そのエンシェントエルフとかって人達と戦う所に出くわしちゃって……。何だったかな?ダージ王子とルグレ騎士団長とかなんとかって人達だったかな?強そうに見えましたよ?」

「ああー、ダージ王子と騎士団長ね。まぁこの国でまともに強いって言えるのはその辺ぐらいなもんなのよねぇ~。それ以外は残念なもんよ、残念」

 ミズィさんは手をヒラヒラさせて呆れたアピールをする。

「まぁ騎士団も人数だけはそこそこいるからさ、指揮命令は騎士団が、実際戦うのは腕に自信がある冒険者が、って事で金で解決しようとしてる訳。傭兵ギルドに声を掛けなかっただけマシかなぁ。あいつらが混ざってくると人道的にやべぇ奴らがわんさか来ちゃうから」

「てことは、近々冒険者ギルドに依頼が来るんですか?」

「そ、なんと驚きのエンシェントエルフの討伐依頼ね。そんなの聞いた事も無い。くゅぅふふふ!笑うしかないね!」

 そんなに珍しい事なんだろうか?

「てかまだその依頼、出てないんですよね?なんでミズィさん知ってるんですか?」

「あぁー、それは言えないけど、私の依頼主が絡んで来る話なのよ、言えないけど。私は別の依頼を受けてこの街に来てるって訳。あのクソ忌々しい依頼主のね……女王コドクグモの毒さえ買えてれば……」

 なんか最後の方は小声過ぎて聞き取れなかったな?なんか依頼主に不満がありそうだな。

「てことで!あぁたたちそんなヤバい依頼は絶対に受けないのよ!金と名声に目がくらんで王国の捨て駒になるようなバカはするんじゃないよ!分かったあ!?」

「りょーかいッス!んあー!腹いっぱいだぜぇ!」

 ゼニ聞いてた?すげぇ満足そうな顔してるけど?

「んんー!バカ!ゼニくんはバカ!絶対痛い目見る!トウゴくんも気をつけなよ!」

「気をつけます!」

 まぁ来たばっかりでそんな面倒事に巻き込まれる事も無いだろ。
 その後は元が何だったのかはすっかり忘れてステーキを喰らい、久しぶりの米を堪能して満足な時間を過ごした。

「いやぁーほんと!奢ってもらっちゃって悪いねぇ!たぁいした事もしてないのにね!くゅぅふふふ!」

「いや!いいんスよぉ~!うちのトウゴがお世話になったんでぇ!なぁおい!」

「そうですよ、気にしないでください。お金出したのも全部オレなのに無駄にゼニが偉そうですけど」

「まぁ~楽しかったよ!また機会があったらご飯でも食べようじゃないの!」

「いいッスねぇ!じゃあさっき教えてもらったミズィさんおすすめの店に行こうぜぇ!」

「りょーかいりょーかい!くゅぅふふふー!じゃあまたね~!」

 ミズィさんとゼニがぶんぶん手を振り合っている。なかなか面白い人だったなぁ。本当にまたご飯食べに行きたいな。ステーキも美味かったし。オークだったけど。

「いんやぁ~!美味かったし腹いっぱいになったなぁ!もう帰って寝るか!」

「いや早いなお前。食うか寝るかしか無いのかよ」

「腹いっぱいになったら眠いだろぉ~!だいたいまだ宿も決めてねぇんだ、さっさと探さないとなぁ!」

 確かにそうだ。ギルドをそそくさと出て買い物行って、そのままミズィさんとご飯食べたんだから、宿なんて決めてなかった。

「そもそも宿ってたくさんあるのか?すぐに泊まれる所って見つかるの?」

「宿?そりゃたくさんあるだろ?むしろ宿が無い街を探す方が難しいだろ?なんだったら金さえ払えばギルドにだって寝泊まりする所ぐらいあるぞ?」

「そりゃあ宿はあるってのは想像つくけど……でもこんな街中にたくさんあるのか?」

「そりゃあるだろ?じゃなかったら宿とギルドの往復ですらしんどいだろ?」

 あぁー、なるほど、旅の冒険者みたいなヒトが多いから、必然的に宿も多いのか。なんだか旅先で1、2泊するホテルをイメージしてたけど、それとはちょっと違うみたいだ。

「じゃあーさっそく探しに行くかぁ。オレァちゃんとした風呂がついてるとこがいいぜ。その為なら多少の出費はいとわねぇ」

「意外だな、お前がそこにこだわるとは」

「どこがどう意外なんだ?」

「どこって、そりゃあ……ん?」

 なんだか向こうが騒がしい。飲食街の通りの先、ここよりも酒の雰囲気が強く出ている店が並ぶ辺りが何やら騒がしい。

「んあぁ?なんだぁ?」

 ゼニもオレの視線の先を見る。オレもゼニもちょっと気になり2人で騒ぎの方へと近づく。

「なぁんだあ!?舐めてんのかぁ!?」

「舐めてなんていないでしょ?そっちが勝手に盛り上がってるんじゃない」

 あれは確か……街に入る前のゴタゴタの時に会った変な名前の子だな?確か名前は……なんだっけ?で、その子が7、8人のゴリラっぽい獣人に詰め寄られている。

「あぁ!?こっちが優しくお誘いしてやったってのによぉ~!調子に乗るなよ小娘が!」

「調子に乗ってるのはどっち?あなたのお誘いに私が喜んで乗ると思ったのが奇跡だね~。まぁ私の魅力なら分からないでも無いけど!」

「魅力ってよぉ!ダハハハハ!笑わせるぜぇ!小娘よぉ!オレァ声掛けるまで気が付かなかったが、お前ソジンだったんだなぁ!その極端に小せぇ乳はエルフの特徴だと思ったのによぉ!」

 あ、なんかあの子、凄い形相で握った拳が小刻みに震えてるぞ?これはあれだ、触れちゃならない所に触れちゃったやつだ。

「なぁによ、頭空っぽの巨乳好きのバカが……。いいわよぉ~やるならやってやるわよぉ~。全員まとめてぶっ飛ばしてやるわよぉ~」

「あぁ?おもしれぇ!丁度こんなソジンだらけのつまらねぇ国に来てストレス溜まってんだ!明日の朝には起き上がれねぇ程にはお仕置してやらねぇとなぁ!」

 そう叫ぶとゴリラの獣人は拳を振り上げる。さすがに剣を抜くほどバカじゃないか。
 その拳がまさに女の子に襲いかかろうとした瞬間、横から割って入った男がゴリラの拳を鷲掴みにした。ってあれ?割って入ったのゼニじゃん。いつの間に?

「おいおいおっさんよぉ~、関心しねぇなぁ~。か弱い女の子が困ってんだろぉよぉ~?」

 ゴリラはゼニの手を振り払い1歩後ずさる。

「な、なんだお前ぇ!」

「別にか弱く無いけど?」

 女の子がゼニに言う。

「んあ?そうか?でもほらあんた、こいつの言う通り華奢だろ?胸とか」

「はあぁ!?なんなの!あんたなんなの!?腹立つ!」

「あぁ?なんだよ忙しい奴だな。てかお前さっき会ったな?なんてったっけ……?アサゴハン?だっけか?」

「アサヒ・ルヴァンよ!ああーもう!先にあんたぶっ飛ばすわよ!」

「やめとけよ、華奢なんだから、胸が」

「決めた、あんたからだわ」

 やばい、アサヒちゃんめっちゃキレてんじゃん。しかもゼニに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

無双スキルで邪神や魔王とか悪い奴を片っ端から退治する雑魚戦士Aの旅

イクシス
ファンタジー
魔法や魔封具、聖神武器すら無い田舎で育った主人公。 遥か先に有る始まりの町で有名な蒼空のギルドであるブルーパレスを目指し、旅をするアヴィであった。 護身用の剣を持ってはいるが、過去のトラウマから使えない主人公。 親友の魔女ヴァルプギスが所有する意志を持ち、話す事の出来るタロットカード。 ただし一日に一回しか、攻撃出来ない縛り有り。 魔法や物理攻撃を無効化できる賢者、だが大金を前もって払わないと助けてくれない守銭奴。 こんなパーティで不安が募るが、一人で行くよりはまだマシかな? とにかくブルーパレスを目指して先ずは人探しを始める一行。 しかしこの冒険には、致命的なミス、決してやってはいけない禁忌と忘れていたこと、そして縛約がある。 雑魚戦士Aは、今日も苦難を何とか乗り越えて敵を倒す。 筈!

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...