家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です

二章 しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

喧嘩してるところに遭遇する。それってすっごく気まずいこと

　レベッカにとって、ナイルのその行動は予想外であった。

　ルルアリアは何度も否定しているものの、レベッカとルルアリアは姉妹である。故にもしナイルがルーズ家との繋がりを重要視しているのであれば今後貴族の地位を剥奪される予定であるレベッカよりもルルアリアとの繋がりを持っていた方がいいに決まっている。

　だが、レベッカのそんな考えは呆気なく散ってしまった。

「ナ、ナイルさん！」

　早く謝らなければルルアリアの機嫌を損ねてしまう。そう考えたレベッカはナイルの名前を呼んだ。

「なんでしょうか？レベッカ様」

「なんでしょうかって………はやく姉様に謝らないと………」

　そう言いながらレベッカは未だに呆然としているルルアリアを見る。
　レベッカ本人としては、ナイルがルルアリアの手を弾くことはいけないことだと思っていた。だが、ナイルの考えは違った。

「僕と彼女は親しい真柄ではないので肉体的接触を許す理由はないですよ」

　ナイルのその言葉をはっきりと聞いたルルアリアは、そこでハッとして憤慨した。

「だとしても、いきなりレディーの手を叩くなんてどうかしてるわ！そちらこそマナーがなってないのでは！？」

　ルルアリアはそう大声で言う。レベッカはその声にビクッとなったが、ナイルは別段気にした様子はない。

「確かに、咄嗟とはいえども女性の手を叩いてしまい申し訳ございません」

　ナイルはそう言って軽く頭を下げた。

「ふん。わかってくれればいいのよ。さあ、わかったらあんたはさっさと退きなさい」

　ルルアリアの言葉に、レベッカは早足にこの場を離れようとした。

「いえ、レベッカ様が離れる必要はないですよ」

　だが、ルルアリアのレベッカがすぐに離れて、改めてナイルとの交友を深めるという思惑は他でもないナイルによって阻止されることとなった。

「え！？私は大丈夫ですよ？お二人もお話しがあると思いますし………」

「はい。先程、少し話す内容が出来ました。ですが、レベッカ様が離れる必要性はありません」

　だが、ナイルのその意見を否定する人物がいた。

「ちょっと！いくらナイル様とも言えども、部外者をこの場に残すのはおかしくないですか！？」

　ルルアリアである。

「いえ、僕はおかしいとは思いません。僕の考えが間違っているとも思えません」

　ナイルは少し首を振りながらルルアリアの台詞を否定した。

「それに………」

　そうしてルルアリアをそのふたつの目でしっかりと見据えると、

「家族を虐げる人と、僕は親しくなりたいなどとは思いません」

　軽蔑の視線とともに、ルルアリアにそう言い切った。