上 下
36 / 111
二章  しかし、概して人々が運命と呼ぶものは、大半が自分の愚行にすぎない。

目指せCommon Life

しおりを挟む
 レベッカたちが乗っている馬車は夕方には王都に到着した。

「わぁ!」

 レベッカは、始めてみる自分が住んでいる街以外の街の景色に見蕩れているようだ。

「お嬢様。あれが、今日の社交会が開かれる王城です」

 アイトが誘導した先には、レベッカが住んでいる屋敷よりもはるかに大きい城が堂々と建っていた。

「あれがお城かぁ………本当にお屋敷よりも大きいんだね!」

 はじめての馬車。はじめて見る街。そして城。
 レベッカのテンションは今も上昇中だ。

「落ち着いてくださいお嬢様。その調子では夜まで持ちませんよ」

 アイトに宥められて、ゆっくりと馬車の席に座り直す。
 やがてレベッカたちの乗っている馬車は王城の中に入って行った。
 入って行ったのだが、

「ねぇアイト?なんでお父さんたちは降りて私は降りないの?」

 何故かアイトに、レベッカは馬車で待機するように言われたのだ。

 置いていかれている不安を胸の中に抱きながらアイトに質問をすると、

「お嬢様はもしかしたら旦那様に除外される可能性もありますからね。そんなことはしないと思いますが、念の為です」

 そう言われると納得するしかないのだが、

「じゃあ、私はちゃんと入れるの?」

 そこが今のレベッカの不安点だった。

 もしかしたら中に入れないかもしれない。そんな考えが頭の中を駆け巡る。

「それなら大丈夫です。懸念点を旦那様に伝えたうえで、僕の行動は事前に伝えていますので」

「つまり………?」

「お嬢様は問題なく社交会に間に合います」

 その言葉を聞くと、レベッカは安堵の息を吐いた。

 いくらアイトを信じているとはいえ、不安なのだ。

 そして馬車を指定された馬車に置いたアイトは、馬車の扉を開いた。

「どうぞ、お嬢様」

 アイトが差し出してくれた手をレベッカが掴む。

 そして優しく、ゆっくりと地面に降りた。

「ありがとうアイト」

 レベッカはお礼を言ってから周囲を見渡す。

「………馬車しかないね」

 色々な貴族の人たちを密かに期待していたレベッカは、少しだけ落胆してしまう。
 周りにはどう見ても馬車ばかりだったのだから。

「まあ、ここは馬車を停車する場所ですからね。普通の貴族の子はここまで来ないでしょう」

 普通の貴族の子はここまでこない。ということは

「もしかして、私って普通じゃないの!?」

「いえ、お嬢様は元々普通ではございません」

「うぐっ」

 虐められていることを除けば普通だと思っていたレベッカの心に、アイトの言葉はクリティカルヒットした。

「で、でも!それも今日まで。貴族の娘として、社交会に出るんだから!」

 正直、社交会に出てもレベッカの現在の境遇が普通の貴族とは違うので今日までではないのだが、せっかく張り切っているレベッカを蔑ろにする訳にはいかなかった。

「頑張ってくださいね」

 結局、アイトにできることはエールを送るだけであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】監禁ルートと病んで殺害ルートしかないヤンデレ攻略対象の妻になりました

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
恋愛
裏路地で破落戸に囲まれ、特にピンチでもない状況で前世の記憶が戻った私。恋愛小説『黒薔薇をあなたに捧ぐ』の悪役令嬢レオンティーヌだった。ヒロインを襲わせるはずの悪漢に絡まれた私は、自力で解決を試みた。だって、悪役令嬢を助けてくれるヒーローは登場しないもの。シモン侯爵家の一風変わった育られ方をした私は、貴族令嬢とは思えない戦いを繰り広げる。 物語の展開を回避すべく、攻略対象との婚約を解消しようとしたけれど……彼は私にご執心。美しい顔と甘い囁きで私を口説いて来る。 待って! この小説って、ヤンデレ攻略対象ばかりが出てくるお話じゃない?! 逃げられずに結婚まで押し切られたレオンティーヌは、溶けるほど溺愛される。物語はどうなっちゃうの? シナリオと強制力、仕事しなさいよ!! 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/01/09……小説家になろう、異世界恋愛 19位 2023/01/08……完結 2022/11/26……アルファポリス、女性向けHOT 35位 2022/11/23……カクヨム、恋愛週間 29位 2022/11/21……エブリスタ、恋愛トレンド 26位 2022/11/19……連載開始

断罪されたクールな聖女は、隣国の騎士団長に愛されています

絹乃
恋愛
ふたりの聖女が並び立つタイメラ王国。パウラは、先輩の聖女テレーシアのことがことごとく気に食わない。「絶対にあの女を引きずり下ろす。わたしがタイメラ唯一の聖女にして、王妃となり、のし上がってやる」パウラは、手っ取り早くテレーシアを失脚させるために、毒を盛られたと嘘をつく。王太子ビリエルはパウラの虚言を信じ、テレーシアを処刑する。だが精霊の力を借りて、テレーシアは刑場から消えた。飛ばされた隣国で、テレーシアは騎士団長のアルフォンスに助けられる。聖女が一人になったことで災厄に見舞われたタイメラ王国。「お前がテレーシアを連れ戻せ」と王太子ビリエルにパウラは命じられる。不服を洩らしながら隣国に向かったパウラは、テレーシアこそが敬愛される聖女であることを見せつけられる。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

処理中です...