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一章 汝等ここに入るもの、一切の望みを捨てよ。

高校とかの修学旅行でさ、男女が集まって楽しそうにわいわいする描写とかあるじゃん?あれってさ、どうやってしてるの?

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 殺人事件が起こり、ステラに会いに行った日からまた一週間経過した。

 その一週間の間、レベッカは隙を見ては何度も屋敷から脱走し、ステラに会いに行っていた。
 屋敷の使用人たちの中には、勤務中にも関わらず、用事もないのにレベッカの元を訪れては、理不尽な暴行を与えていたものだが、殺人犯が見つからないこともあり、殆ど誰も訪れなかったと言ってもいいだろう。
 まぁ、その分朝食も昼食も夕食も持ってくるものは誰もおらず、レベッカのご飯はアイトが持ってきてくれたものだけになった。最も、持ってきてくれてもどうせレベッカの体にぶちまけるので、ぶっちゃけ変わらなかったのだが。

 使用人たちがレベッカの部屋を訪れない。その恩恵によりレベッカは部屋を飛び出し、街に出かけることが可能だったのだ。
 もちろん、父であるヴァインヒルトにバレると半殺しにされる案件だが、アイトはヴァインヒルトにこのことを報告していないし、レベッカもそう簡単にバレるようには脱出していない。

「今日は、少しだけ平和だったね」

 時刻は夜。レベッカはベッドから見える外の景色を見ながら呟いた。

「はい。今日は殺人事件がなくてよかったです」

 実はこの殺人事件。実にいやらしく、毎日発生しているわけではなかったのだ。
 それでも、兵士たちは警戒を怠らない。

「お嬢様も勝手に抜け出さない日でよかったですよ」

 アイトの言葉を聞いても、レベッカは動揺しなかった。

「少しくらい、動揺しないのですか?」

「しないよ?だってアイトだもの。アイトに隠し事しても無駄だってことくらい、わかってるから」

 昔から、レベッカはアイトに隠し事ができなかった。いつもすぐに見破られてしまう。

「お友達が心配な気持ちはわかりますが、程々にしてくださいね」

 アイトは優しく注意だけに留めると、部屋から出てしまった。

「やっぱり、アイトは優しいね………」

 アイトは、全てわかって黙っててくれているのだ。
 アイトが執事だから、捜査に積極的に関わろうとしないだけで、本気で捜索すれば、殺人犯くらいアイトならば見つけることができるだろう。
 レベッカは無意識にそれほどまでにアイトのことを信じていた。

「ステラ………」

 中々眠りにつくことが出来ずに静かにベッドに横たわる。

「大丈夫かな………?」

 レベッカにとって、ステラは人生で初めてできた友人だ。絶対に守ると、そう心に決めながらチラリと窓の外を見た。見て、しまった。

「………え?」

 窓の外に映る街は、美しい紅色に染まっていた。
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