分かれ道のすすみかた

日向寺結菜

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五歩目

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※前回までのお話

啓太にスーツ姿を見てもらおうと
サプライズで家に訪れた亜衣。

だが、家から出てきたのは啓太の母だった。

うまく誤魔化して啓太の部屋にあがると、全てお見通しのように笑う啓太。

「おいで」

と啓太に言われ、ギュッと抱きしめられる。



「‥啓太、なんかいい匂いする」

「んー。さっきシャワー浴びたから」

「そっか‥この匂い好き」


亜衣がそう言うと、少し間を空けて
啓太が覗き込むように亜衣と目を合わせる。

「‥匂いだけ?」

そう言われ、亜衣は恥ずかしくなり啓太の腕の中に顔を埋める。

「ねーねー。匂いだけ?」

少し意地悪な声をしているのはわかったけど、亜衣は恥ずかしくて黙ってしまう。

「‥匂いだけかー。ショックだなー」

あからさまに残念がる啓太に
亜衣は振り絞るように

「‥‥全部好きだよ」

そう伝えると、啓太は何も言わずに抱きしめた腕をギュッと強くした。


人は好意のある人に抱きしめられると
ドーパミンが多く分泌され、幸福感を感じやすい。と、高校の化学の授業で教わった事がふとよぎった。


「‥これが幸福感か‥」


そう感じていた時

♫リリリリリリリ

急に携帯電話のタイマーが鳴った。

「ごめん。鳴ったら勉強しようと思ってタイマーかけてたの忘れてた」

啓太は受験生。
そんな当たり前の事に気付かされてしまった。

「ごめんね、急に押しかけて。スーツ姿みせたかっただけだから、帰るね」

そう言って、借りていたCDを渡し帰ろうとする亜衣。啓太は少し考え込んでから、

「ねぇ、亜衣。この後時間あるなら、俺の事、見張っててくれない?サボらないように」

そう、亜衣に笑いかける。

そんな風に言われた、断る理由なんて無い亜衣は、

「いいよ、見張っててあげる」

偉そうに答えたが、内心啓太と一緒にいられる事が嬉しくて、心の中でガッツポーズをしていた。


♫ガチャ

啓太の部屋の扉が急に開き
飲み物とお菓子を持った啓太の母が入ってくる。

「こんなものしか無いけど、よかったらどうぞ」


「あ、すみません。ありがとうございます」


チョコレートと紅茶が置かれていて、いい香りがする。

「お母さん、ちょっとお買い物してくるから、お留守番お願いね」

はいはい。と答える啓太を横目に、亜衣にニコっと笑いかけ、部屋を出て行く啓太の母。



「じゃあ、ちゃんと見張ってるから!勉強頑張ってね!」


そう伝えて、啓太の近くから離れようとすると

「亜衣。こっち来て」

急に啓太が甘い声で私を呼ぶ。
啓太の隣に亜衣が座ると、何か言い出しにくい様子の啓太。

「啓太?どうしたの?」

「‥母親、1時間以上は帰って来ないと思うんだ‥」

「うん」

「いま、家にいるのは亜衣と俺だけでしょ?」

「うん」

「その‥えっと‥嫌だったら別にいいんだけど‥」

「うん、何?」

「‥亜衣と‥したいんだ」

「‥何を?」


亜衣がそう答えると、啓太は黙ってしまった。

数秒の沈黙の後、「したい」の意味に気がつく亜衣。それと同時に「何を?」と聞き返してしまった自分が恥ずかしくなり、慌てて、

「あの、私ね。まだそーゆーのした事無くて、その、初めてで!あ、でも友達とか先輩から聞いた事あるから知識はあって、でも、ほんとにした事は無いから、その、わからないってゆーか、、」

次々と言葉にする亜衣をみて、緩やかに笑いながら。

「亜衣、落ち着いて。大丈夫。自慢じゃないけど、俺も初めてだから」

そう言い、ゆっくりと亜衣のおでこにキスをする啓太。

「‥いい?」

恥ずかしそうに尋ねてくる啓太が可愛くて、私は声に詰まり、ゆっくり頷いた。


「途中で怖くなったり、止めたいって思ったら、正直に言ってね」


おでこ、ほっぺた、唇、耳、首筋
と順番にキスをしていく啓太。
啓太に触れられるたびに、触れられた場所がスッと冷たくなるような感覚に、体が震える亜衣。

初めてとは思えないくらい、ゆっくりとジャケットを脱がせて、シャツのボタンを外していく啓太。

「亜衣。その顔は反則だよ」

どんな表情をしてるかなんてわからないけど、でも、とにかくドキドキしていた。

啓太のベッドに移動すると、そこは啓太のいい匂いに包まれた空間だった。


「亜衣。これが最後だよ。‥ほんとにいいの?」


真剣な目つきと優しい声。
啓太の匂いに包まれた私は‥


ゆっくりと頷き、目を閉じて、啓太に身を任せた。


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みんなの感想(2件)

ささこ
2021.09.17 ささこ

続きが気になります✨

解除
スパークノークス
ネタバレ含む
日向寺結菜
2021.09.17 日向寺結菜

ありがとうございます。
励みになります。
毎日更新、頑張ります。

解除

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