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⑤
しおりを挟む目の前に勃ちあがるアルの雄。先端は赤黒く艶やかに、竿の部分の血管が浮きたって脈を打っている。
経験がないわけじゃない。多いわけでもないけど。顎が痛くなるし、何がいいのかわからないし、積極的はしてこなかった。いつもさっさと終わらしたかった。
自分から、気持ちよくしてあげたいって思ったのは――初めてだ。
(それにしても、どこかで見たことあるような……)
「気づいたか……?」
「ねぇ、これって……」
「そう、この形でズポズポされて、気持ちよくなって、よがり狂って、イきまくったんだよなぁ、ミコト。」
私の頭を撫でながら、アルは目元にシワを作って口角を上げる。
「さぁ、挨拶しようか」
――そんなエロい顔で、エロい言葉で、アルはとってもずるいと思うの。
言葉は最低なのに、これからされることも鬼畜なのに、また愛液が溢れ出てくるのを感じた。
私の頬にその熱い塊が擦り付けられる。触手の時と――その熱さは桁違いだ。アルの熱が移って、触れたところから身体全体に回っていき、思わず大きく息を吐く。
私を見下ろす視線と目を合わしながらそっと舌を先端に這わした。
「くっ……」
肉棒がピクリと跳ね、さらに大きくなった。ゆっくり舌先で舐め上げる。膨らんだ亀頭も、エラも、竿も、ペロペロキャンディみたいに舐め回す。
まだ咥えない。だってよくわからないけど、もったいない気がする。
――ずっと堪能していたい。
どこから湧き上がる感情かわからないけれど、その囁きに従って舌先だけでアルの熱を感じる。
「ミコト……」
頭に置かれた手にグッと力が入った。
「そろそろ……咥えてくれないか? 」
「……ヤダ。」
舌を大きく出して、肉棒の根元から先端へ、裏筋を舐め上げた。薄い本に、ここを責める描写がよく出ていたからしてみたけど……アルもこれが好きみたい。
「……くっ! 」
噛み殺した声。
ビクリと震えるアルの肩。
眉根を寄せて苦しそうな表情。
醸し出された壮絶な色気に身体がますます燃え上がる。
――チュッ
愛しさ溢れるその顔が、何だかかわいくって、少しだけ先端に口付けた。期待を込めて、肉棒が涎を垂らして喜ぶ。
先端に浮かんだ、プックリ膨らんだ水玉を舐めとる。さっき舐めた白濁よりしょっぱくてこれは嫌いじゃない。
もっと欲しくなって口いっぱいに肉棒にしゃぶりついた。
「……くっ……はぁ……」
私の頭に添えられたアルの手に力が入る。喜んでほしくて、アルがさっき気持ちよさそうにしていたところに舌を這わせながら、顔を前後に動かす。時々、口内に陰圧をかけて吸い付くと、アルが堪らず声を漏らすから――そのたびに胸がキュンと高鳴る。
どうしよう。自分がこんなに変態だって知らなかった。
アルの声を聞くたびに、先端からしょっぱいものが溢れてくるたびに、身体の奥が熱くなってもっと求めてしまう私がいる。
夢中になって、アルの肉棒にご奉仕した。
「……くっそ!! 」
悪態をつきながら、アルが身体を震わせる。脈打つ肉棒から放たれる熱い粘液。口内に苦みが広がって、背中にゾクゾクした快感が走る。
優しく私の頭を撫でる手。熱で潤んで、目元を赤くしながら私を見下ろすアル。荒い息を吐く美丈夫に――
私の心は達成感で満たされた。
心は満たされたのに、飲み込んだ白濁は謎の興奮を私の身体にもたらす。
――もっとちょうだい。
誘われるがままに、イッたばかりのそれに吸い付いた。
「うっ……! 」
アルが手に力を込めて、私の頭を押す。
――チュポンッ
水音を立てて離れた距離に、熱に浮かされていた頭が冷めていく。
(うわぁぁっ!! 何考えているんだ私!! )
自分の思考回路に慌てる。これじゃ、とんだ大変態じゃん!! 見下ろしたまま私を見つめてくるアルの瞳には、全てが暴かれてしまいそうな力強さがあって――なんとかしてごまかさなくてはいけない。
無い知恵を必死で振り絞る。今まで得た薄い本の知識から、この場にふさわしい言葉を。焦りがバレないように、余裕そうな表情で――
「ごちそうさまでした。」
うん、大丈夫。今日一のいい笑顔が出来ているはず。
でも何故か、アルが今日で一番怖い顔をする。背後に鬼でもいそうなオーラが漂っているけど……え? なんで?
グイッとアルに腕を引っ張られて、そのまま膝の裏に手を入れられ持ち上げられた。いわゆるお姫様抱っこだ。近くなったアルの顔に、顔が赤くなる。
堪えるように寄せられた眉、逸らされることのない鋭い視線。獣人騎士の色香で馬鹿になった頭は幻影を見せる。
アルの頭に、ライオンの耳が見えた気がした――
その時、部屋がまた急に光りだした。白くなる視界の隅で最後に見えたのは、砂が落ち切った砂時計。
そっか――アルをイかせた達成感も、満足に含まれるんだ。
さっき感じた渇望は頭の隅に追いやる。私は満足したんだ。あれは何かの間違いだ。
(でも待って……部屋から出るってことは……)
光がなくなった瞬間、私とアルは海底へと、投げ出された。
――ガボボボボッ!!
不意打ちのこと過ぎて口から漏れる空気、私に全力で縋り付くアル。
(ちょっと――そんなにしがみつけられたら泳げないからっ!! )
絶体絶命のピンチに、駆けつけてくれたのは――
「ハルちゃん……っ!! 」
先ほどの部屋では、空気を読んでインテリアと化していたハルちゃんが、すかさず私たちを包み込んで、事なきを得た。
ハルちゃんの中でもう安全なのに、それでも私を離さない、アルの腕の中で考える。
海水に揉まれたおかげで、馬鹿になっていた頭は冷えた。
(大変なことをしでかしてしまった……)
これは浮気とやらではないだろうか。未来のアルのお嫁さんに申し訳ない。さっきまでとは違う音で、心臓が鳴っている。
こんなこと、誰にも言えない。そして、知りたくなかった。
決して叶うことがない望みなのに、こんなにもアルを求めてしまった自分を――
燃え上がっていた火は、張り裂けそうな胸の痛みで消火された。身体についたいろんな液体は綺麗に流されて、跡形もない。先ほどの夢のような時間を証明するものは、何も残っていないのだ。
腕に力を込めて、ゆっくりアルから離れる。海水で冷えた身体は、温めてくれた熱を失ったことでブルリと震えた。
そっと顔を上げると、まだ熱を燻らせた瞳でこっちを見られていたことに気づく。
「ミコト……」
アルがゆっくり手を伸ばしてきて、首筋をくすぐった。
――あぁまだ残っていた。
2人の間にあった出来事の証。
アルがつけた噛み痕が、そこに刻まれていた。
「これ、消さなきゃね……ジークたちに見られたら何言われるかわからない。」
「そうだな……」
女神さまからもらった白い腕輪がはめられた左手を首筋に手を当てて、自らの光魔法で、その痕を癒していく。
――これで、もう何もなくなった。残ったのは思い出だけ。
ズキズキ痛む心は見ないように、気づかないように無視する。
私と、アルと、ハルちゃんは、ゆっくりとアクアブルーの海の中から現実に向かって進んでいった。
お読みいただきありがとうございました(*^^*)
10/3(土)の夜にアル編も公開予定ですので、良かったらまたお読みください!
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