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風の都 ウィンドザック
幕間:ミコトの場合ー⑤
しおりを挟む後日――
「聖女様、私先日の舞台を漫画にしてみましたの――」
「ふぇっ――!? 」
驚いたことに、スカーレットちゃんはあの夜から徹夜で漫画を研究して、自分で描いちゃったみたいだ。あまりのことに目が点になる。
「私、エルモンテ家なのに、夢中になれるものがない落ちこぼれでしたの――。ミコト様が教えてくれた漫画と出会って、身体の中から、こう、あふれ出すエネルギーが止まらなくなってしまいまして。ありがとうございます。ミコト様のおかげで、家族に恥じない私を得ることが出来ましたわ。」
二徹したスカーレットちゃんは、目の下にクマが浮かび、髪の毛はボサボサなのに、表情は晴れやかでこの場の誰よりもイキイキして見えた。ユキちゃんやディアナと同じ血を感じた――
「素晴らしいよ! この漫画最高だよ!! ハインツ様のこの表情がたまらない!! 」
「あの舞台をこんな風にまた楽しめるなんて!! スカーレット、貴女最高よ!! 」
マチルダちゃん達メイドさんズと大興奮だ。
「あぁ、これがあれば本の都にいる姫様にも舞台を楽しんでいただけますね。」
マチルダちゃんが恍惚とした顔で呟く。
(ん? 待てよ――その手があったか。)
「ねぇ、スカーレットちゃん。俺漫画がもっとこの世界に広まればいいと思ってるんだ。よかったら協力してくれないかな――? 」
「――私でよければ、ぜひお願いいたします。」
「ありがとう! 早速なんだけど、この漫画を見せたい人がいるんだ――」
♢♢♢
「ミコト様――!! これは……とても素晴らしい!! 」
「そうでしょそうでしょ! ねぇロザリー、これを劇場で売ったら……売れると思わない? 」
舞台を見た後の高揚感でじゃんじゃん漫画を購入してもらおう大作戦!
まずは舞台の内容をスカーレットちゃんに漫画にしてもらって、公演を見た記念にパンフレットのような感じでお土産に買って帰ってもらう。
そしてそこで漫画家としての経験をスカーレットちゃんに積んでもらい、いつか彼女の作るオリジナル作品が見たい。
あわよくば、それを真似て漫画を描く人が現れて、いつかこの世界にたくさんの漫画が溢れてくれることを願う――
スポンサー兼販売元が確保できたので、あとはスカーレットちゃんに描いてもらうのみだ。メイドの仕事は、エルモンテ家なのに夢中になれるものがなかったので、花嫁修業を兼ねてなんとなくしていたものらしい。周りが夢中になってる中、1人浮いてることは辛すぎて、家をとにかく出たかったみたいだ。
人生の相棒を見つけたスカーレットちゃんは、メイドから漫画家へと華麗なる転身を遂げた。
♢♢♢
――ミコト旅立ちの日
「ミコト様――! ミコト様と過ごした時間はすべてが尊かったです。また帰ってくるのをお待ちしています! 」
「ミコト様――! また異世界のお話を聞かせてくださいませ。」
「ミコト様――! どうかご無事で、お体に気を付けてくださいまし! 」
ミコト様! ミコト様!!
メイドさんたちや女騎士さんたち、ロザリー歌劇団の皆様がお見送りに集まってくれた。
「ありがとうみんな! また帰ってきたら楽しい夜を過ごそうね!! 」
とてもうれしかったので、一人一人と握手してハグして、感謝を伝えて――
(あぁ~、久々にした女子のノリ超楽しい!! )
むさくるしい旅に出る前に、可愛くて麗しい女の子たちとの触れ合いをミコトは存分に楽しんでいた。その時だ。
「コラ、エロガキ! 出発に送れる! 」
「うわぁぁ! なにすんだよアル! いきなりやめろよそういうのっ!! 」
後ろからヒョイッとアルに持ち上げられた。ここ何日か、女の子たちと楽しんでいたおかげでせっかく気にしないようになっていたのに――
こうも軽々と抱きかかえられては意識してしまうやないかいっ!! アルの馬鹿!!
顔がどんどん赤くなってくるのを感じた。
「まだ出発の時間じゃないじゃん!」
「うるせぇ! 早まったんだよ!! 」
眉間に深い深いシワを寄せながら、アルはミコトを馬車の中へ押し込んだ。
「見送りありがとう! いってくるね!! 」
かなり慌ただしい出発となってしまったが、馬車の窓から元気よく手を振って、ミコトたち聖女御一行は、次の目的地“海の都 ラグーノニア”へと出発した。
男子‘s
フェイ 「聖女ちゃんって――あどけない顔して実は一番……」
ザック 「俺、噂で聞いたんですけど――聖女様が毎晩メイドを部屋に連れ込んでお楽しみしてるって……」
フェイ 「うっそマジで!? 」
女子‘s
マチルダ 「……見えた?」
スカーレット 「……えぇ、見えましたわ。」
サマンサ 「……咲いてたね。薔薇の花。」
ナターシャ 「えっ!? 聖女様の恋愛対象って男なの? なぜかしっくりくるけども!! ついでに副団長も男なの? え! えぇ!? 」
ロザリー 「ふむ……麗しい少年とその護衛騎士の話か……」
ノーラ 「はぁ……はぁっ!!」(よだれを垂らしながら何かを猛烈にメモ)
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