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花の都 ラスカロッサ

気になる存在が出来ました

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 結局祖父の許可をもらってから…という話で本日はお開きになった。

 そしてその話は案の定「遊ぶために城下町への外出を許したのではない!!」と議会に却下され、後日、おじいちゃんのふりをしたニッキーとお断りの返事をしに行った。

「ニッキー…?なんだよね…?マジで誰?って感じなんだけど…」

「俺だよ、オレオレ。」 

 さすが諜報員、言われなければ20代の若者に見えない、完璧なおじいちゃんぶりだ。声も違うし身長も違うし、どうやってるのかさっぱりわからない。

 ノーラは残念がっていたが仕方がない。
 誰もが思いつかない話をすることで、ミコトの存在が、異世界人の可能性、すなわち聖女として怪しまれるのはまずいのだ。
 そして真面目に至宝探しのために魔力の底上げはしているのか、と議員のおじさんたちにネチネチ言われた…

(押し切られてついて行っちゃった自分が悪いしなぁ…護衛のアルもユキちゃんも、尻拭いしてくれたニッキーにも申し訳ない…)

 ミコトは反省しつつ、王宮と孤児院を行き来する生活に戻った。


 が、しかし、


(なんかロザリー歌劇団のことが気になって仕方がないんですけどぉー!!!)


 ふとした瞬間に舞台のことを考えてしまう。
(おかしいなぁ…肝心の劇すら見てないのになんでだろう…)
 元の世界でも演劇は誘われて見に行く、くらいのスタンスで熱狂的にハマっていたはずではないのに、なぜだかロザリー歌劇団について、気になって仕方がない。
 なぜ考えてしまうかもわからずに、いてもたってもいられなくなったミコトは、詳しそうなクリスティア姫様とディアナに話を聞きに行くことにした。

 ♢♢♢

「学校が始まる前にミコトとこうやってお茶できるのも最後かしらね…。最近はミコトも忙しくなって寂しいわ。でも前よりイキイキしてるから安心したけどね!」

 姫様は本の都にある学校に通っており、そろそろ長期休暇が終わるので来週あたりに寮へ戻る予定なのだそうだ。この世界の学校は7~12歳まで通う初等教育と13~18歳で通う高等教育に分かれている。初等教育はそれぞれの地域にいくつもあるが、高等教育は本の都にしかないらしく国中の学生が集まる。親元を離れ友情を育みながら、それぞれの将来に必要な知識や技術の習得をするらしい。放課後は町へ繰り出し、夜は寮に戻って友と語り、時には他学校同士で交流しながら…って何その青春あこがれる。

 いつか本の都でアオハルを見るのがミコトの野望の1つだ。

 茶目っ気のある笑顔で微笑みながら姫様は続ける。

「でも驚いたわ。ミコトがあのロザリー歌劇団にスカウトされていたなんて…しかもロザリーとノーラに会って直接お話したんでしょう?あぁ羨ましすぎる!!!」

 ロザリーとノーラのコンビは乙女のカリスマ的存在らしい。
 新作を出せば、チケット売り場は長蛇の列、雑誌・新聞には一面で取り上げられ、そしてその記事を目当ての乙女たちの売り上げが上がる…女性が演じるラブロマンスが究極であるのはどこの世界も変わらないみたいだ。
 姫様とディアナが収集した雑誌記事やパンフレットなどのグッズを見ながら話は盛り上がり続ける。姫様についているメイドたちは同じように瞳を輝かせながら、そしてミコトについているアルとユキちゃんはその盛り上がりにどこか遠い目をしながら…
 昼下がりのお茶会は止まらない。

「ストーリや役者もすごいけど、演出について語ることは外せないわ。ロザリー歌劇団は特別な舞台装置を使って、背景や大道具が変わって場面が切り替わっていくの。とても自然に、そして幻想的に…他の劇団ではまず見ないわ。そのことについては数々の評論家が絶賛して…そして秘密を解明しようとしているのだけど、いまだに誰もわからないわ。ロザリーもインタビューで絶対に答えないし…

 一説によるとロザリーが開発した魔道具だろうって言われているの。」

「魔道具だって!?」

 ユキちゃんが食いつく。ぶれないヤツめ…
 ミコトも演出について書かれた記事を見ながら考えていた。

「黒子さんたちががんばるんじゃないのか…気になるなぁ異世界の舞台事情…」

「ミコトも気になってる!もうこれはあれだ、直接見に行って謎を解明するしかないよね!!」

「あら!実はね、ミコトが気になってるっていうんで、布教のチャンスだと思って…実は今夜の舞台のチケットとってたりして♡」

 ちゃっかり姫様と謎ときにワクワクした少年魔導士を率いてミコトは再び劇場テアトリージョに足を運ぶことになった。


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