不浄の焔 

酒月 桜紅

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序.今は昔。

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 「…あら、まだ生きていたのね。」

パチパチと弾け飛ぶ火花の中、その女の声が耳に響いた。

「…カグヤ、早く離れるよ。その子はもう助からない。」
そうかもしれない。と思った。
瞼が重く、手足の感覚がない。

「いえ、まだ手はあるわ。…正季医師せんせい、禁薬を飲ませて差し上げなさい。」

「…正気か?」

「えぇ、面白そうじゃない。」

…禁薬?コイツらは誰なんだ?

考える間もなく俺は何かを口に当てられ、一粒の豆のようなものを飲み込んだ。

「…良いことを教えてあげるわ。日々人。」

何故、この女は俺の名前を知っている?
そんな疑問は、すぐに吹き飛ばされた。

「この里を燃やしたのは、私たちよ。」

瞬間、反射的に噛みついた。
ドロリと、熱く苦い液体が口に流れ込む。

「…気が済んだか?カグヤ。」

「えぇ、行きましょうか医師せんせい
…それじゃあ、またね。日々人。」

そうして女…カグヤは去っていった。
俺に消せない呪いを与えて。

___霊亀元年。とある里が火災によって全滅。
 その国の国司親子も死亡したと思われる。
なお、国司の息子の死体は見つかっていない。




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