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第7話:夫婦としてよろしくね
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威厳溢れる陛下に鋭く見据えられて、私は体を強ばらせながら一礼し、ご挨拶をしてからもしばらく頭を下げていた。
「顔を上げよ」
「…はい。」
許可された私がおもむろに顔を上げると、陛下は私の目を見て「ふむ」と顎に手を添えた。
「そなたが例の“占い娘”か。良いな、美しい瞳をしている。」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「私の今朝の起床時間を当てられるか?」
「!……午前7時28分、ですね」
「見事」
陛下は目を細めて満足そうに笑う。
「アストラから話は聞いておるだろう」
「はい」
「私からそれ以上言うことはない。…どうか頼んだぞ。」
「───承知致しました。」
✧
国王陛下との謁見は、思ったよりもあっさりと終わった。
アストラ様について歩きながら内心拍子抜けしていると、アストラ様はふと私を振り返って口を開く。
「これから先、ミコさんは僕と同じ部屋で過ごすことになりますが、その辺りは大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫です。」
「つまりは寝室が同じということになりますが」
「…夫婦ですから。問題ありません。」
一瞬動揺したものの、それを気取られないようにすました顔で答える。
アストラ様は微笑んで「では、こちらです」と私を部屋に案内した。
「ここが僕達の部屋になります。」
「……!」
第一王子の側近の部屋。
ここに今日から私も加わって、夫婦の部屋となる。
「やっぱり広い…天井が高い…」
低くて狭くて薄暗い我が家は比較対象にすらならない。呆然とする私を見てクスッと笑ってから、アストラ様は私の手を取った。
そしてそのまま、私の手の甲に唇を落とす。
「!あ、あの」
「これから夫婦として、よろしくね。ミコ。」
敬語が消えた。優しいけれどやっぱりこちらを逃がさないような笑みと声。
突然の口付けにも、呼び捨てで名前を呼ばれたことにも驚き心臓がはねて、私はドギマギとしながらなんとか口を動かした。
「こちらこそ…よろしく、お願いします。アストラ様」
赤くなっているであろう顔を思わず逸らすと、アストラ様は、顔を隠すようにかかっていた私の髪をサラリとどけた。
「アストラでいいよ。」
「…アストラ。」
「うん」
彼の顔を見れないまま唇をきゅっと結ぶ。
自分の心臓の音がうるさい。…彼に聞こえていないといいけれど。
「…そうだ。疲れただろうし、座って休むといいよ」
「あ、そうですね、疲れたのは本当に…」
私とアストラは並んでソファに腰を下ろす。
ふかふかで、思った以上に腰が沈んだものだから、私は驚いてソファを二度見して、指でつついた。
「僕は少ししたら仕事があるから、レオヴィル殿下の所へ行かなければいけない。今のうちに何か話しておきたいことや、聞いておきたいことはある?」
「聞いておきたいこと…そうですね」
「なんでもいいよ」
私は顎に手を添えて少し考えてから、アストラに顔を向ける。
「アストラは…私との結婚を、陛下から命じられたんですよね」
「そうだね。」
「正直、嫌だとかは思わないのかなって」
なんでもいいと言われたので、遠慮なく問いかける。
「使用人の恋愛結婚が許されない時代でもないでしょうし、急に極東の村の“占い娘”と結婚しろだなんて…断ろうとは思わなかったんですか?」
私の言葉を受けて、アストラは何やら面白がっている様子で口角を上げた。
「それ、僕が“思った”と返したらどうするの?」
「どうって…うーん、謝ります。申し訳ないことをしたなと」
「はは、別に思わなかったさ。想い人が他にいたわけでもないからね」
「そうですか、それは良かった。」
ひと安心だ。少なくとも周囲には、この結婚をよく思わない人は幾らかいるだろうけども、アストラ本人が嫌がっていないなら良かった。
「僕はむしろ、この結婚は嬉しく思っているよ。…これでどこぞのご令嬢や使用人に変につきまとわれることも、なくなるだろうし」
笑みは崩れないがどこか遠くを見るような顔で、アストラは言った。
その美貌ではつきまとわれるのも無理はない。さぞかし苦労してきたことだろう。
「大変だったんですね」
「一番参ったのは、髪の毛がまざったプレゼントを差出人不明で送りつけられたことだったかな」
「…本当に、大変だったんですね…」
想像以上だった。愛を自身の体毛で伝えてくるとは熱烈を超えておぞましい。恋心拗らせすぎである。
私がこの人の虫除けになってあげようと、心の中で決意する。
「それに“占い娘”は、聞いていたよりもずっと可愛らしい人だったし、嫌だなんて思ってないよ」
「………」
決意した矢先にしれっと口説かれた。
からかわれていることは分かるのに、綺麗な顔と良い声で言われるとどうもダメだ。
私は熱くなった頬を手で隠して、そっぽを向く。
「ほら、可愛い」
「からかわないで下さい…そのうち、慣れてみせますから」
「別に慣れてくれなくてもいいよ?」
「…………」
完全に向こうのペースだ。
夫婦生活初日にして、既にアストラに勝てる気が全くしない。
「じゃあ、僕はそろそろ。」
「勝ち逃げですか」
「はは、勝ちも負けも無いでしょ」
納得いかないと思いながらも「行ってらっしゃい」と手を振って送り出すと、アストラは少しハッとしたような顔をしてから、「行ってきます」とにっこり笑った。
「顔を上げよ」
「…はい。」
許可された私がおもむろに顔を上げると、陛下は私の目を見て「ふむ」と顎に手を添えた。
「そなたが例の“占い娘”か。良いな、美しい瞳をしている。」
「お褒めに預かり光栄でございます」
「私の今朝の起床時間を当てられるか?」
「!……午前7時28分、ですね」
「見事」
陛下は目を細めて満足そうに笑う。
「アストラから話は聞いておるだろう」
「はい」
「私からそれ以上言うことはない。…どうか頼んだぞ。」
「───承知致しました。」
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国王陛下との謁見は、思ったよりもあっさりと終わった。
アストラ様について歩きながら内心拍子抜けしていると、アストラ様はふと私を振り返って口を開く。
「これから先、ミコさんは僕と同じ部屋で過ごすことになりますが、その辺りは大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫です。」
「つまりは寝室が同じということになりますが」
「…夫婦ですから。問題ありません。」
一瞬動揺したものの、それを気取られないようにすました顔で答える。
アストラ様は微笑んで「では、こちらです」と私を部屋に案内した。
「ここが僕達の部屋になります。」
「……!」
第一王子の側近の部屋。
ここに今日から私も加わって、夫婦の部屋となる。
「やっぱり広い…天井が高い…」
低くて狭くて薄暗い我が家は比較対象にすらならない。呆然とする私を見てクスッと笑ってから、アストラ様は私の手を取った。
そしてそのまま、私の手の甲に唇を落とす。
「!あ、あの」
「これから夫婦として、よろしくね。ミコ。」
敬語が消えた。優しいけれどやっぱりこちらを逃がさないような笑みと声。
突然の口付けにも、呼び捨てで名前を呼ばれたことにも驚き心臓がはねて、私はドギマギとしながらなんとか口を動かした。
「こちらこそ…よろしく、お願いします。アストラ様」
赤くなっているであろう顔を思わず逸らすと、アストラ様は、顔を隠すようにかかっていた私の髪をサラリとどけた。
「アストラでいいよ。」
「…アストラ。」
「うん」
彼の顔を見れないまま唇をきゅっと結ぶ。
自分の心臓の音がうるさい。…彼に聞こえていないといいけれど。
「…そうだ。疲れただろうし、座って休むといいよ」
「あ、そうですね、疲れたのは本当に…」
私とアストラは並んでソファに腰を下ろす。
ふかふかで、思った以上に腰が沈んだものだから、私は驚いてソファを二度見して、指でつついた。
「僕は少ししたら仕事があるから、レオヴィル殿下の所へ行かなければいけない。今のうちに何か話しておきたいことや、聞いておきたいことはある?」
「聞いておきたいこと…そうですね」
「なんでもいいよ」
私は顎に手を添えて少し考えてから、アストラに顔を向ける。
「アストラは…私との結婚を、陛下から命じられたんですよね」
「そうだね。」
「正直、嫌だとかは思わないのかなって」
なんでもいいと言われたので、遠慮なく問いかける。
「使用人の恋愛結婚が許されない時代でもないでしょうし、急に極東の村の“占い娘”と結婚しろだなんて…断ろうとは思わなかったんですか?」
私の言葉を受けて、アストラは何やら面白がっている様子で口角を上げた。
「それ、僕が“思った”と返したらどうするの?」
「どうって…うーん、謝ります。申し訳ないことをしたなと」
「はは、別に思わなかったさ。想い人が他にいたわけでもないからね」
「そうですか、それは良かった。」
ひと安心だ。少なくとも周囲には、この結婚をよく思わない人は幾らかいるだろうけども、アストラ本人が嫌がっていないなら良かった。
「僕はむしろ、この結婚は嬉しく思っているよ。…これでどこぞのご令嬢や使用人に変につきまとわれることも、なくなるだろうし」
笑みは崩れないがどこか遠くを見るような顔で、アストラは言った。
その美貌ではつきまとわれるのも無理はない。さぞかし苦労してきたことだろう。
「大変だったんですね」
「一番参ったのは、髪の毛がまざったプレゼントを差出人不明で送りつけられたことだったかな」
「…本当に、大変だったんですね…」
想像以上だった。愛を自身の体毛で伝えてくるとは熱烈を超えておぞましい。恋心拗らせすぎである。
私がこの人の虫除けになってあげようと、心の中で決意する。
「それに“占い娘”は、聞いていたよりもずっと可愛らしい人だったし、嫌だなんて思ってないよ」
「………」
決意した矢先にしれっと口説かれた。
からかわれていることは分かるのに、綺麗な顔と良い声で言われるとどうもダメだ。
私は熱くなった頬を手で隠して、そっぽを向く。
「ほら、可愛い」
「からかわないで下さい…そのうち、慣れてみせますから」
「別に慣れてくれなくてもいいよ?」
「…………」
完全に向こうのペースだ。
夫婦生活初日にして、既にアストラに勝てる気が全くしない。
「じゃあ、僕はそろそろ。」
「勝ち逃げですか」
「はは、勝ちも負けも無いでしょ」
納得いかないと思いながらも「行ってらっしゃい」と手を振って送り出すと、アストラは少しハッとしたような顔をしてから、「行ってきます」とにっこり笑った。
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