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第20話:イベント終了
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「ご無事ですか?お嬢様。」
「え、あ、ええ、私は大丈夫だけど…どうしてここに!?」
「シルク様のお知り合いですかぁ?」
「知り合いも何も、うちのメイドで…」
多分ギンガとソフィアは、誰が決めたのかは知らないけど結界内に送りこまれた捜索メンバーの一員。
だからこの場にいて、侵入者の撃退・捕獲も迅速だった。
生徒であり戦闘能力が高いギンガはわかる。
でも、ソフィアがここにいるのは本当になんで?
「買い出しに出て偶然通りがかったところを、お声がけいただきまして」
「いやいやいやおかしいでしょ!たまたま通りかかったどこぞのメイドをスカウトなんて、そんなこと…」
「俺が声をかけた。」
「ギンガ殿下!?」
まさかギンガがこんな冗談に乗っかるとは思えない。というかソフィアがこんな冗談を言うとは思えない。
本当に、本当なんだろうか。
「ギンガ殿下の審美眼は確かよ。ソフィアさんの魔力や仕草から、能力の高さを見抜いたのではないかしら?」
「で、では…ソフィアは通りすがりに何かしらの能力を買われて、助っ人に入った、ということでしょうか?」
私がそう聞くと、ギンガ様は首をひねってから「…そうなるか?」と曖昧に答えた。なんで疑問形?
「違うのですか?」
「いや…まあ、この話はまだいいか。」
「良くは、ないですが……」
納得いかない私をスルーして、ギンガは呆れた様子でジークを見下ろす。
「…ったく、テメェがそのザマでどーするよ」
「うるさい、愚弟が。これはアイネスを助け負った傷だ。恥じることはない」
「うるせー雑魚」
「なんだと!?」
ジークはナイフで腕に切り傷を負ったので、合流した捜索部隊のヒーラーさんに回復魔法で治してもらっているところ。
アイネスちゃんがジークに寄り添い、潤んだ瞳を向ける。
「ジーくん、本当にありがとう。ごめんね、私のために…」
「ふっ…君が気にすることは」
「あのすみません、動かないで頂けます?治療中なので。」
「………」
王太子ジークに遠慮なく注意をしてみせたヒーラーさんが、ふと、ツララに顔を向けてにっこり。
「あ、あなたですよね!逃げ遅れた生徒たちをまとめて避難させてくれたのは。ありがとうございました。」
その言葉に、ツララの体がギクッとはねる。
「まとめて避難?」
「…………」
私が聞き返すと、ツララは目を逸らしつつ口を開いた。
「…見回ったら、まだ奥の教室に数人取り残されていたから…転送魔法を使って避難させたの。おかげで魔力はかなり消費したけれど」
「なるほど~だからまだ学園内にいたんですねぇ。それにあの時の氷壁、ツララ様の魔力でできたものにしては溶けるのが早いなと思ってましたぁ。」
「なるほど…!ツララ様…!」
照れくささを隠すようにそっぽを向くツララを見て、私とフィルトくんはニコーッと笑顔で顔を見合わせる。
「…あっ。」
気がつくと、結界が消えていくところだった。報告を受けた先生達が解除してくれたみたい。
侵入者は捕まったし、大きな怪我をした人はいない。
問題解決!侵入者イベント、無事終了────
「わあっ!な、なんですかこれは!?」
「え?」
駆けつけた先生が声を上げる。
先生が目にしていたのは、土まみれな床、そして焦げた天井と床。
「学園内では攻撃を目的とする魔法の使用は禁止!あなた達は全員新入生でしょう!?緊急事態であれど戦闘厳禁、向かい撃たず隠れる・逃げるの二択ですよ!…誰か、魔法を使いましたか!?」
「………」
私たちは一斉に顔を逸らす。
私の水鉄砲やツララの氷壁は、水が蒸発して証拠が残っていないからバレてない。セーフだ。
(フィルト君は火の魔法で、けっこう焦がしちゃったけど…)
そろ~っとフィルト君を見てみる。
彼は悪びれない様子で口を開いた。
「その侵入者、火属性なんですよー。そいつが焦がしました。」
全ての“火”の責任を侵入者に押し付けるつもりだ。
「では土は?」
「あ~、それはエディさんですねぇ。」
「ちょっ!?」
エディのことを庇うつもりはないみたいだ。
「き!君だって!火を…」
「シルク様にツララ様ー、ロスト達のところに行きません?侵入者怖かったし、ボク疲れました~。」
「そうですねー行きましょうかー。」
「ええ、そうねー。」
息をするように嘘をつくフィルト君、それに乗っかる私とツララ。
私たち三人は勝手にその場から離れて、外に向かう。
そして直後にロストさん・アロマちゃんと合流した私達は、心配のあまり泣きじゃくっていたアロマちゃんを、全力で慰めることになった。
「え、あ、ええ、私は大丈夫だけど…どうしてここに!?」
「シルク様のお知り合いですかぁ?」
「知り合いも何も、うちのメイドで…」
多分ギンガとソフィアは、誰が決めたのかは知らないけど結界内に送りこまれた捜索メンバーの一員。
だからこの場にいて、侵入者の撃退・捕獲も迅速だった。
生徒であり戦闘能力が高いギンガはわかる。
でも、ソフィアがここにいるのは本当になんで?
「買い出しに出て偶然通りがかったところを、お声がけいただきまして」
「いやいやいやおかしいでしょ!たまたま通りかかったどこぞのメイドをスカウトなんて、そんなこと…」
「俺が声をかけた。」
「ギンガ殿下!?」
まさかギンガがこんな冗談に乗っかるとは思えない。というかソフィアがこんな冗談を言うとは思えない。
本当に、本当なんだろうか。
「ギンガ殿下の審美眼は確かよ。ソフィアさんの魔力や仕草から、能力の高さを見抜いたのではないかしら?」
「で、では…ソフィアは通りすがりに何かしらの能力を買われて、助っ人に入った、ということでしょうか?」
私がそう聞くと、ギンガ様は首をひねってから「…そうなるか?」と曖昧に答えた。なんで疑問形?
「違うのですか?」
「いや…まあ、この話はまだいいか。」
「良くは、ないですが……」
納得いかない私をスルーして、ギンガは呆れた様子でジークを見下ろす。
「…ったく、テメェがそのザマでどーするよ」
「うるさい、愚弟が。これはアイネスを助け負った傷だ。恥じることはない」
「うるせー雑魚」
「なんだと!?」
ジークはナイフで腕に切り傷を負ったので、合流した捜索部隊のヒーラーさんに回復魔法で治してもらっているところ。
アイネスちゃんがジークに寄り添い、潤んだ瞳を向ける。
「ジーくん、本当にありがとう。ごめんね、私のために…」
「ふっ…君が気にすることは」
「あのすみません、動かないで頂けます?治療中なので。」
「………」
王太子ジークに遠慮なく注意をしてみせたヒーラーさんが、ふと、ツララに顔を向けてにっこり。
「あ、あなたですよね!逃げ遅れた生徒たちをまとめて避難させてくれたのは。ありがとうございました。」
その言葉に、ツララの体がギクッとはねる。
「まとめて避難?」
「…………」
私が聞き返すと、ツララは目を逸らしつつ口を開いた。
「…見回ったら、まだ奥の教室に数人取り残されていたから…転送魔法を使って避難させたの。おかげで魔力はかなり消費したけれど」
「なるほど~だからまだ学園内にいたんですねぇ。それにあの時の氷壁、ツララ様の魔力でできたものにしては溶けるのが早いなと思ってましたぁ。」
「なるほど…!ツララ様…!」
照れくささを隠すようにそっぽを向くツララを見て、私とフィルトくんはニコーッと笑顔で顔を見合わせる。
「…あっ。」
気がつくと、結界が消えていくところだった。報告を受けた先生達が解除してくれたみたい。
侵入者は捕まったし、大きな怪我をした人はいない。
問題解決!侵入者イベント、無事終了────
「わあっ!な、なんですかこれは!?」
「え?」
駆けつけた先生が声を上げる。
先生が目にしていたのは、土まみれな床、そして焦げた天井と床。
「学園内では攻撃を目的とする魔法の使用は禁止!あなた達は全員新入生でしょう!?緊急事態であれど戦闘厳禁、向かい撃たず隠れる・逃げるの二択ですよ!…誰か、魔法を使いましたか!?」
「………」
私たちは一斉に顔を逸らす。
私の水鉄砲やツララの氷壁は、水が蒸発して証拠が残っていないからバレてない。セーフだ。
(フィルト君は火の魔法で、けっこう焦がしちゃったけど…)
そろ~っとフィルト君を見てみる。
彼は悪びれない様子で口を開いた。
「その侵入者、火属性なんですよー。そいつが焦がしました。」
全ての“火”の責任を侵入者に押し付けるつもりだ。
「では土は?」
「あ~、それはエディさんですねぇ。」
「ちょっ!?」
エディのことを庇うつもりはないみたいだ。
「き!君だって!火を…」
「シルク様にツララ様ー、ロスト達のところに行きません?侵入者怖かったし、ボク疲れました~。」
「そうですねー行きましょうかー。」
「ええ、そうねー。」
息をするように嘘をつくフィルト君、それに乗っかる私とツララ。
私たち三人は勝手にその場から離れて、外に向かう。
そして直後にロストさん・アロマちゃんと合流した私達は、心配のあまり泣きじゃくっていたアロマちゃんを、全力で慰めることになった。
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