上 下
174 / 179
第三章:Bunny&Black

百六十八話:ぐわしゃしゃ!

しおりを挟む

「ずるいわよ、シンク……。 もっと早く教えてよ~……」

 たぶん前は教えても一緒に入らなかったと思うけどね。
 温泉ととのった状態のミサ。 バスタオルをかけてベッドで寝転んでいる。
 バスタオルで隠せば気にしないというなかなかの豪胆さ。
 ホテルの時も思ったが、ちょっとガード緩いよね。
 家庭環境だろうか? 兄弟多いとか。

「リョウ様、今日も元気ですわね」

「うぅ、ごめんね、円。 まだ自分じゃ怖くてぇ……」

「うふふ。 しょうがないですわね♡」

 円ちゃんとリョウは随分と仲良くなったようだ。
 お兄ちゃん寂しい。
 でも元気で嬉しい。
 
「背中、流してあげよっか?」

「うむ」

「髪も洗ってあげる!」

 ぐわしゃしゃ!と豪快に俺の髪を弄ぶミサ。
 なにか恨みを晴らそうとしているわけじゃないよね……?
 
「髪の毛伸びたわねぇ、邪魔じゃない?」

 ダアゴン戦でベルセルク化してまた少し伸びた。
 背中まであるんよね。
 
「切ってあげよっか?」

 なんか怖いからいいですぅ!

「えー。 お父さんの髪も切ってあげたことあるんだよ? ……元気かなぁ」

「……」
 
 お父さんと仲良かったんだな。
 未だみんな家族には再会できていない。
 葵ママさんくらいか。

「交代」

「え、う、うん」

 背中の流しっこは日本文化。
 髪も洗ってあげよう。
 短いポニテを解く。
 
「んっ……」

 頭皮を動かすように揉む。
 指の腹を小刻みに動かし傷つけないように絶妙な力加減で。
 ツボをついていけば力はいらない。
 こめかみの辺りも手のひらの付け根で押す。 ここが気持ちいいのだ。
 
「ふぁぁ……」

 まぬけな声と共に胸を隠していた手はダラりと下がる。
 うーん。 後ろから覗き見る小山の頂は実にエロスを感じる。
 
「ん……ふぅ……」

 無駄な脂肪のない、それでいて女性特有の柔らかさのある体。
 細いウエスト。
 瑞々しい肌。
 優しく石鹸をつけたタオルで洗っていく。
 ああ、そういえばと。

「んっ、いい香りね……」

 ハウジングガチャで出た固形石鹸。
 蜜蝋石鹸みたいで凄くいい香りがする。
 ランク的には一番下の物だったのでそんなに凄い効果はないと思う。
 泡立ちよし。

「っ、ん、あ」

 もともと瑞々しかった肌にさらにツヤが生まれた。
 しっとりやわらかく艶やかに。 保湿成分凄そう。
 
「うひゃ、んあっワキはだめっ」

 可愛い声を出すミサ。
 ワキは苦手らしい。 いや得意な人はいないか。

「あっ! おっきく、ここでっ、んぅ……するの?」

 おっぱい契約もといミサの豊胸マッサージ。
 少女はまだあきらめていない。
 その心意気に答えるため、全力でマッサージしますよ。

「あッ、これッ、凄いィ、いつもより……」

 ガチャ産の石鹸は凄いな。
 つやつやぷるぷるんの肌を揉んでいく。

「しょこ、そこはっ、おおきくならなっ!」

 大きくはなるよ?
 ワキより弱点みたい。
 親指でカリカリするのが好き。

「んん゛ん゛んっ゛」

 我慢できないのか耐えようと洗い場の手を置き四つん這いになるミサ。
 陸上部で鍛えられた脚は窮屈な体勢でもバランスを保っている。
 
「うわぁ、シン兄ちゃん達……凄いなぁ」

「ベルゼお兄ちゃん。 流石ですわ!」

「っっ!?」

 見られていることに気づいたミサが震える。
 なにかにこらえるように足ががくがくと震える。

「シンクっ、もうっ、んあっ、ばかあぁああッ」

 ついでにお尻と脚も洗ってあげよう。
 洗いやすい位置にあるしね!
 ギャラリーが増えて少し調子に乗った。
 後でミサに怒られました、反省。
 でも凄く肌がツヤツヤになって喜んでいた。
 
「また、してね?」

 今度は二人で、と約束させられました。 


◇◆◇


 東雲市街地の上空を飛んでいく。

「高いわぁ……」

「高いよぉ……」

 昨日と同じ3人組である。
 ミサもリョウも高いところは苦手らしい。
 リョウは翼があるのに高所恐怖症。
 『ブラックホーンシャドウ』の荷台部分に乗っている。

 市街地のゴブリン狩りをしても埒が明かないので、『東雲市役所』に先に行ってみることにした。
 どの程度の戦力があるかわからないが、連携すれば向こうも楽になるだろう。
 ただ市役所の前はなんかもうよくわからない状態になっていた。
 
(もこもこの白い泡)
 
 市役所側のギミックか、ゴブリンによるものかわからないが、入り口を塞ぐように一階全体を囲っていた。
 おそらくゴブリン対策だと思うが下手に刺激するのはマズい。
 そこで市役所の屋上からコンタクトをとることにした。
 そう今、地上100メートルを飛行中なのだ。
 流石にこの高さを飛ぶのは初めてだ。
 地上よりも風が強い。

「いいねぇ」

 空が近い。
 雲から光が溢れている。

「なんか言ったぁー!?」

 空を飛ぶ魔物とかいるんだろうか?
 空中戦に備えてトランシーバーがほしいね。
 まぁ俺はまともに喋れないのだけど。

「見えないねー?」

 ゆっくりと旋回するように市役所を眺めるが、中はみえない。
 マジックミラーのようになっているんだろうか。
 中からは見えているだろう。
 屋上に着く頃には大勢の人が武装して待っていた。

「何者だッ!?」

 一人男が前に出て屋上の風に負けないよう大きな声で話しかけてくる。
 
 ブラックホーンシャドウから降りるとさらに警戒された。
 まぁSFチックな空飛ぶ乗り物からバトルスーツの男女と黒い羽の生えた少年。
 うん、怪しすぎるな。

「ん?」

 どうやって説明しようと考えていると、ミサがダッシュした。

「なぁっ!? 止まれ、止まれえ!!」

「鹿野警部補っ!!」

 男を守ろうと何人かが割って入ってきたが関係ない。
 ミサは宙を駆ける。
 『ブラックホーンバニー』の宝玉は輝き、ブーツは青白く稲妻のように発光する。
 彼女は人垣を飛び越えてあっというまに男の元へと辿り着いた。

「つ!?」

 人々が見守る中。
 フルフェイスだったバニーヘルムがイヤーカフへと変形していく。
 露わになったのは破顔した少女だった。
 その瞳には涙が。

「――お父さんっ!」

 そう言って、ミサは男の人の胸に飛び込んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...