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第三章:Bunny&Black

百四十八話:原因は……

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 爽やかな緑のにおいと美味しそうな甘い香り。

「ふぁあ……」

 頭がぼうぅっとする。
 
「……ん?」

 ここどこだ?
 俺は昨日どうしたっけ?
 
「教室……?」

 辺りを見渡すと教室……ちょっとジャングルみたいになってるけど。
 なにを言っているかわからないと思うがジャングル化した教室の中で一人寝ていた。
 どこか見覚えのある黄色い綺麗な花。 良い香りがする。

「……」

 困惑。
 外は明るく上の窓から僅かに明かりは入ってきている。
 それ以外は蔓植物に覆われてしまっている。
 綺麗な花が外に向かって咲いていた。

 どうしてこうなった?

 ちょっと肌がぴりつくような感覚。
 あれ、俺裸じゃん。
 まるで異界迷宮の中のような魔力の濃さ、いやあそこまで濃くはないか。

「どうなってる?」

 混乱。
 なんか頭も痛いし……二日酔い?

 そうだ。
 昨日は屋上でハウジングガチャを回してたんだ。
 マーマンマサトで一人宴会しながら。
 なんか楽しくなってガチャから出たバランススクーターでドリフトしたりしてたような。

「うお?」

 蔓が動いている。
 ニョロニョロと挨拶してきた。

「……」

 とりあえず敵意は感じられない。
 あれだよな、マンゴーみたいな果物を守ってた蔓と一緒だ。
 蔓植物に浸食されたのか?
 植物の中にはもの凄い勢いで成長するものもあると聞く。
 異界迷宮からここまで一晩で浸食してきたとでも?

 とりあえず服を着る。
 久しぶりにバトラータキシードにしようかな。
 今日は戦闘はオフ日にする。
 『ブラックホーンオメガ』も着心地は良いのだけど、フィットしすぎて落ち着かない。
 なんか常に戦闘モードなんだよね。
 ただもう夏も近いのでタキシードは浮きそうだな。
 たぶん快温性能があるのか普通の服より暮らしやすいけどね。
 
「お?」

 カードがたくさん。
 こんなにガチャ回したっけ?
 
「む」

 洋服の描かれたカード。 色は白。
 出でよと念じればカードは粒子となって消えていく。
 猫型ルームウェア。
 これはファニーすぎる。
 とりあえず着てみるか。

「……!」
 
 意外と似合うのでは?
 筋骨隆々の体に合わせて大きさを変えるアジャスト機能。
 触り心地はまさに猫の毛。
 だらっとした感じが良い。
 すごいダラダラしたくなる。
 いくつかあるので木実ちゃんたちにもプレゼントしよう。
 
「ん?」

 なんだか外が騒がしいな。
 教室の外に出ると蔓の浸食が見て取れる。
 廊下までジャングルだ。
 植物の浸食をテーマにした映画を思い出すね。
 
「鬼頭君!?」

 2つ教室を飛ばした先、別校舎へと行けるT字になっているところで服部先輩たちが集まっていた。
 あちら側はまだ蔓の浸食は来ていないようだ。
 というか、発信源はやっぱり俺のとこだよね。
 うん、現実逃避はやめよう。
 昨日、酔っぱらってなんかしたらしい。
 だがまったく記憶はない。
 記憶にございません!

「っ!?」

 蔓植物のトンネルを通っていくと、集まっていた皆に緊張が走る。
 ちなみに蔓植物は俺が通りやすいように天井から垂れていた蔓をどけてくれた。
 なんか意思の疎通もできそう。
 とりあえず皆には絡まないように注意しておく。
 これ以上侵略もしないようにと。
 
「か、可愛い洋服だね……?」

 服部先輩も猫のルームウェア欲しいのかな?
 似合いそうだ。 さすがあざとい系代表。 そこまでして人気がほしいとでも?
 ハズレ枠っぽいからあげるけどね。
 
「それで鬼頭君? これはどういうことなのかな?」

「……」

 それは俺にもわからないのだが。
 わかりませんよ?という顔ですっとぼけるしかないな。
 
「……昨日の夜、屋上から変な声がして、高速で移動する生首が見えたり、踊る人形がいたり、謎のドリフト音がしてたりして、3階の教室からはみんな避難してたんだけど……」 

 朝になったらジャングルになっていたと。
 完全にホラーですねぇ……。

「……わからなそうだね。 とりあえず、この辺りは封鎖するから、これ以上拡げないようにできるかな?」

「うむ」

「……やっぱり犯人なんじゃ」

 誘導尋問は汚いと思います。
 まぁ服部先輩以外は俺を見た瞬間に、なんだ鬼頭か、という感じで解散してたけど。
 西校舎三階の4組以降は立ち入り禁止区域になりました。
 うん。 異界迷宮から手に入れた果物はここで育てようかな。
 服部先輩はみんなを安心させにいきました。
 頑張って領主様! ……うん、誠に申し訳ない。 お酒は控えよう。
 
「これ……か?」

 蔓をたどって原因を一応たしかめる。
 そうすると、なんだか見覚えのあるプランターが置いてあった。
 お洒落な模様の入った陶器のプランターだ。 中央に青い宝石がある。
 ぐるぐる回る記憶の中でガチャから出たそのアイテムに、異界迷宮からもってきた果物の種を植えたのを思い出す。
 そう、結構良いレアリティのアイテムだったきがする。

「マジカ」

 まさか一日でここまで育つとは……。
 ガチャ産プランターの影響なのか、それとも異界迷宮の果物だからなのかはわからない。
 あとで実験してみるか?
 ちょっと東雲東高校ではやめておこう。
 服部先輩の心労が心配です。

 お嬢様学校にでも植えてみるか。

「シャム太」

 シャム太がプランターの宝石部分に魔石を当てると、魔石は吸収されていった。
 蔓植物は喜んでいる。
 わさわさと踊っている。
 いくつか緑色の実が生り始めた。
 うん、植物の成長にも驚いたけど、完全にシャム太が出入り自由な件にも驚いた。
 あとガチャ産アイテムの知識凄いな。

 さて、ちょっと予想外のことが起きているけど、これはこれでありだな。
 どこかでハウジングガチャから出たアイテムを試す隠れ家が欲しいと思ってたんだ。
 視聴覚室でやろうと思ってたけど、あそこはメインの寝床だから。
 あくまで隠れ家が欲しいのですよ。
 隠れ家は男のロマンだから。

「くく、くくく」

 お洒落な隠れ家、作っちゃうよ?
 まずは教室の壁でもぶち抜くか。

 
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