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第三章:Bunny&Black

百四十六話:マンゴー?

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 宝箱もゲットできたし、一旦帰ろう。
 
「ふふ♪」

 玉木さんも上機嫌である。

「……」

 異界迷宮はまだまだ奥がありそうだ。
 女マーマンがボスではないのかな? 沼は奥へと幾重にも分かれている。
 そのうち探検にいってみようかな。
 とりあえず、こんな沼地で野宿するのは嫌だ。
 臭いし。
 
「ん?」

 沼地の中に綺麗な花が咲いている。
 そこだけいい匂い、というか美味しそうな匂いがする。
 集落の側だし、マーマンたちの作物でもあるのかも。
 ちょっと近寄ってみる。

「うおお!?」

「シンク君!?」

 にゅるにゅると、蔦に絡めとられる。
 まるで触手のように身動きできないよう締め付けてくる。
 なぜだ。

(これは……エルフさんの役目では?)

 あまり強くない締め付けである。
 傷つけるというよりは取り押さえる感じ。
 
「今とるわ!」

 無理やり脱出もできるが、頑張ってる玉木さんが可愛いので任せよう。
 つる植物が守るのは果実だった。
 マンゴーみたいな形の緑色の果物。 
 地面を見ると赤紫色になった果物が落ちている。
 結構な大きさだ。
 落ちてる物は普通のマンゴーの3倍くらいありそう。

「え? 食べるの??」

 うん。
 たぶん、大丈夫。
 外の皮を剝いてみると、美味しそうな良い匂い。
 オレンジ色の果肉がマンゴーみたいだ。

「試す……」

 念のため、皮膚に果肉を当ててみる。
 デリケートな部分の皮膚に当てて反応がなければ、ちょっとだけ舌に触れさせる。
 ……うん。 大丈夫かな?
 そしたらちょっとだけ齧って食べる。
 一気に食べるのは危険だからほんの少しだけ。

「甘っ」

 ねっとりとした触感に暴力的な甘さ。
 これは、木実ちゃんに良いおみあげになりそうだ。
 まぁ毒があるかどうかもう少し時間をおいて判断するけど。
 一応中級ポーションもあるし、大丈夫だろう。
 
「甘い! これは、美味しいわね」

 玉木さんも気に入ったようだ。
 他にもよくみれば果物がなっている。
 魚頭たちがどこからか持ってきて植えてたのかもな。
 ……東雲東高校でも栽培できないかな?
 果実の中に大きな種もあるしやってみるか。
 いくつか貰っていこう。 それに他の果物も。

「~♪」

 『ブラックホーンオメガ』に乗り二人で異界迷宮を後にする。
 厚い雲に覆われ紫の雷光の先、異界から脱出すると外は暗かった。
 月の位置的にまだ0時前だろう。
 
「ねぇ」

 耳元でエルフさんは囁く。

「泊まってこ?」

 艶めかしい声と背中に感じる柔らかくあたたかい感触に流される。


◇◆◇


 いつのまにか男子に奥手だった親友がエロエロバニーになっていた件。

「フーン……」

「だからね、シンクとはなんでもないのよ? 変な誤解しないでよね!」

 なにその安いツンデレ、と葵はジト目で親友を見やる。
 質の良いバニーガール型の不思議のアリスのような服。
 ピチピチなバトルスーツにもなる特注品。
 普段ボーイッシュな服を好む友人の趣味ではない。なんなら頼んでも着てくれないような服装。
 なるほど、男の趣味に女は染まるのか、と葵は納得する。

「2日間……お泊り……おっぱい契約……何もない訳がなく……」 

「ぎくっ」

「若い男女……二人きり……えちえちな服……」

「ぎくぎくっ!」

「もうっ、なにひたんれしゅか! みしゃしゃん!!」

「おわーー!?」

 久しぶりに3人での女子会。
 ただし一人は完全に出来上がてっていた。
 おっぱいの化身、木実である。
 酔って暑いのか巫女服をはだけさせている。
 今は視聴覚室に3人なので男の目は気にならない。
 神駆の交換してきたマーマンマサトで酔ってしまったのだ。
 マーマンマサトは甘くて美味しい。
 女性でも簡単に飲めてしまう。
 そしてアルコールはそこそこに強い。
 レディキラー……危険なお酒である。 ご禁制になる日も近いか、いや吞兵衛たちの猛反対が目に見えるから無理か。
 なんにせよ未成年の飲酒は法律で禁止されているのでやめましょう。
 
「……」

 甘い飲み物をチビリながら葵は思う。
 超おっぱい天然癒し系聖女、年上エルフおっぱいお姉様、褐色肌貧乳プリ尻元気っ娘。
 ライバルたちのキャラ濃いなと。
 自分なんてせいぜい貧乳ロリ魔法少女であると。
 神駆なら淫乱もつけていたであろうが。
 
「はぅ……」

 別にいいのだ。
 もしこの3人の誰かと神駆がくっついても。
 捨てられなければそれでいい。
 優しい神駆のことだ、そんなことはしないと理解はしていても不安な気持ちになる。
 すこし悪い酔い方しているが葵は気づかない。

(優しい……か)

 世界が変わってしまう前は知らなかった。
 悪い噂は聞いていたが、それほどでもないのではと思っていた。
 まぁ木実への対応で知ったというのが正しいか。
 どこか父親と似た雰囲気もあった。
 母親と同じく背の高い男性が好きなのだろう。
 
「ん……」

 やっぱり別によくないなぁ……。
 と葵はチビリと甘い飲み物を飲む。

「おわ、ぷぁ!?」

「みしゃしゃん! しゃンクくんとぉ、なにひたんれすかぁ!?」

「この、く゛るし……」

 出かけてばかりの神駆が帰ってきたら、魔法の練習に付き合ってもらおう。
 そのお返しに特訓してあげようと、葵は計画を練るのだった。
 
「お魚……美味し♪」

「……あれ、みひゃひゃん? おーい……?」 


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