114 / 179
第二章:魚と犬と死神
百十話:月下のダンス ②
しおりを挟む左右から刀の一撃が迫る。
「シィッ!」
小さく速く。
それでいて一撃一撃が重い。
手なりで打っているようで違う。
彼女の技巧を理解できない。
ヴォルフライザーを使うわけにはいかないので、ガチャ産の両刃の剣で受ける。
幅広の剣は大剣ほどではないが耐久力はありそうだ。
「リィアアアッ!」
左右の連打なのに軸がまったくブレない。
目が慣れそうになると掻き消えるように横へと移動する。
反応が遅れる。
独特の動きに惑わされる。
「……凄いよベルゼ君。 ふふ、本気で打ち込んでるのに」
惑わされながらも反射神経だけで対応している。
スキルや魂魄ランクが上がったおかげだろうか。
ツインテとの打ち合いは改めて自身のスペックをはかるのにちょうどいい。
それに彼女の技を盗める。
上半身のブレは少なく手なりでの打ち込みに見えるが、注目すべきは下半身の動きか。
スパッツのおかげで筋肉の動きまでまるわかりだ。
よく見よう。
「もう! ベルゼ君のエッチ! そんなにスパッツが好きなのぉ!?」
じっと見てたらバレた。
でもエッチでみてたわけじゃありません。
軸はブレないし上半身もほとんど動かない、けど意外と下半身は忙しそうだな。
こうか?
「ぐっ!?」
左右の打ち込みに合わせて足を動かすのではなく、足の運びに左右の連撃がついてくる。
その足の運びがめちゃくちゃ速い。
速いのか?
入れ替える速度が速い。
「ふむ?」
ただこれだと手なりの攻撃になってしまうな。
彼女の重い一撃の秘密はなんだろう?
もっとよく見て盗もう。
みとり稽古は忍者の基本。
技術は徹底的に盗むべし。
さすが忍者汚い。
「むうううう!!」
真似してるのがバレた。
美少女がちょっと頬を膨らませて殺気を飛ばしてくる。
狂気に満ちた目が挑戦的に笑ってくる。
そんな簡単には盗めないぞと、あえてわかりやすく打ち込んでくれる。
ブレない。 可動域は狭い。 でも重い一撃。
その動きで体重を乗せている?
どうやって?
「ハァッ!」
急転。
左右の連打から喉元へと突きが繰り出された。
剣で軌道を逸らしながら体を捻りなんとか躱す。
衝撃が突き抜ける。
その刀には闘気が迸っているのが見えた。
殺す気かっ!?
「ええええ!?」
ええええ、じゃないよ。
「ふぅぅぅ……!」
少し距離をとり仕切り直しか。
彼女の剣の技のからくり。
切り返しの速さだ。
動きの少ない上半身に秘密はあった。
高速の左右の連打も、最後の必殺の突きも。
一見忙しそうな下半身に秘密がありそうだが、上半身と腕の動きそれに腰か。
試しに剣をふってみる。
「っ」
面白い。
新たな技術を身に着けるのは楽しい。
窮屈な感覚が解放されていく感触がたまらない。
「もう! そんな足をドタドタしないの! ベルゼ君へたくそーー!!」
「……」
ダンスは苦手だ。
ツインテにリードされながら夜のダンス会は熱を帯びていく。
しかしそんな楽しい時も終わりは来る。
『美愛さん。 遊びは終わりですよ、正面にエネミー多数。 大型、特殊個体も確認。 急いでください』
黒髪ロングからの念話が飛んできた。
アンデットたち攻勢だ。
「あはは、もう終わりかぁ。 また遊ぼうね、ベルゼ君!」
屈託のない笑顔を向けてツインテは走っていった。
0
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる