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第二章:魚と犬と死神

百七話:ガールズバー

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 お嬢様学校へ温泉に入りにきたはずが、ガールズバーに来ていた。
 いったい何を言っているのかわからないと思うが、俺にもわからない。
 まず笑顔の黒髪ロングに出迎えられて、あれこんなに可愛かったか?とか失礼なことを思いつつ、いやもっと表情に険があって目の下のクマも酷かったしかなり疲れた顔もしていたしね。
 綺麗系の顔立ちでああいった笑顔をされるとちょっとドキッとしちゃうよね。
 先ほどの戦闘の疲れか頭がふわふわしていたこともあって、何も考えずに黒髪ロングの後をついていったら、ガールズバーに来ていた。

「シンクさん、ゆっくりしていってくださいね」

「……」

 ガールズバーとキャバクラの違いは何かと言えば、隣にいるかカウンター越しにいるかの違いらしい。
 ジェイソンはガールズバーのほうが好きらしい。
 なんでも話術さえあればいくらでも女の子とデートできるのだとか。
 なぜ?
 その話術を伝授してくれなかったのかジェイソンよ!
 そのせいで今孫が困っているぞ!!

「なかなか来てくれないから、会いに行っちゃうところでしたよ?」

 ワイシャツ姿の黒髪ロングがドリンクを作りながらそんなことを言ってきた。
 やたら胸元の開いたテニスウェアを着たおかっぱ頭の女の子がお菓子を出してくれる。
 そろそろ備蓄も厳しくなってくるころだが、こんなに歓待して大丈夫なのだろうか?
 お返しはママノエくらいしかないのだが。

「ベルゼさん、髪型変わりましたね。 ……カッコイイです♡」

 誰だったか、たしかアルテミス隊で東雲市街地の戦闘で一緒だった子かな?
 ちょっとギャルっぽい格好でスタイルのいい子だ。
 机に手を乗せ頬を手の平で覆いあざといポーズだ。
 
「えへ、円ぁ、ベルゼお兄ちゃんとお話ししたかったんですぅ」

 挨拶を交わしながら女の子が次々に入れ替わっていく。
 なんと今度はお兄ちゃん呼びのアザロリ系だ。
 たぶん同い年かもしかしたら年上なのだが。
 だがしかし、お兄ちゃんか。
 憧れたことが無いと言えば嘘になる。 だって一人っ子だもん。

「ほう」

「円って呼んでください、ベルゼお兄ちゃん♡」

 円ちゃんはボブツインテールの可愛い系の女の子だ。
 動作が大げさですごくあざとい。
 服装もチェック柄のロリータワンピースと、なかなかだ。
 これは手ごわいぞ!?

「……円さんをお気に召しましたか? どうでしょう、一緒に温泉でも」

 黒髪ロングがぶっこんできた。
 なぜどうして一緒に温泉なんですか!?

「シンクさんもだいぶお疲れのご様子ですし、円さんはお背中を流すのがとても上手と評判なのですよ?」

 たしかに。
 もともと疲れて温泉に入りにきたから間違ってはいない。
 しかしだ!
 彼女が嫌がるに決まってるだろう。

「えぇ! シンクお兄ちゃんと一緒にお風呂!? ……円っ嬉しい!!」

「っ!?」

 なんだとぉーー!?

 これが、これが妹だというのかっ!?

「えへへ。 楽しみだねぇ、……ベルゼお兄ちゃん」

 おかしい。
 話術など一つも披露していないのに、妹属性の女の子と混浴温泉することになった。
 どうしてこうなった!


◇◆◇

 
 うふふ。

「楽勝ですね」

 円の魅力の前では馬鹿な殿方など、イチコロですわ。
 しかし、以前チラリと見かけた時とは全然違いましたね。
 見た目もそうですが、……オーラが凄いです。
 たしかに栞先輩がお熱なのも頷けます。
 
「しかし、そうなると困りましたね……」

 本当はベルゼさん暗殺計画を執行しようと思ったのですが、周りの人たちから聞いた話では栞お姉様がベルゼさんに恋をしてしまったらしいのです。
 それも危険なほどに。
 なんでも作戦室で、『欲しい、どんな手を使っても、私の全てを差し出しても』とブツブツ危ない感じだったらしいです。 それもほぼ毎日寝言でも言っていたとかなんとか。
 でもしかたありません。
 恋は人を狂わせますもの。
 わたくしが美愛お姉様を愛しているのと同じように。
 いつか添い遂げたいその願いは尊いものですもの。
 
「どうすればいいのでしょう」

 暗殺はできない。
 とりあえず骨抜きにして我が校に通いつめさせるといたしましょうか。
 殿方は苦手ですが、そういった手管は教育としてお家でならっていますわ。
 そのせいで殿方が嫌いになったといっても過言ではありませんが。
 美愛お姉様と栞お姉様の為です。
 鳥居流忍術・・の本領をお見せいたしますわ。

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