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第二章:魚と犬と死神

八十二話:

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 『ヴォルフライザー』と『ヴォルフガング』。
 まさかのセット装備なのか?
 名前は似ているけれども!?

「ハァっ!」

「「ガルルッ!!」」

 漆黒のオーラを纏わせながら双頭の野犬へと襲い掛かる。
 嚙みつきを回避しながら側面へと回り込み、ついでとヴォルフライザーを撫でる。
 双頭の野犬の肥大した肩の筋肉を容易く切り裂く。
 黒いオーラが発生していると、回転が維持されるようだ。
 耳障りだった回転の音が澄んだ音へと変わりやがて消えていく。

「っ」

 黒曜の剣。
 漆黒のオーラに包まれる大剣が完成した。
 これがヴォルフライザーの真の姿なのか。

「「ガアアアッーー!!」」

 後方へと距離を取り、怒りのままに炎の息吹を放つ双頭の野犬。
 『虚空回転斬り』をお見舞いするチャンスであるが、本能のままに俺は大上段に構えたヴォルフライザーを振り下ろした。
 迫る炎の壁に、漆黒の斬撃が放たれる。
 それは回転する刃のようだった。

「ガ……」「ガ……」

 炎の壁を突き破り二つの首の間を抜ける漆黒の斬撃。
 そのまま胴体を真っ二つに切り裂く。
 恐ろしい威力だ。

「……」

 指輪の宝石をみると、さらに黒い炎が大きくなった。


◇◆◇


「なんなの、あれ?」

 前から思ってたけど、人間離れしすぎじゃない?
 だいぶ感覚は麻痺してきたけど、さすがに斬撃飛ばすのはやりすぎでしょ。
 
「さすが、鬼頭君!」

「シン、カッコイイ」

「凄いわ、シンク君」

 なんで凄いですませられるのだろうか。
 まぁ、空中走ってる時点でおかしいんだけどさぁ。
 ていうか、たまに空飛んでるよね?
 なんか人おぶって爆速で飛んでいくのみたことあるんだよね。
 夢かと思って忘れてたけど。

「もう知らんし……」

 散らばった魔石を集める。
 他にもドロップアイテムも回収する。
 猫の店で売れるから集めないと。

「ふう……」

 このショルダーバッグだってすごいよね。
 メイスに盾に飲み物も食料も着替えもいっぱい入ってる。多少の制約はあるけど、マジックバッグじゃん。どうせなら重さも無くしてほしかったけど。二つ背負うととっても重いよ。
 玉木さんのおかげでだいぶ楽だけどね。

「しかし、あれは、……なんで?」 

 私は今朝から一つのことが気になって仕方がない。
 それは木実のことだ。
 木実の胸、デカくなったよな?

「あてつけなの……?」

 前よりも確実に大きくなっている。
 まさかあの乳でパッドを入れるわけないし、絶対大きくなってる。
 だってあんなにテニスウェアぱんぱんじゃん。
 貧乳《わたし》への挑戦としか思えない。

「はっ! まさか!?」

 まさかまさかまさか!?
 鬼頭の乳揉みに豊胸効果があるとかっ!?
 あの悪魔が木実におっぱいを要求しているのは知っている。
 
 ……ごめんね木実。 知ってて止められなくて。 でも葵が大丈夫って言ってたから……。
 もっと早く助けてあげるべきだった!

「これ以上は人間やめちゃうから」

 もうおっぱいだよ。
 おっぱいの化身。
 おっぱい星人このみになっちゃうよ!

「くっ……」

 もう木実を助けるためには私が犠牲になるしかない。
 なんて卑劣なやつなんだ、鬼頭ッ!

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