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第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない
六十二話
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女の園。
俺は、お嬢様たちの集う『神鳴館女学院付属高校』にやって来た。
「普段は男子禁制です。 現在は避難されている男性もいらっしゃいますが、粗相をされた方は、即去勢・即退去。 ……気を付けてくださいね?」
(相変わらず、凄いな……)
俺は案内の言葉を流し聞きながら見上げていた。
ソレはまるで城壁。
重厚かつ高級感漂う気高き女子高の壁。
以前に通りかかった時など、この壁はいつ終わりが来るのか気になってしょうがなかった。
しかし今は城への入口部分は破壊され、バスが代わりに置かれている。
「エネミーの襲撃で破壊されてしまいました。 夜に襲撃してくるエネミーはとにかく数が多く、防衛は厳しい状況です。 さらに西からも敵が侵攻を開始しました」
疲れ顔の黒髪ロング、『一ノ瀬 栞』が説明してくれる。
「お帰りなさい、栞さん。 ……その恰好は?」
「聞かないでください」
ちなみにスパッツ姿だ。
門近くで作業していた生徒達が声をかけ、帰還してきた子たちの姿に訝しみ俺を見て目を見開く。
「状況は悪くなるばかりです。 そんな時に東からもエネミーが来たのかと、焦って攻撃してしまい申し訳ありません」
絶対敵だと思った、とか弓を放ってきた子たちがボソボソいってる。
スパッツも脱がしたろか?
「ねぇねぇ! ベルゼ君、空飛んでたけど、どうやるのっ!? 私も飛びたいよぉおお!」
スキル? 魔法? とツインテは問いかけてくる。
ガチャアイテムです。
どう説明すればいいのやら。
「……脚力」
「うそぉ!?」
ツインテは確かめるように俺の脚部を弄る。
こそばゆい。
俺は『ムンッ!』と脚に力を込めた。
「うおぉぉ!? すっごいよ、コレ! 太くて逞しくて、カチカチっ!!」
「美愛さん、はしたないですよ!」
皆の視線が集まって恥ずかしいから、離れてくれないか?
城壁の中は戦闘の跡が残っている。
花壇は踏み荒らされ横倒しになった木は放置されて、避難してきた人たちは校庭に集まっていた。
結構な人数だ。
ただ、うちの高校と違って校庭の広さが半端ないからか、窮屈そうではない。
「東雲東高校。 なるほど、東のエネミーはそちらで対応されていたんですね」
「えぇ!? 高一……後輩君なの!?」
ちょっと自己紹介しただけで、辺りはざわついた。
おかしいな。
どっからどう見ても十五歳のイケメン男子高校生だろう!
あっ、でもタキシード着てるから分かりづらいよね。
「パパくらいかと思った!」
「……」
おい。 お前の親父は何歳だッ!?
「雰囲気も似てるし、……ベルゼ君、きっとパパくらい強いよね?」
ツインテが何か呟いたけど、よく聞こえない。
しかしこちらを上目遣いで微笑み、機嫌良さそうに肩を揺らしていた。
「……温泉?」
「はい。 天然の温泉に、飲料として使える湧水もあります。 こんな状況ですからね、重宝しています。 農園部の屋上菜園や中森には魚のいる池もありますから、釣りだってできますよ」
さすがお嬢様学校。 どんだけ敷地でかいんですか?
それに温泉。 温泉卵食べたい。
「でも、食糧問題は深刻です……。 すでに備蓄食料は半分を切っています。 今は周辺から集めて補っていますが、この人数を賄い続けるには限界が来るでしょうね」
一つ大きな溜息を吐く黒髪ロング。
この辺は猫の万屋無いのかな?
「『猫の手』ですか……。 アレは、気を付けた方がいいです。 店に入った人が出てこないことがありますから……」
「!」
ホラーは苦手なんですけど!?
「それにあそこで扱ってる食料は食べられた物ではありません」
「?」
お嬢様の舌に合わないと? 贅沢舌めっ、俺のをブチこ――。
「腐った肉《ゾンビ肉》と紫芋虫ですよ? うぅ、あの芋虫の気持ち悪さはありえません……。 思い出しただけで吐き気がします」
ママノエは大丈夫かな?
あれも見た目は酷い。 でも味は美味しい。
今度持ってきてあげよう。
見た目で判断すると損をするということをその舌に分からせてくれる!
「えぇいっ!」
「っ!?」
後ろからいきなりチョークスリーパー。
いや、おぶさってきたツインテ。
反射で頭を掴んで背負い投げするのを堪え、俺はツインテを支えた。
「ねねっ。 ちょっとだけ、おねがーい」
顔を耳元に近づけ囁く。
何をお願いなのか? 飛べばいいのか??
「美愛さん、もう! ……はぁ、すみません。 少しだけ付き合ってあげてください」
ふむ。 振り落とされても知らないぞ?
あと、敷地内を飛んで温泉を覗いても、文句は無しでお願いします。
「……テイクオフ」
「――わひゃっ!?」
全力上昇。
俺は助走無しで真上に跳ね上がった。
周りにいた人たちは口を大きく開け見上げていた。
「うおぉ! 凄いっ!!」
舌噛むぞ?
ツインテは離されないようにしっかりとしがみついてきている。
高校の敷地内はいくもの校舎が存在した。
その中央、大きな時計台を旋回し温泉を探す。
(無いぞ……?)
おかしいな?
森や池、公園のような物に陸上用のグラウンドも見つけたけど、温泉は無い。
「うぅ……吐きそう……」
「っ!?」
不吉な呟き。
調子に乗り過ぎたか!
――はむむ。
くあっ。
吐くのを我慢するためなのか、ツインテは首元を甘噛みしてきた。
「んん゛~~んぅ゛~~」
やめて。
そこで吐くと服の中に流れ込むから!
俺はゆっくりと、極力揺らさないように下降する。
大きな時計塔の前にあったベンチに、ツインテを腰かけさせた。
「ふぁぁ……めちゃくちゃに、されちゃったぁぁ……」
「……」
誰かが聞いていたら誤解するような呟きをするんじゃありません。
ふと、誰かに見られていたような視線を感じたけど、気のせいかな?
俺は、お嬢様たちの集う『神鳴館女学院付属高校』にやって来た。
「普段は男子禁制です。 現在は避難されている男性もいらっしゃいますが、粗相をされた方は、即去勢・即退去。 ……気を付けてくださいね?」
(相変わらず、凄いな……)
俺は案内の言葉を流し聞きながら見上げていた。
ソレはまるで城壁。
重厚かつ高級感漂う気高き女子高の壁。
以前に通りかかった時など、この壁はいつ終わりが来るのか気になってしょうがなかった。
しかし今は城への入口部分は破壊され、バスが代わりに置かれている。
「エネミーの襲撃で破壊されてしまいました。 夜に襲撃してくるエネミーはとにかく数が多く、防衛は厳しい状況です。 さらに西からも敵が侵攻を開始しました」
疲れ顔の黒髪ロング、『一ノ瀬 栞』が説明してくれる。
「お帰りなさい、栞さん。 ……その恰好は?」
「聞かないでください」
ちなみにスパッツ姿だ。
門近くで作業していた生徒達が声をかけ、帰還してきた子たちの姿に訝しみ俺を見て目を見開く。
「状況は悪くなるばかりです。 そんな時に東からもエネミーが来たのかと、焦って攻撃してしまい申し訳ありません」
絶対敵だと思った、とか弓を放ってきた子たちがボソボソいってる。
スパッツも脱がしたろか?
「ねぇねぇ! ベルゼ君、空飛んでたけど、どうやるのっ!? 私も飛びたいよぉおお!」
スキル? 魔法? とツインテは問いかけてくる。
ガチャアイテムです。
どう説明すればいいのやら。
「……脚力」
「うそぉ!?」
ツインテは確かめるように俺の脚部を弄る。
こそばゆい。
俺は『ムンッ!』と脚に力を込めた。
「うおぉぉ!? すっごいよ、コレ! 太くて逞しくて、カチカチっ!!」
「美愛さん、はしたないですよ!」
皆の視線が集まって恥ずかしいから、離れてくれないか?
城壁の中は戦闘の跡が残っている。
花壇は踏み荒らされ横倒しになった木は放置されて、避難してきた人たちは校庭に集まっていた。
結構な人数だ。
ただ、うちの高校と違って校庭の広さが半端ないからか、窮屈そうではない。
「東雲東高校。 なるほど、東のエネミーはそちらで対応されていたんですね」
「えぇ!? 高一……後輩君なの!?」
ちょっと自己紹介しただけで、辺りはざわついた。
おかしいな。
どっからどう見ても十五歳のイケメン男子高校生だろう!
あっ、でもタキシード着てるから分かりづらいよね。
「パパくらいかと思った!」
「……」
おい。 お前の親父は何歳だッ!?
「雰囲気も似てるし、……ベルゼ君、きっとパパくらい強いよね?」
ツインテが何か呟いたけど、よく聞こえない。
しかしこちらを上目遣いで微笑み、機嫌良さそうに肩を揺らしていた。
「……温泉?」
「はい。 天然の温泉に、飲料として使える湧水もあります。 こんな状況ですからね、重宝しています。 農園部の屋上菜園や中森には魚のいる池もありますから、釣りだってできますよ」
さすがお嬢様学校。 どんだけ敷地でかいんですか?
それに温泉。 温泉卵食べたい。
「でも、食糧問題は深刻です……。 すでに備蓄食料は半分を切っています。 今は周辺から集めて補っていますが、この人数を賄い続けるには限界が来るでしょうね」
一つ大きな溜息を吐く黒髪ロング。
この辺は猫の万屋無いのかな?
「『猫の手』ですか……。 アレは、気を付けた方がいいです。 店に入った人が出てこないことがありますから……」
「!」
ホラーは苦手なんですけど!?
「それにあそこで扱ってる食料は食べられた物ではありません」
「?」
お嬢様の舌に合わないと? 贅沢舌めっ、俺のをブチこ――。
「腐った肉《ゾンビ肉》と紫芋虫ですよ? うぅ、あの芋虫の気持ち悪さはありえません……。 思い出しただけで吐き気がします」
ママノエは大丈夫かな?
あれも見た目は酷い。 でも味は美味しい。
今度持ってきてあげよう。
見た目で判断すると損をするということをその舌に分からせてくれる!
「えぇいっ!」
「っ!?」
後ろからいきなりチョークスリーパー。
いや、おぶさってきたツインテ。
反射で頭を掴んで背負い投げするのを堪え、俺はツインテを支えた。
「ねねっ。 ちょっとだけ、おねがーい」
顔を耳元に近づけ囁く。
何をお願いなのか? 飛べばいいのか??
「美愛さん、もう! ……はぁ、すみません。 少しだけ付き合ってあげてください」
ふむ。 振り落とされても知らないぞ?
あと、敷地内を飛んで温泉を覗いても、文句は無しでお願いします。
「……テイクオフ」
「――わひゃっ!?」
全力上昇。
俺は助走無しで真上に跳ね上がった。
周りにいた人たちは口を大きく開け見上げていた。
「うおぉ! 凄いっ!!」
舌噛むぞ?
ツインテは離されないようにしっかりとしがみついてきている。
高校の敷地内はいくもの校舎が存在した。
その中央、大きな時計台を旋回し温泉を探す。
(無いぞ……?)
おかしいな?
森や池、公園のような物に陸上用のグラウンドも見つけたけど、温泉は無い。
「うぅ……吐きそう……」
「っ!?」
不吉な呟き。
調子に乗り過ぎたか!
――はむむ。
くあっ。
吐くのを我慢するためなのか、ツインテは首元を甘噛みしてきた。
「んん゛~~んぅ゛~~」
やめて。
そこで吐くと服の中に流れ込むから!
俺はゆっくりと、極力揺らさないように下降する。
大きな時計塔の前にあったベンチに、ツインテを腰かけさせた。
「ふぁぁ……めちゃくちゃに、されちゃったぁぁ……」
「……」
誰かが聞いていたら誤解するような呟きをするんじゃありません。
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