46 / 179
第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない
四十六話
しおりを挟む
猫に質問。
「スキル? 制限は無いはずですよ。 スキルレベルが上がるほど習得は難しくなりますね。 ふむ、スキル購入は聞いたことがありませんから、確実ではないですがね」
猫髭をしごきながら説明してくれる。
万屋には他の客はいない。 売り上げ大丈夫か?
「スキルも魔法も存在しない世界ですか。 黒の魔皇帝が無理矢理改変したのでしょうねぇ。 え、闇属性の魔法しかない? 魔法は個人の適性に影響されますからねぇ。 他に敵性がないのかもしれません」
なんだと……。
全属性無双はダメなのか。
炎と氷を極めて究極魔法とか、光の騎士とか……。
「ポーションを各三つ。 それにワイルドジャーキーのお買い上げですね。 しめて100クレジットです」
もうクレジットが半分に。
ポーションは重要。 ワイルドジャーキーは硬くて食べ応えがある。
でもがっつり米が食べたい。 俺は腹の燃費が悪いのだ。
残りのクレジットは木実ちゃんたち用に取っておこう。
「クフフ。 またのご来店をお待ちしておりますよ」
帽子を被った猫に見送られつつ万屋を後にする。
まだ時刻は昼過ぎ。
ジャーキーを食べながら周囲を警戒するが、周りに敵はいない。
夜の方が活発のようだ。
「ふむ」
ちょっと買い物に行くか。
カセットコンロは防災倉庫にあったけど、BBQ用の道具はなかった。
食料の配給も満足には程遠い。 足りない分は自分で調達しないとな。
ママノエのみだと不安だし……。
「こっちか」
俺は道を進んでいく。
目的地はホームセンターとコンビニ。
やってるかな?
◇◆◇
終わった。
「あぁ……リーダー、どうしたらいいですか……?」
俺たちが必死に作ったバリケードを、死神は簡単に飛び越え悠然と歩いてくる。 怪物の襲撃をなんども乗り切ったバリケードも、空を飛ばれれば無力か……。
「……諦めるな」
「しかし、リーダー!」
俺は、とある大手ホームセンターのバイトリーダー。
日用品はもちろん食料や酒も。 DIY用品の取り扱いにもすぐれ、園芸館では色鮮やかな植物たちも取り扱われている。
「社員どもがくるまで持ちこたえる。 それが俺たちの仕事だ!」
勤続九年。
未だバイトな俺は、バイトリーダーとして朝の品出しの責任者を仰せつかっている。 大型トラックで運び込まれた商品の検品や搬入指示。
商品の陳列に内装のチェック。 広告に不備は無いか、バイトの求人はどうするのか。 学生の学校イベント中のシフトはどうすればいいのか。 全てはバイトリーダーである俺にゆだねられている。
他の店舗で聞いた話では、これは正社員の仕事らしいがな。
「うああああああ」
「だ、ダメだ! 殺されるッッ!?」
「落ち着け!」
乙四持ちバイト木下君が混乱し持ち場から逃げた。
人妻好きバイト大森君も錯乱して最終兵器を使おうとしている。
それは最終兵器だから、使っちゃダメ絶対!
「敵は一人だ。 いいか? 全員で力を合わせれば勝てる! 俺たちなら、絶対勝てる!!」
「「リーダー!!」」
安全靴にヘルメット。 作業服にスコップを装備した俺は、死神と対峙する。 スズメバチ用スプレーや高枝切狭を装備した仲間たちも続いてくれる。 機械類が無事ならばもっとましな武装ができたんだが。 フォークリフト免許も役に立たんものよ……。
俺は覚悟を決め死神に叫んだ。
「お客様。 営業は10時からとなっております! お帰りください!!」
何の意味もないだろう。
しかし自分を鼓舞するため、俺は全力で叫んだ。
「……」
やはりお帰り頂けないか。
槍を肩に担いでいた死神は構えなおす。
向かってくるかと、こちらは息を呑んだ。 しかし死神に向かってくる様子はない。
何か探しているようだが……。
「……何時?」
「は?」
死神が何かボソッと呟いた。
「今……何時?」
どうやらタキシードを着た死神はお客様らしい。
◇◆◇
BBQ用の道具を買おうと思ったけど、意外と高い。
そもそもガチャ代で浪費している俺の財布には、小銭しかない。
「世知辛い」
万引き対策か。
店員の方々が俺を監視している。 まぁこんな状況で来た客だからなぁ。 火事場泥棒だと思われても仕方ないか。 入ってくるときめちゃくちゃ武装して出迎えられたし。 ちなみに槍は傘立てにいれてきた。
「な、何かお探しですか……?」
「……」
買い物中に店員に話しかけられたのは初めてだ。
なんというプレッシャーかッ!
早く買って帰れ。 そんな圧力をヒシヒシと感じるぞ。
これは……買わずには帰られないッッ!?
「……コレ」
「は、はい。 全部で九千八百円です……」
全然足りない。
「ああ……た、タダで大丈夫ですよ! えぇ、ちょうど処分しようと思ってた商品なので廃棄です、は、はは、廃棄なのですよ!!」
俺がちょっと困った顔をすると。
ヘルメットを被った店員は慌てて無料にしてくれた。
うーん。 魂魄がエリートになった影響かな。 いつもよりすごい恐れられている……。 これじゃなんだか悪い人みたいで嫌だな。 なにより木実ちゃんに知られたら嫌われそう。
「……」
コトリと。
俺は金の代わりにポーションを置いていく。 各種一本ずつだ。
『病気』『怪我』『体力』と説明しておいたが、理解してくれただろうか?
ついでに近場の怪物も退治して、ヘルメットの店員さんに感謝しながらコンビニを目指す。
「助かった……」
「リーダーかっこよかったっす!」
速攻で逃げた木下君が戻っていた。
「なんですかそれ?」
「わからん……」
死神から貰った怪しい液体。
病気や怪我と言っていたが、薬なんだろうか?
「毒……ですかね?」
「ん? わざわざ毒で殺す必要はないだろう……」
その気になればいつでも……。
死神を思い出し、ブルリと体が震えた。
「ふぅ……。 バリケードを改良しよう。 あんなのがまた来ても立ち向かえるようにな!」
「「はい!!」」
「スキル? 制限は無いはずですよ。 スキルレベルが上がるほど習得は難しくなりますね。 ふむ、スキル購入は聞いたことがありませんから、確実ではないですがね」
猫髭をしごきながら説明してくれる。
万屋には他の客はいない。 売り上げ大丈夫か?
「スキルも魔法も存在しない世界ですか。 黒の魔皇帝が無理矢理改変したのでしょうねぇ。 え、闇属性の魔法しかない? 魔法は個人の適性に影響されますからねぇ。 他に敵性がないのかもしれません」
なんだと……。
全属性無双はダメなのか。
炎と氷を極めて究極魔法とか、光の騎士とか……。
「ポーションを各三つ。 それにワイルドジャーキーのお買い上げですね。 しめて100クレジットです」
もうクレジットが半分に。
ポーションは重要。 ワイルドジャーキーは硬くて食べ応えがある。
でもがっつり米が食べたい。 俺は腹の燃費が悪いのだ。
残りのクレジットは木実ちゃんたち用に取っておこう。
「クフフ。 またのご来店をお待ちしておりますよ」
帽子を被った猫に見送られつつ万屋を後にする。
まだ時刻は昼過ぎ。
ジャーキーを食べながら周囲を警戒するが、周りに敵はいない。
夜の方が活発のようだ。
「ふむ」
ちょっと買い物に行くか。
カセットコンロは防災倉庫にあったけど、BBQ用の道具はなかった。
食料の配給も満足には程遠い。 足りない分は自分で調達しないとな。
ママノエのみだと不安だし……。
「こっちか」
俺は道を進んでいく。
目的地はホームセンターとコンビニ。
やってるかな?
◇◆◇
終わった。
「あぁ……リーダー、どうしたらいいですか……?」
俺たちが必死に作ったバリケードを、死神は簡単に飛び越え悠然と歩いてくる。 怪物の襲撃をなんども乗り切ったバリケードも、空を飛ばれれば無力か……。
「……諦めるな」
「しかし、リーダー!」
俺は、とある大手ホームセンターのバイトリーダー。
日用品はもちろん食料や酒も。 DIY用品の取り扱いにもすぐれ、園芸館では色鮮やかな植物たちも取り扱われている。
「社員どもがくるまで持ちこたえる。 それが俺たちの仕事だ!」
勤続九年。
未だバイトな俺は、バイトリーダーとして朝の品出しの責任者を仰せつかっている。 大型トラックで運び込まれた商品の検品や搬入指示。
商品の陳列に内装のチェック。 広告に不備は無いか、バイトの求人はどうするのか。 学生の学校イベント中のシフトはどうすればいいのか。 全てはバイトリーダーである俺にゆだねられている。
他の店舗で聞いた話では、これは正社員の仕事らしいがな。
「うああああああ」
「だ、ダメだ! 殺されるッッ!?」
「落ち着け!」
乙四持ちバイト木下君が混乱し持ち場から逃げた。
人妻好きバイト大森君も錯乱して最終兵器を使おうとしている。
それは最終兵器だから、使っちゃダメ絶対!
「敵は一人だ。 いいか? 全員で力を合わせれば勝てる! 俺たちなら、絶対勝てる!!」
「「リーダー!!」」
安全靴にヘルメット。 作業服にスコップを装備した俺は、死神と対峙する。 スズメバチ用スプレーや高枝切狭を装備した仲間たちも続いてくれる。 機械類が無事ならばもっとましな武装ができたんだが。 フォークリフト免許も役に立たんものよ……。
俺は覚悟を決め死神に叫んだ。
「お客様。 営業は10時からとなっております! お帰りください!!」
何の意味もないだろう。
しかし自分を鼓舞するため、俺は全力で叫んだ。
「……」
やはりお帰り頂けないか。
槍を肩に担いでいた死神は構えなおす。
向かってくるかと、こちらは息を呑んだ。 しかし死神に向かってくる様子はない。
何か探しているようだが……。
「……何時?」
「は?」
死神が何かボソッと呟いた。
「今……何時?」
どうやらタキシードを着た死神はお客様らしい。
◇◆◇
BBQ用の道具を買おうと思ったけど、意外と高い。
そもそもガチャ代で浪費している俺の財布には、小銭しかない。
「世知辛い」
万引き対策か。
店員の方々が俺を監視している。 まぁこんな状況で来た客だからなぁ。 火事場泥棒だと思われても仕方ないか。 入ってくるときめちゃくちゃ武装して出迎えられたし。 ちなみに槍は傘立てにいれてきた。
「な、何かお探しですか……?」
「……」
買い物中に店員に話しかけられたのは初めてだ。
なんというプレッシャーかッ!
早く買って帰れ。 そんな圧力をヒシヒシと感じるぞ。
これは……買わずには帰られないッッ!?
「……コレ」
「は、はい。 全部で九千八百円です……」
全然足りない。
「ああ……た、タダで大丈夫ですよ! えぇ、ちょうど処分しようと思ってた商品なので廃棄です、は、はは、廃棄なのですよ!!」
俺がちょっと困った顔をすると。
ヘルメットを被った店員は慌てて無料にしてくれた。
うーん。 魂魄がエリートになった影響かな。 いつもよりすごい恐れられている……。 これじゃなんだか悪い人みたいで嫌だな。 なにより木実ちゃんに知られたら嫌われそう。
「……」
コトリと。
俺は金の代わりにポーションを置いていく。 各種一本ずつだ。
『病気』『怪我』『体力』と説明しておいたが、理解してくれただろうか?
ついでに近場の怪物も退治して、ヘルメットの店員さんに感謝しながらコンビニを目指す。
「助かった……」
「リーダーかっこよかったっす!」
速攻で逃げた木下君が戻っていた。
「なんですかそれ?」
「わからん……」
死神から貰った怪しい液体。
病気や怪我と言っていたが、薬なんだろうか?
「毒……ですかね?」
「ん? わざわざ毒で殺す必要はないだろう……」
その気になればいつでも……。
死神を思い出し、ブルリと体が震えた。
「ふぅ……。 バリケードを改良しよう。 あんなのがまた来ても立ち向かえるようにな!」
「「はい!!」」
0
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる