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第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない

四十五話

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 体育館に戻ると。
木実ちゃんが天使から女神に昇格していた。

「アマミク様のお聖水のおかげで持病が治りましたじゃ」

「おぉ……感覚の無かった指先が! 奇跡じゃぁ……」

「ありがたやぁ、ありがたやぁ」

 アマミク様ってたしかこの辺りの神社で祭られている神様だったか。
結構大きな神社で初詣はいつもそこに行ってる。 田んぼの神様、水神様? あまりよく知らない。

 なんで木実ちゃんがアマミク様なんだろうか? いや、確かに女神様のように可愛いけれども!
 木実ちゃんの周りに老人バリケードが設置され、近づけない。

「オーガ、お帰り」

「……おう」

 体育館の入口で佇んでいた俺に、葵が近づいてきた。
僅かに興奮しているような。 フードの下からジッと眠たげな瞳を向けてくる。 

「空、飛んでた」

「……うむ」

「私も飛びたい」

 なるほど、さすが魔法少女志望。 さっきまでの戦いを見ていたのか。 
しかし残念、今はSP切れで飛べないのだ。 それにもう少し慣れてからじゃないと、速度が出過ぎて危ないからな。 体も鍛えないと、葵じゃたぶんGで吐いちゃうぞ。

 『また今度な』と、背の低い彼女の頭をフードの上からポンと手を置いた。

「むぅ……」

 葵はぷくっと頬を膨らませた。


「……」

 体育館を見渡すと、なぜかみんな壁に張り付いている。
 ガクガクと震えて。 よっぽど怖かったんだろうな。

 ……俺と目を合わせないように壁の方を向いているわけではないよね?

「お、鬼頭君……」

 誰かこっちを向かないかなと、周りに目を向けていると。
 ブラウスに学校指定ジャージと、微妙な格好の担任教師が声を掛けてきた。 二十三歳新任女教師『新垣 香織』先生だ。 生徒たちからのあだ名はカオリン。 

「一人で戦わせたこと、怒ってるの……? ご、ごめんなさい、ごめんなさい。 でも、みんなを許してあげてください……」

「……」

 ペコペコ謝る新垣先生。
 別に怒ってないけど……。

「せ、先生に、怒っていいから……。 だから……生贄を探すように皆を睨まないでぇ……」

 前から思っていたが、この先生の瞳には俺は一体どういう風に映っているんだ? 俺は悪魔か魔王なのか??
 俺はちょっとイラついたように、二十三歳食べごろ女教師を睨む。

「ひひぁ……そんな、皆が、見てるからっ……だめぇ……」

 新垣先生はガクブルして床に座り込む。
 
「オーガ。 オーラ半端ないよ?」

 オーラ?
 葵の言葉に体を確認するが、特に変わった様子は無い。
 ステータスも確認。

+++++++++++++++++++++++++++++++
 メニュー

 鬼頭 神駆

★魂魄
 魂魄ランク:エリート
 保有魂魄:209ポイント
★スキル
 スキル購入
 スキル:【自然治癒力強化Lv.1】【槍術Lv.1】【身体強化Lv.1】【忍術Lv.1】
 固有スキル:【ガチャLv.2】
★魔法
 魔法購入
 魔法:【】
★マップ
『闘争地域』
★称号 
【*****の発見者】【ママーミーの天敵】【ワイルドドッグの天敵】

++++++++++++++++++++++++++++++


 特にスキルや魔法は増えてはいないな。
 魂魄ポイントも順調に増えている。 校舎にいた敵も校庭にいたのもまとめて倒しまくったからね。 機動力最高。 またSPが回復したらすっ飛ばしたいな。
 あれ?

「エリート?」

 魂魄ランクがエリートになっている。
 オーラってこのせいだろうか。
 自分ではよくわからない。
 ポージングをしつつ筋肉を確かめるが、変わった様子はないけどなぁ。

「ひぇぇ……!?」

 正座を崩したような形で座っていた新垣先生に見せつけてしまった。
 股間を押さえ小さく悲鳴を上げる。 失礼な担任教師だな。

「やぁぁ……!」

 おっと、また睨みつけてしまった。
 
 しかしこれは困るな。
 ただでさえ顔がちょっと怖くて誤解されてしまうのに。
みんな全力で目を背けてるんだけど……。

「あんた……やりすぎよ……」

 リサが非難めいた目で俺を見てくる。
 俺は何もしてないよ!?

「ふぅ……」

 居心地の悪い体育館から俺は出る。
 リーダー型を倒した影響でこの近くには敵は感じられない。
暗くなる前に猫の万屋でも行ってこよう。


◇◆◇


 万屋【猫の手】。

「素晴らしい!」

 黒のブーツ。
【ブラックホーンリア】を帽子を被った猫に見せると、カウンターから出てきた。 これもタキシードと同じく脱げないので履いたまま鑑定してもらう。 目を輝かせるおしゃべり好きな猫は続ける。

「メイン素材はブラックユニコーンですね。 希少なユニコーンの中でもさらに超希少な存在です。 異端と言った方が良いでしょうか。 本来は乙女の純潔を守るユニコーンですが、ブラックユニコーンは乙女の純潔を奪うのです。 当然、仲間のユニコーンたちから淘汰されてしまいますのでこれほどの魔核を取れるほどに成長した個体はなかなかいません」

「……」

 嫌なユニコーンだな。

「SPの回復。 そうですね、時間の経過で回復するほかには、魔石や魔晶石を使って回復もできます。 核の部分にあてれば大丈夫です。 使った魔石は無くなってしまいますがね? そのほかには処女の性エネルギーでも回復するでしょう」

「……」

 性エネルギーってなんだよ。

「交尾をしてはダメですよ? あくまで処女のまま、発情させるのです。 クフフ、童貞には厳しいですかな?」

「……」

 なんで知ってるのっ!?
 変な笑い声の猫は、セクハラ親父みたいな笑みを向けてくる。
 名残惜し気に黒のブーツを見て、猫はカウンターに戻った。 

「他には何か?」

「これ」

「はい。 買取ですね」

 骨矛と魚頭の魔石以外のドロップ品は売却。
骨矛は結構使えるので取っておく。 SPの回復に使えるということなので、魔石も少しストックする。
 カウンターの上のドロップ品は素早く査定された。 素晴らしい。 ブック〇フも見習ってほしいものだ。

「しめて200クレジットで買い取らせて頂きます」

 双頭の野犬の大きな魔石は60クレジットで買い取ってもらえた。
 犬類の買い取り額がうますぎる。 しばらくは犬狩りだな。

「そういえば無事ランクアップをされたようですね。 おめでとうございます。 ですが……まだロードを相手にしてはいけませんよ? 今のままではまず勝つことは不可能です」

 真剣な表情の猫は警告する。

「あなたは面白そうですからね。 そう簡単に退場してほしくはありません。 ……そうですね、ヒントを一つ。 ロードたちに領土の拡大を許してはいけません。 この祭りでは彼らにも制限《ルール》がありますから、領土を潰していけば弱体化させることができます」

「ふむ……」

 領土を潰す。
 結局、狩りまくるしかないってこと?

「領土を広げるためには生贄と印が必要になりますね。 印は見つけたら随時破壊をお勧めしますよ」 
 
 無料で鑑定してもらった上にヒントまでくれるとは……。
 この帽子を被った人型猫はいい奴なのだろうか? 

「クフフ……」

 変な笑い声とどこか胡散臭い笑みが無ければ、素直にそう思えるのだが……。
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