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第一章:鬼頭神駆は誤解が解けない
四十四話
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最高の気分だ。
俺は空中を軽快に蹴り進んでいく。
>>>SSR【ブラックホーンリア】のSPが枯渇しました。 補給してください。
「っ!」
突然の通知音。
空中を蹴るためにだした蹴りは空を切り、俺は体勢を崩し突撃の勢いのまま落下する。
急すぎる! せめて残量が十五パーセントを切ったら警告してくれよッ!
「――ぐぅっ!!」
宙で回転。 体勢を立て直しアスファルトに着地するも衝撃に耐えきれず、すっころぶ。 槍を手放し手で頭をガード。 二転三転では止まらず、真っ赤なロードスターにダイブした。
車同士の交通事故のような衝撃音。 へこむ真っ赤なロードスター。
田舎の民家に似合わないような高級車だ。 きっと無理して買ったロードスターは大破した。
「イタタ……」
俺はメキメキと音を立て車から離れた。
タキシードのおかげか痛みのみですんだようだ。
しかしSPの枯渇とは。 急すぎてビックリですわ。 そんなに高く飛んでなかったからよかったけど……。
「……」
歩いても踵の黒い宝玉から何も出ない。 黒いミノ〇スキー粒子みたいなの出てたのに。
ただ能力強化はそのままのようだ。 体は羽根のように軽い。 履き心地の良い黒のブーツ。 蹴りでも相当な威力が出そうである。
うーん。 どうやってSPを回復するのか分からないな。
時間が経てば回復するのだろうか? これも万屋で聞いてみるか。 困った時の帽子を被った猫。
「帰るか……」
俺は槍を拾い高校へと帰還する。
道中散らばったドロップ品を拾いながら。
◇◆◇
私たちは体育館の窓から戦いを見ていた。
「なんなの、アレ……」
リサちゃんが呟く。
アレとは鬼頭君のこと。 鬼頭君、空まで飛べるんだね……。 凄すぎるよ。
私は彼が行ってしまった方を見つめる、そこにはすでに彼の姿は見えない。
きっとまだ戦ってるんだ。
「【笑いオーガ】……」
そう、誰かが呟いた。
「彼は何者なんだ……!?」
「大丈夫なの……?」
体育館はざわざわと騒がしくなる。
鬼頭君は優しいのに。
近隣から避難してきた人たちは鬼頭君のことをよく知らないから不安そうだ。 ……ううん。 学校のみんなも不安そうだった。
「魔法……。 ずるい……」
鬼頭君が飛びながら戦うところを口を半開きにしてジッと見ていた葵ちゃん。 『魔法』という言葉は強く。 眠たげな瞳は彼の去った方を見ていた。
「化物が逃げてく!」
「助かったの……?」
野犬も魚頭の化物も逃げていく。
安堵の溜息が漏れその場に皆が座り込む。
「様子を見てくる」
「反町君、体は本当に大丈夫?」
「ああ。 ……鬼頭の薬でな」
反町さんは校内の様子を見に行くようだ。
鬼頭君のあげた怪我用ポーションが効いてくれたみたいで本当に良かった。 反町さんは薬の部分で何かを思い出したようにコメカミを押さえていたけど。
「これから、どうすればいいんだろう……」
アゴに手をやり小首を傾げ悩む背の低い先輩は、体育館の人たちを見て小さな溜息を吐く。
服部先輩は悩んでいた。
「服部……」
「うん。 出来ることをやるしかないよね!」
「……そうだね」
でも次には動き出した。
心配そうに声を掛けた九条先輩に、明るい笑顔で振り返り。
声を張る。
「みんな! いつ助けが来るか分からないから、食料を運んでバリケードを作り直そう。 動ける人は協力してくださいーー!!」
へたりこんでしまった人たちはなかなか動けない。
体育館から出るのが怖いんだ。
扉の向こうには怪物がいるかもしれないから。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ、……平気よ。 ちょっとね、胸が苦しいだけだから……」
「お水、飲む?」
服部先輩はペットボトルを渡そうとする。 でも中身は無かった。
「ご、ごめんね……」
「ほんとうに、大丈夫だからね? 心配しないで、ごほっごほっ……」
白髪のおばあちゃん。 本当に辛そうだ。 顔色も悪くて今にも倒れてしまいそう。
見るのも辛い。 みんな目をそらしている。 でも私は目をそらしたくない。
私は服部先輩に近づいて空のペットボトルを手に持った。
「雪代さん?」
不思議そうな顔をする服部先輩を無視して、【聖水】を発動させる。
キラキラと輝く雫は少しずつ空のペットボトルを満たしていく。
「はい。 おばあちゃんどうぞ!」
「……」
そう言って渡した後に、私は気づいた。
こんな怪しい物、飲んでくれるかな?
【聖水】は飲み水としても使えるし、生み出した場合は状態異常回復(中)の効果があるみたい。 病気にも効くといいな。
「「っっ!!」」
恭しく受け取ったおばあちゃんは一気に飲み干した。
まるで『たとえ毒でも飲まねばならぬ!』そんな決意を感じる飲みっぷりだよ!?
「ぷはぁーーーー!!」
飲み干したおばあちゃんは目をキラキラと輝かせ、一言。
「ありがとうございますじゃあ! 天之水神姫《アマミク》様!!」
「ふぇっ!?」
おばあちゃんは手を強く握りしめてきた。
「アマミク様の奇跡ですじゃあーー!!」
体育館に響き渡るおばあちゃんの雄叫び……。
その後、なぜか避難していたご老人の方々に囲まれてしまった。
俺は空中を軽快に蹴り進んでいく。
>>>SSR【ブラックホーンリア】のSPが枯渇しました。 補給してください。
「っ!」
突然の通知音。
空中を蹴るためにだした蹴りは空を切り、俺は体勢を崩し突撃の勢いのまま落下する。
急すぎる! せめて残量が十五パーセントを切ったら警告してくれよッ!
「――ぐぅっ!!」
宙で回転。 体勢を立て直しアスファルトに着地するも衝撃に耐えきれず、すっころぶ。 槍を手放し手で頭をガード。 二転三転では止まらず、真っ赤なロードスターにダイブした。
車同士の交通事故のような衝撃音。 へこむ真っ赤なロードスター。
田舎の民家に似合わないような高級車だ。 きっと無理して買ったロードスターは大破した。
「イタタ……」
俺はメキメキと音を立て車から離れた。
タキシードのおかげか痛みのみですんだようだ。
しかしSPの枯渇とは。 急すぎてビックリですわ。 そんなに高く飛んでなかったからよかったけど……。
「……」
歩いても踵の黒い宝玉から何も出ない。 黒いミノ〇スキー粒子みたいなの出てたのに。
ただ能力強化はそのままのようだ。 体は羽根のように軽い。 履き心地の良い黒のブーツ。 蹴りでも相当な威力が出そうである。
うーん。 どうやってSPを回復するのか分からないな。
時間が経てば回復するのだろうか? これも万屋で聞いてみるか。 困った時の帽子を被った猫。
「帰るか……」
俺は槍を拾い高校へと帰還する。
道中散らばったドロップ品を拾いながら。
◇◆◇
私たちは体育館の窓から戦いを見ていた。
「なんなの、アレ……」
リサちゃんが呟く。
アレとは鬼頭君のこと。 鬼頭君、空まで飛べるんだね……。 凄すぎるよ。
私は彼が行ってしまった方を見つめる、そこにはすでに彼の姿は見えない。
きっとまだ戦ってるんだ。
「【笑いオーガ】……」
そう、誰かが呟いた。
「彼は何者なんだ……!?」
「大丈夫なの……?」
体育館はざわざわと騒がしくなる。
鬼頭君は優しいのに。
近隣から避難してきた人たちは鬼頭君のことをよく知らないから不安そうだ。 ……ううん。 学校のみんなも不安そうだった。
「魔法……。 ずるい……」
鬼頭君が飛びながら戦うところを口を半開きにしてジッと見ていた葵ちゃん。 『魔法』という言葉は強く。 眠たげな瞳は彼の去った方を見ていた。
「化物が逃げてく!」
「助かったの……?」
野犬も魚頭の化物も逃げていく。
安堵の溜息が漏れその場に皆が座り込む。
「様子を見てくる」
「反町君、体は本当に大丈夫?」
「ああ。 ……鬼頭の薬でな」
反町さんは校内の様子を見に行くようだ。
鬼頭君のあげた怪我用ポーションが効いてくれたみたいで本当に良かった。 反町さんは薬の部分で何かを思い出したようにコメカミを押さえていたけど。
「これから、どうすればいいんだろう……」
アゴに手をやり小首を傾げ悩む背の低い先輩は、体育館の人たちを見て小さな溜息を吐く。
服部先輩は悩んでいた。
「服部……」
「うん。 出来ることをやるしかないよね!」
「……そうだね」
でも次には動き出した。
心配そうに声を掛けた九条先輩に、明るい笑顔で振り返り。
声を張る。
「みんな! いつ助けが来るか分からないから、食料を運んでバリケードを作り直そう。 動ける人は協力してくださいーー!!」
へたりこんでしまった人たちはなかなか動けない。
体育館から出るのが怖いんだ。
扉の向こうには怪物がいるかもしれないから。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「はぁ、はぁ、……平気よ。 ちょっとね、胸が苦しいだけだから……」
「お水、飲む?」
服部先輩はペットボトルを渡そうとする。 でも中身は無かった。
「ご、ごめんね……」
「ほんとうに、大丈夫だからね? 心配しないで、ごほっごほっ……」
白髪のおばあちゃん。 本当に辛そうだ。 顔色も悪くて今にも倒れてしまいそう。
見るのも辛い。 みんな目をそらしている。 でも私は目をそらしたくない。
私は服部先輩に近づいて空のペットボトルを手に持った。
「雪代さん?」
不思議そうな顔をする服部先輩を無視して、【聖水】を発動させる。
キラキラと輝く雫は少しずつ空のペットボトルを満たしていく。
「はい。 おばあちゃんどうぞ!」
「……」
そう言って渡した後に、私は気づいた。
こんな怪しい物、飲んでくれるかな?
【聖水】は飲み水としても使えるし、生み出した場合は状態異常回復(中)の効果があるみたい。 病気にも効くといいな。
「「っっ!!」」
恭しく受け取ったおばあちゃんは一気に飲み干した。
まるで『たとえ毒でも飲まねばならぬ!』そんな決意を感じる飲みっぷりだよ!?
「ぷはぁーーーー!!」
飲み干したおばあちゃんは目をキラキラと輝かせ、一言。
「ありがとうございますじゃあ! 天之水神姫《アマミク》様!!」
「ふぇっ!?」
おばあちゃんは手を強く握りしめてきた。
「アマミク様の奇跡ですじゃあーー!!」
体育館に響き渡るおばあちゃんの雄叫び……。
その後、なぜか避難していたご老人の方々に囲まれてしまった。
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