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出会い.

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35「僕、お城の自分の部屋にいたんだ…あの木の根っこみたいなのに連れてこられたんだ…お父様とお母様が僕を助けようとしてくれたけど…」

「……そうだったんだ」

確かカインのエピソードでカインの父親は剣の達人だった筈だ。
ならきっとすぐに迎えに来てくれるかもしれない。
木の怪物の暴走が止まるより早いだろう。

ならどうするか、このままほっとくわけにもいかない。

カインをジッと見つめると不安そうに見ていた。
生前の記憶…娘が子供の頃、休日なんか子育てを手伝った事がある。
男の子は育てた事はないがだいたいは一緒だろう。

立派に育てて両親の元に帰してあげよう、そんな長い期間ではなさそうだしな。
これもなにかの縁だろう。

「よし、カイン…行くところがないなら一緒に暮らすか?」

「いいの?」

「うん、あ…でも」

そこで俺は大事な事を思い出した。
母と妹だ、ある意味忘れちゃいけない二人だ。
どうするか、連れていけない…母は食べるし妹は生き物を見ると実験台にしようとする。
しかも妹はカインと因縁がある、だめだだめだ。

カインは一瞬住むことに目を輝かせて喜んでいたが俺が口ごもるとまた不安そうな顔になった。
俺はカインを連れていき歩き出した。

何時何処で母と妹が見ているか分からないから自分のローブを脱ぎ、カインに被るように言ったら素直に被り袖を引きずらないように余った布を持った。
これなら誰だが分からないだろう、もし聞かれたらクマさんだと適当に言っておこう。

しかし用心して家の場所を通らないように遠回りする。
一度しか行ってないから記憶は曖昧だが思い出しながら進む。
そして目当てのものが見つかった。

「ここがルーエンお兄ちゃんのお家?」

「…う…ん」

違うけど今日からそうなるし、と頷いた。

俺がカインと見ていた場所は魔石が埋め込めれているあの洞窟だった。
もう二度と来る事はないと思っていたが、まさかカインと共に再び訪れるとは思わなかった。

屋根があり、ちょっと肌寒いが何とか生きられそうだと思った。
俺がカインの今の年齢より少し上だった時、この森が底なしで食われそうなほどぽっかりと穴が開いていたのが怖かった記憶がある。
しかしさすが未来の国王兼騎士団長だ、好奇心にキョロキョロと周りを見渡しながら歩いていた。
手を繋いでいる俺はカインに引っ張られながら足を進める。

壁の魔石はどうか分からないが奥の魔石はもう反応しないだろうからカインに先に奥に行ってくれとお願いした。
俺は今日の夕飯を取りに行こうと洞窟を出た。

そしてその前に再び母のところに行った。
母にお別れを言うために……
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