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運命の日
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カインが12歳となった。
もうカインを拾って6年になるのか、時間はとてもあっという間だ。
今日のカインはとてもはりきっていた。
いつものように魚狩りに出かける時も「早く帰ってくる」と言っていた。
今日はなにかあっただろうかと考える。
そこで思い出した。
あ、俺の誕生日だ。
カインが来るまで誕生日なんて気にしていなかったが毎年祝ってくれるからいつからか誕生日が楽しみになっていた。
18歳になるのか、俺ももう大人だなと空を眺める。
魔法もだいぶ使えるようになったし、これで更に生活が楽になればなと思う。
それと同時でとても心が痛くなる。
カインにずっと隠すのはやはり良くない。
…でも、嫌われるのが怖い。
あの純粋なカインが怖がる顔が見たくない。
………いや、でもいつかはバレる…それが人伝より俺の口からの方がいいかもしれない。
そう考えながら洞窟に戻ろうとした。
すると地面から突き上げるような地響きを感じた。
なんだ?と周りを見る。
すると入り口付近の木が倒れるのを見た。
まさか、ずっと出入りが出来なかった木を誰かが切り落としたのか?
それが人間の手でなのか母達がなにかをしたのかは分からない。
気になり入り口に向かって走った。
嫌な事でなければいいんだが…
入り口に近付くと叫び声が聞こえた。
その声はとても聞き覚えがあり血の気が引いた。
やはりそこにはカインがいた。
しかしカインは数人の男達により抱き抱えられていた。
抵抗して暴れるカインを助けようと一歩を踏み出した。
しかし男達から「カイン様」という声を聞き足を止めた。
つい木の影に隠れてしまった。
「嫌だ!離せ!俺はっ!!」
「いけませんカイン様!やっと魔女の森に入れたのですから、帰りましょう!」
「王妃様がご病気ですぐにでも王家を継がすと国王様が…」
「っ!!」
やはり、あの男達は城の人間か。
きっと6年間ずっとこの森から拐われた王子を助けようと入り口を壊し続けていたんだな。
しかしただ塞がっていたわけではなく木の怪物の呪いのようなものだったからなかなか壊す事が出来なかったのだろう。
……それが今、壊されたんだ。
きっと俺同様カインも気になって入り口付近に来たところを見つかって連れ戻そうとしているのだろう。
俺の名を必死に呼ぶ声が聞こえる。
…行ってやりたい、そしてカインの腕を掴み連れ出したい。
そう思っていても俺はその場から動けなかった。
カインにはなに不自由ない暮らしをして、立派な国王になってほしかった。
ここにいたらいつ危険な目に合うか分からない。
……俺なんかよりも本物の両親の方がいいに決まっている。
俺に助けを呼ぶカインをただ聞いてる事しか出来なかった。
頬に涙が伝う。
ごめん、カイン…ごめん…
お別れを言うと離れがたくなるからカインの声がだんだん遠ざかり聞こえなくなるまでそれを聞く事しか出来なかった。
やがて何も聞こえなくなり、木の影から顔を出す。
森の入り口は開いていた。
そして地面にはカインが取った魚が置いてあった。
魚の傍には花が置いてあった。
これは誕生日の時に送る花だ。
花を優しく持つ。
「…カイン、幸せになれよ」
俺の声は誰にも聞かれる事なく風と共に消えていった。
久しぶりの一人での食事は何の味もしなかった。
せっかくカインが俺のために取ってくれたのに…
目を赤くしながら機械のように口を動かし続ける。
涙で視界がぼやける、今…カインはどうしているのだろう…美味しいものを食べているのかな。
俺の事は早く忘れた方がいい。
……こんな苦しい思いをするのは俺だけでいい。
もうカインを拾って6年になるのか、時間はとてもあっという間だ。
今日のカインはとてもはりきっていた。
いつものように魚狩りに出かける時も「早く帰ってくる」と言っていた。
今日はなにかあっただろうかと考える。
そこで思い出した。
あ、俺の誕生日だ。
カインが来るまで誕生日なんて気にしていなかったが毎年祝ってくれるからいつからか誕生日が楽しみになっていた。
18歳になるのか、俺ももう大人だなと空を眺める。
魔法もだいぶ使えるようになったし、これで更に生活が楽になればなと思う。
それと同時でとても心が痛くなる。
カインにずっと隠すのはやはり良くない。
…でも、嫌われるのが怖い。
あの純粋なカインが怖がる顔が見たくない。
………いや、でもいつかはバレる…それが人伝より俺の口からの方がいいかもしれない。
そう考えながら洞窟に戻ろうとした。
すると地面から突き上げるような地響きを感じた。
なんだ?と周りを見る。
すると入り口付近の木が倒れるのを見た。
まさか、ずっと出入りが出来なかった木を誰かが切り落としたのか?
それが人間の手でなのか母達がなにかをしたのかは分からない。
気になり入り口に向かって走った。
嫌な事でなければいいんだが…
入り口に近付くと叫び声が聞こえた。
その声はとても聞き覚えがあり血の気が引いた。
やはりそこにはカインがいた。
しかしカインは数人の男達により抱き抱えられていた。
抵抗して暴れるカインを助けようと一歩を踏み出した。
しかし男達から「カイン様」という声を聞き足を止めた。
つい木の影に隠れてしまった。
「嫌だ!離せ!俺はっ!!」
「いけませんカイン様!やっと魔女の森に入れたのですから、帰りましょう!」
「王妃様がご病気ですぐにでも王家を継がすと国王様が…」
「っ!!」
やはり、あの男達は城の人間か。
きっと6年間ずっとこの森から拐われた王子を助けようと入り口を壊し続けていたんだな。
しかしただ塞がっていたわけではなく木の怪物の呪いのようなものだったからなかなか壊す事が出来なかったのだろう。
……それが今、壊されたんだ。
きっと俺同様カインも気になって入り口付近に来たところを見つかって連れ戻そうとしているのだろう。
俺の名を必死に呼ぶ声が聞こえる。
…行ってやりたい、そしてカインの腕を掴み連れ出したい。
そう思っていても俺はその場から動けなかった。
カインにはなに不自由ない暮らしをして、立派な国王になってほしかった。
ここにいたらいつ危険な目に合うか分からない。
……俺なんかよりも本物の両親の方がいいに決まっている。
俺に助けを呼ぶカインをただ聞いてる事しか出来なかった。
頬に涙が伝う。
ごめん、カイン…ごめん…
お別れを言うと離れがたくなるからカインの声がだんだん遠ざかり聞こえなくなるまでそれを聞く事しか出来なかった。
やがて何も聞こえなくなり、木の影から顔を出す。
森の入り口は開いていた。
そして地面にはカインが取った魚が置いてあった。
魚の傍には花が置いてあった。
これは誕生日の時に送る花だ。
花を優しく持つ。
「…カイン、幸せになれよ」
俺の声は誰にも聞かれる事なく風と共に消えていった。
久しぶりの一人での食事は何の味もしなかった。
せっかくカインが俺のために取ってくれたのに…
目を赤くしながら機械のように口を動かし続ける。
涙で視界がぼやける、今…カインはどうしているのだろう…美味しいものを食べているのかな。
俺の事は早く忘れた方がいい。
……こんな苦しい思いをするのは俺だけでいい。
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