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戦いの口付け・トーマ視点
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シグナムが退いても俺はまだ動けない。
その間にまたシグナムが仕掛けてくるだろう。
早く脱出しなくてはいけないな。
とはいえ脱出で力を使うわけにはいかない。
試しに鎖を切ろうと剣を振るうがびくともしない。
シグナムが長剣を振るうとこちらにゆっくりと近付いてきた。
まるで捕らえた獲物をじっくりといたぶるかのようだ。
あの剣と剣が触れただけで発動するのか、厄介だな。
腕を動かすががしゃがしゃと音が鳴り響くだけだった。
「次は何処を拘束しようか、それとももう終わりにしようか」
シグナムが不気味に顔を歪めて近付いてくる。
真竜の力に反応している、なら真竜がいなければあの剣は恐れる必要はない。
でもどうしたらいいんだ?俺は……
シグナムの剣を再び受け止めると今度は足枷が現れた。
足蹴りは出来なくなった。
腕に力を込めて押し返そうとする。
ギリギリと剣が悲鳴を上げていてシグナムの剣が光り、首が重くなった。
首輪か……次はなんだ、精神を支配するのか。
ここまできてまさか真竜が障害になるとは思わなかった。
シグナムは魔獣と共にずっといたからか、いや……もしかしたらシグナムの中にも魔獣がいて俺の中の真竜のにおいを嗅ぎ付けたのか。
「さぁこれで終わりだ!トーマ・ラグナロク!!」
「っ!」
「トーマ!!」
アルトの声が聞こえる、これは幻聴か?
余裕そうな顔をしていたシグナムは驚きと怒りでアルトの名前を呼んだかと思ったらシグナムは俺から離れた。
俺の前にアルトがいた、小さな体を震わせながら立っていた。
アルトは手に持つ大砲をシグナムに向ける。
人に向けるのは怖いだろう、しかもそれが自分の父親なら尚更だ。
アルトにこんな事をさせちゃダメだ、俺が……俺がやらなくては…
動け……俺の体っ!!
「アルト、死にたくなければ退け」
「…嫌だ」
「グランの躾がなっていないな、シグナム家に逆らう息子はいらない」
「っ、俺は……貴方を止める!!」
「フン、自分じゃ何も出来ないゼロの魔法使いだと言う事を刻み込んでやる」
シグナムは容赦なくアルトに向かって剣を振り上げた。
ダメだ、こんな…アルトを守れ!何のために俺は居るんだ!何のためにお前は俺の中にいるんだ!
ーまた、間違いを犯してしまうのかー
脳内で響く悲しく嘆く声。
後悔する暇があったら俺は…!!
体中がドクドクと脈打ち苦しくなった。
熱い、俺はまた…力を暴走するのか?
シグナムの剣をアルトが大砲で受け止める。
力ではシグナムには勝てないが、押されつつ頑張っている。
アルトの手首に手枷が現れた。
シグナムは「…アルト、お前も中に魔獣がいるのか」と眉を潜めて不快そうな顔をする。
「お前ごときの弱者が魔獣を飼い慣らす事など出来ぬ、その魔獣を寄越しなさい」
「い、やだっ!!」
「そうか、じゃあ死ね」
シグナムが剣の力を急に緩めたからアルトはよろけた。
その隙にもう一度剣を振り上げる。
俺の時とは違い、すぐに殺すつもりだとすぐに分かった。
アルトは体勢を整えようとしていたが間に合わない。
俺はアルトに届けと祈るように手を伸ばした。
背中が焼けるような熱さと激痛に襲われた。
でも腕の中にいて目を丸くするアルトに笑いかけた。
「………とー、ま?」
「アルト、キス…しよう」
泣かないでくれ、俺は笑った君が好きなんだから…
アルトが泣き止む事を祈り唇を重ねた。
熱くとろけるような愛の証…俺はその身に受けた。
すると不思議な事が起こった。
俺達の足元に大きな魔法陣のようなものがどんどん大きく広がっていく。
俺の背を斬りつけたシグナムでさえ不思議な現象に驚いて血で濡れた赤い剣で魔法陣を消そうと振り回すが、地面を引っ掻くだけだった。
痛みが引いていく…
「…トーマ、目が…」
「え…?」
「両目が真っ赤になってる」
そうなのか?全然分からなかった。
これはコントロール出来た、という事なのか?
ラグナロクを捕らえる時も一時的にコントロールが出来たからきっとこれも一時的なのかもしれない。
そんな事、今はどうでもいい……俺はシグナムの方を向いた。
アルトを離れかせて大剣をシグナムに向ける。
シグナムは俺を見て目を見開いていた。
からんと地面に手枷と首輪が落ちる。
「…何故だ、何故…効かない…お前は」
「シグナム、お前は力は万能だとでも思っているのか?…どんな力でも弱点はある、無慈悲に他者を従わす力は真実の愛に弱いみたいだな」
「……愛、だと?」
「見せてやる、これが俺とアルトの愛だ!」
大剣が青白く発光する。
俺は力を最大限に大剣に込めた。
全て終わらせるこの一撃で……
シグナムは避けようとするが、魔法陣により足が地面から離れない。
もがくシグナムにトーマは大剣を振り下ろした。
地面が深く割れ、シグナムはせめて防ごうと長剣を前に出すと呆気なく剣は折れた。
全体が光りに包まれた。
突風に吹き飛ばされないようにアルトの手を引き寄せて地面に大剣を突き立てた。
しばらく我慢していたら風と光が同時に消えた。
「トーマ……終わったの?」
「…もう立ち上がる気力はないだろう」
俺はシグナムがいた場所を見つめた。
力を放った場所は奥まで地面と木が抉れていた。
その間にまたシグナムが仕掛けてくるだろう。
早く脱出しなくてはいけないな。
とはいえ脱出で力を使うわけにはいかない。
試しに鎖を切ろうと剣を振るうがびくともしない。
シグナムが長剣を振るうとこちらにゆっくりと近付いてきた。
まるで捕らえた獲物をじっくりといたぶるかのようだ。
あの剣と剣が触れただけで発動するのか、厄介だな。
腕を動かすががしゃがしゃと音が鳴り響くだけだった。
「次は何処を拘束しようか、それとももう終わりにしようか」
シグナムが不気味に顔を歪めて近付いてくる。
真竜の力に反応している、なら真竜がいなければあの剣は恐れる必要はない。
でもどうしたらいいんだ?俺は……
シグナムの剣を再び受け止めると今度は足枷が現れた。
足蹴りは出来なくなった。
腕に力を込めて押し返そうとする。
ギリギリと剣が悲鳴を上げていてシグナムの剣が光り、首が重くなった。
首輪か……次はなんだ、精神を支配するのか。
ここまできてまさか真竜が障害になるとは思わなかった。
シグナムは魔獣と共にずっといたからか、いや……もしかしたらシグナムの中にも魔獣がいて俺の中の真竜のにおいを嗅ぎ付けたのか。
「さぁこれで終わりだ!トーマ・ラグナロク!!」
「っ!」
「トーマ!!」
アルトの声が聞こえる、これは幻聴か?
余裕そうな顔をしていたシグナムは驚きと怒りでアルトの名前を呼んだかと思ったらシグナムは俺から離れた。
俺の前にアルトがいた、小さな体を震わせながら立っていた。
アルトは手に持つ大砲をシグナムに向ける。
人に向けるのは怖いだろう、しかもそれが自分の父親なら尚更だ。
アルトにこんな事をさせちゃダメだ、俺が……俺がやらなくては…
動け……俺の体っ!!
「アルト、死にたくなければ退け」
「…嫌だ」
「グランの躾がなっていないな、シグナム家に逆らう息子はいらない」
「っ、俺は……貴方を止める!!」
「フン、自分じゃ何も出来ないゼロの魔法使いだと言う事を刻み込んでやる」
シグナムは容赦なくアルトに向かって剣を振り上げた。
ダメだ、こんな…アルトを守れ!何のために俺は居るんだ!何のためにお前は俺の中にいるんだ!
ーまた、間違いを犯してしまうのかー
脳内で響く悲しく嘆く声。
後悔する暇があったら俺は…!!
体中がドクドクと脈打ち苦しくなった。
熱い、俺はまた…力を暴走するのか?
シグナムの剣をアルトが大砲で受け止める。
力ではシグナムには勝てないが、押されつつ頑張っている。
アルトの手首に手枷が現れた。
シグナムは「…アルト、お前も中に魔獣がいるのか」と眉を潜めて不快そうな顔をする。
「お前ごときの弱者が魔獣を飼い慣らす事など出来ぬ、その魔獣を寄越しなさい」
「い、やだっ!!」
「そうか、じゃあ死ね」
シグナムが剣の力を急に緩めたからアルトはよろけた。
その隙にもう一度剣を振り上げる。
俺の時とは違い、すぐに殺すつもりだとすぐに分かった。
アルトは体勢を整えようとしていたが間に合わない。
俺はアルトに届けと祈るように手を伸ばした。
背中が焼けるような熱さと激痛に襲われた。
でも腕の中にいて目を丸くするアルトに笑いかけた。
「………とー、ま?」
「アルト、キス…しよう」
泣かないでくれ、俺は笑った君が好きなんだから…
アルトが泣き止む事を祈り唇を重ねた。
熱くとろけるような愛の証…俺はその身に受けた。
すると不思議な事が起こった。
俺達の足元に大きな魔法陣のようなものがどんどん大きく広がっていく。
俺の背を斬りつけたシグナムでさえ不思議な現象に驚いて血で濡れた赤い剣で魔法陣を消そうと振り回すが、地面を引っ掻くだけだった。
痛みが引いていく…
「…トーマ、目が…」
「え…?」
「両目が真っ赤になってる」
そうなのか?全然分からなかった。
これはコントロール出来た、という事なのか?
ラグナロクを捕らえる時も一時的にコントロールが出来たからきっとこれも一時的なのかもしれない。
そんな事、今はどうでもいい……俺はシグナムの方を向いた。
アルトを離れかせて大剣をシグナムに向ける。
シグナムは俺を見て目を見開いていた。
からんと地面に手枷と首輪が落ちる。
「…何故だ、何故…効かない…お前は」
「シグナム、お前は力は万能だとでも思っているのか?…どんな力でも弱点はある、無慈悲に他者を従わす力は真実の愛に弱いみたいだな」
「……愛、だと?」
「見せてやる、これが俺とアルトの愛だ!」
大剣が青白く発光する。
俺は力を最大限に大剣に込めた。
全て終わらせるこの一撃で……
シグナムは避けようとするが、魔法陣により足が地面から離れない。
もがくシグナムにトーマは大剣を振り下ろした。
地面が深く割れ、シグナムはせめて防ごうと長剣を前に出すと呆気なく剣は折れた。
全体が光りに包まれた。
突風に吹き飛ばされないようにアルトの手を引き寄せて地面に大剣を突き立てた。
しばらく我慢していたら風と光が同時に消えた。
「トーマ……終わったの?」
「…もう立ち上がる気力はないだろう」
俺はシグナムがいた場所を見つめた。
力を放った場所は奥まで地面と木が抉れていた。
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