眠り騎士と悪役令嬢の弟

塩猫

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協力

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「……やっぱりお前、さっきまでアイツといたのか」

騎士さんは俺がトーマのところに行ったのを知っている。
俺は騎士さんに言わなきゃいけない、もうゲームの通りにしなくていいって…
俺の幸せはトーマの傍にいる事なんだって…

騎士さんもきっといつか、生きててよかったって思える日が来るって俺は信じてる。
俺は騎士さんに話した、作戦の事…

そして俺は自分の未来を歩むと決めた事。

騎士さんは俺を睨みながら呆れたため息を吐いた。

「…なんでそんな話を俺にするんだ?」

「騎士さんの協力が欲しいんだ」

「俺が協力するとでも?」

簡単に仲間になる人ではないって分かってる。
でもこの作戦には騎士さんが必要なんだ。

「戻ってきた理由はこれか」と騎士さんは呟いた。

騎士さんはゲームに囚われたままだ、作戦とは別に騎士さんを自由にしなくてはいけない。

そういえばルカは俺を助けてくれたと言っていた、ルカが神様であるなら…このゲームの世界を生み出したのは……ルカ?

本人に聞いていないからまだルカが何者か分からないが、騎士さんもゲームを知る関係者だ…知り合いだったりするのだろうか。
とりあえず俺の知ってるかぎりの関係ありそうな情報を騎士さんにぶつけてみよう。

「騎士さんはルカを知ってる?」

「……ルカ?」

騎士さんは眉を寄せる。
顔が完全に「…何言ってんだコイツ」だった。

ルカは名前を明かしてないのかもしれない。
じゃあ神様って言うと騎士さんは考え込んだ。

神様はいっぱいいるから分からないのかもしれない。
でも、ゲームの神様は一人だけだと思っている。

「…お前もあったのか?あの変な子供に」

変な子供…俺はルカを知っているから変だとは思わないが子供と言われあの時のルカは子供だった事を思い出す。
きっと騎士さんが言う変な子供とはルカで合ってると思う。

俺はルカじゃなくて神様には昨日初めて会ったが騎士さんはずっと昔から知っているみたいだった。

騎士さん自身の話、正直聞いた事がなかった気がした。

騎士さんはゲームのバグでアルトになれなくて、俺を殺すために生きてきた…それしか知らなかった。
俺のせいで騎士さんの人生は狂ってしまった。

それと同時に自分の分身を救えるのは自分自身だと考えていた。

「俺がアルトだと教えたのは神と名乗る子供だった」

「やっぱりルカは神様だったのか」

「……知っていたんじゃないのか?」

誘導尋問されたと思った騎士さんは眉間のシワを深くするから慌てて訂正した。

ルカは一言も神様だと言っていなかったが神様みたいに俺の命を救ってくれたからと言うと騎士さんは眉を和らげる事なく俺を睨む。
そっか、あの時神様に関わったのは俺とトーマだけだから騎士さんは二度の人生を繰り返してるなんて知らないか。

言わなきゃ話は進まないが、正直信じてもらえるか微妙なところだ。
もし俺が騎士さんなら普通に話しても信じないだろう、言葉を選ばなくては…一度嘘だと思われたらきっと何を言っても嘘のように思われる気がした。

俺は騎士さんに一つ一つ省略せず話した。
このまま行っても俺の未来はシグナム家に閉ざされる。
騎士さんの思い描く結末にはどう転んでもならない。

本当はもう、分かっているのではないのか?
騎士さんがゲームのアルトならもうこの世界はゲームと切り離された世界だって…

でも、それを認めたくない…認めてしまったら自分の存在理由がなくなってしまう。
同じアルトだから俺は騎士さんの気持ちが痛いほど分かる。

俺もトーマと深く関わる前は自分の存在理由を探していた。
誰かに必要とされたい、生前病院にいた頃のようにいらない子だと思われたくない…ずっとそればかりを考えていた。
きっと姉と自分の未来を変えようとしていたのは生きたいという理由の他にそんな理由があったんだと思う。

そして俺はトーマに必要とされ、俺はゲームの世界のアルトから本物になれたような感じがした。
だから今度は俺が騎士さんを本物にしよう。

アルト・シグナムという名前が貴方を苦しめるというなら…俺は…

「ル……神様はなんて言ってたの?」

「俺の夢の中で俺がゲームの柱だと言っていた」

「……柱?」

「ゲームを壊さないようにこの世界を支える柱なんだよ、俺は…お前がゲームを異端者だからお前の監視でもある」

ルカがそんな事を騎士さんに言ったのか?
俺の監視…俺が変な事をしたら止める役割を騎士さんがしている。
…あれ、でもルカは自分から世界をリセットして俺を助けてくれたがそれはいいのだろうか。

それとももしかしてルカの他に神様がいるのかもしれない。
神様問題は謎が深まるばかりだ。

騎士さんはずっと柱として守り続けていた。
でも、その結末が死ぬ事なんて…あまりにも悲しすぎる。

「…お前、何泣いてるんだ」

「……っえ」

騎士さんに言われて頬が濡れている事に気付いた。

同情されたくないと騎士さんは不快そうな顔をしてそっぽを向いてしまった。
俺は涙を袖で拭い騎士さんに近付いた。

騎士さんの瞳をまっすぐに見つめ口を開いた。
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