100 / 116
自分にしか出来ない事
しおりを挟む
再び目を覚ました時はふかふかの毛布に包まれていた。
トーマが運んでくれたのだろうか。
周りを確認しても寝室にはトーマはいなかった。
寝室のドアの向こう側、つまりリビングで話し声が聞こえる。
ベッドから体を起こして話してるなら邪魔できないよなと思い窓を見つめる。
目は普通に黒い、トーマは力を使うと赤くなっていたが俺はどういう状況でそうなるのだろうか…それとも夢だけなのか?
ルカに聞けばわかるかな、まだ帰れないって言ってたけど…
初めてルカにあった時、ルカはゲームのキャラにはいなかった。
あの時はただゲームのスポットが当たってない学校の友達だからと思っていた、でもルカは俺を助けてくれたと言っていた。
俺が時間をやり直せたのはルカのおかげだったんだ。
ならルカはきっと俺と同じゲームのイレギュラーだったって事なのかな。
そんな事を考えていたらリビングの方からガタッとなにかにぶつかる音が聞こえた。
その後に続く怒鳴り声、トーマの声だ。
いったいなにがあったのか気になりドアに近付く。
耳を当てなくても寝室まで声が響いてきた。
「ふざけるな!そんな事出来るわけない!」
「じゃあお前は他にいい方法があるのか?シグナムを油断させるにはこれしかないんだ」
トーマはそれでも反対を続けていた。
シグナム…きっとシグナム家を捕まえる作戦を立てているのだろう。
作戦を話したのは声からしてノエルか。
そしてどんな内容か分からないけどトーマは反対している。
シグナム家を捕まえられればこの世界は平和になる。
ゲームが終わる。
そしたら今度は俺達皆が物語を作っていける。
そのためだったら俺も何でもする、役に立ちたいんだ。
「だからって!アルトを囮に使うなんて出来ない!」
「…え?」
つい声が溢れた。
囮?俺が?俺の囮の話をしていたのか?
トーマの声とそれを落ち着かせようとするノエルの声が重なる。
トーマの気持ちは分かる、囮となれば命に関わる危険がある…もしトーマが囮になると言われたらトーマは強くても万が一を考えて嫌だ。
でもノエルはこれしか方法はないと言う、シグナム家を捕まえる…俺もそれに協力出来るなら…
正直俺なんかであの両親が油断するか分からない。
前の人生では俺は失敗した、両親に道具にされ…自らの手でこの街を壊してしまった。
でも今の俺は前みたいな無知ではない、両親の考えている事も分かっている。
それに俺は、シグナム家に居ても一人じゃないって知ってる。
だからもう二度とあの過ちは犯さない。
ドアノブに手を置き捻りドアを開けた。
開く音で気付いたトーマとノエル、後会話に参加していなかったから分からなかったけどガリュー先生とリカルドと何故か縄で縛られて猿轡をしているグランがいた。
トーマはテーブルに乗り上げてノエルの胸ぐらを掴んでいた。
床には中身が出たティーカップが転がっていた。
トーマは驚いた顔をしてノエルから手を離した。
ノエルはシワになった服を整えて俺を苦笑いして見つめていた。
「アルト、どうかしたのか?」
トーマは何でもない様子で俺に笑いかけたつもりだったのだろうがらその顔は悲しみを堪えるような顔にしか見えなかった。
トーマにそんな顔をしてほしくない。
俺はトーマに駆け寄り抱きしめた。一瞬戸惑ったように感じたトーマだったが俺を包み込むように抱きしめて頭を撫でてくれた。
何だか泣きそうだった。
トーマは俺を死なせたと思い込んでいる。
トーマが現れた時俺は死んでしまったからよく知らない。
でもあれはトーマが悪いんじゃない、俺が勝手に行動した末路なんだ。
トーマが近くにいるのに相談もせず騎士さんの言う事を聞いた。
シグナム家で姉と和解したのは姉の本心を知れて良かったが失うものが多すぎた。
俺はもう二度とあんな事はしない。
「トーマ、俺を使って…俺もこの世界をトーマと救いたい!」
「……だめだ」
「トーマ!」
「もう二度目はないんだぞ、分かっているのか?」
「分かってる、だから俺は同じ事を二回も繰り返さない!」
「アルト…」
トーマが運んでくれたのだろうか。
周りを確認しても寝室にはトーマはいなかった。
寝室のドアの向こう側、つまりリビングで話し声が聞こえる。
ベッドから体を起こして話してるなら邪魔できないよなと思い窓を見つめる。
目は普通に黒い、トーマは力を使うと赤くなっていたが俺はどういう状況でそうなるのだろうか…それとも夢だけなのか?
ルカに聞けばわかるかな、まだ帰れないって言ってたけど…
初めてルカにあった時、ルカはゲームのキャラにはいなかった。
あの時はただゲームのスポットが当たってない学校の友達だからと思っていた、でもルカは俺を助けてくれたと言っていた。
俺が時間をやり直せたのはルカのおかげだったんだ。
ならルカはきっと俺と同じゲームのイレギュラーだったって事なのかな。
そんな事を考えていたらリビングの方からガタッとなにかにぶつかる音が聞こえた。
その後に続く怒鳴り声、トーマの声だ。
いったいなにがあったのか気になりドアに近付く。
耳を当てなくても寝室まで声が響いてきた。
「ふざけるな!そんな事出来るわけない!」
「じゃあお前は他にいい方法があるのか?シグナムを油断させるにはこれしかないんだ」
トーマはそれでも反対を続けていた。
シグナム…きっとシグナム家を捕まえる作戦を立てているのだろう。
作戦を話したのは声からしてノエルか。
そしてどんな内容か分からないけどトーマは反対している。
シグナム家を捕まえられればこの世界は平和になる。
ゲームが終わる。
そしたら今度は俺達皆が物語を作っていける。
そのためだったら俺も何でもする、役に立ちたいんだ。
「だからって!アルトを囮に使うなんて出来ない!」
「…え?」
つい声が溢れた。
囮?俺が?俺の囮の話をしていたのか?
トーマの声とそれを落ち着かせようとするノエルの声が重なる。
トーマの気持ちは分かる、囮となれば命に関わる危険がある…もしトーマが囮になると言われたらトーマは強くても万が一を考えて嫌だ。
でもノエルはこれしか方法はないと言う、シグナム家を捕まえる…俺もそれに協力出来るなら…
正直俺なんかであの両親が油断するか分からない。
前の人生では俺は失敗した、両親に道具にされ…自らの手でこの街を壊してしまった。
でも今の俺は前みたいな無知ではない、両親の考えている事も分かっている。
それに俺は、シグナム家に居ても一人じゃないって知ってる。
だからもう二度とあの過ちは犯さない。
ドアノブに手を置き捻りドアを開けた。
開く音で気付いたトーマとノエル、後会話に参加していなかったから分からなかったけどガリュー先生とリカルドと何故か縄で縛られて猿轡をしているグランがいた。
トーマはテーブルに乗り上げてノエルの胸ぐらを掴んでいた。
床には中身が出たティーカップが転がっていた。
トーマは驚いた顔をしてノエルから手を離した。
ノエルはシワになった服を整えて俺を苦笑いして見つめていた。
「アルト、どうかしたのか?」
トーマは何でもない様子で俺に笑いかけたつもりだったのだろうがらその顔は悲しみを堪えるような顔にしか見えなかった。
トーマにそんな顔をしてほしくない。
俺はトーマに駆け寄り抱きしめた。一瞬戸惑ったように感じたトーマだったが俺を包み込むように抱きしめて頭を撫でてくれた。
何だか泣きそうだった。
トーマは俺を死なせたと思い込んでいる。
トーマが現れた時俺は死んでしまったからよく知らない。
でもあれはトーマが悪いんじゃない、俺が勝手に行動した末路なんだ。
トーマが近くにいるのに相談もせず騎士さんの言う事を聞いた。
シグナム家で姉と和解したのは姉の本心を知れて良かったが失うものが多すぎた。
俺はもう二度とあんな事はしない。
「トーマ、俺を使って…俺もこの世界をトーマと救いたい!」
「……だめだ」
「トーマ!」
「もう二度目はないんだぞ、分かっているのか?」
「分かってる、だから俺は同じ事を二回も繰り返さない!」
「アルト…」
27
お気に入りに追加
3,015
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました
白兪
BL
前世で妹がプレイしていた乙女ゲーム「君とユニバース」に転生してしまったアース。
攻略対象者ってことはイケメンだし将来も安泰じゃん!と喜ぶが、アースは人気最下位キャラ。あんまりパッとするところがないアースだが、気がついたら王太子の婚約者になっていた…。
なんとか友達に戻ろうとする主人公と離そうとしない激甘王太子の攻防はいかに!?
ゆっくり書き進めていこうと思います。拙い文章ですが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜
咲
BL
公爵家の長女、アイリス
国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている
それが「私」……いや、
それが今の「僕」
僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ
前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する
復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする
そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎
切なく甘い新感覚転生BL!
下記の内容を含みます
・差別表現
・嘔吐
・座薬
・R-18❇︎
130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合)
《イラスト》黒咲留時(@black_illust)
※流血表現、死ネタを含みます
※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです
※感想なども頂けると跳んで喜びます!
※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です
※若干の百合要素を含みます
【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします
七夜かなた
BL
前世はブラック企業に過労死するまで働かされていた一宮沙織は、読んでいたTL小説「放蕩貴族は月の乙女を愛して止まない」の悪役令息ギャレット=モヒナートに転生してしまった。
よりによってヒロインでもなく、ヒロインを虐め、彼女に惚れているギャレットの義兄ジュストに殺されてしまう悪役令息に転生するなんて。
お金持ちの息子に生まれ変わったのはいいけど、モブでもいいから長生きしたい
最後にはギャレットを殺した罪に問われ、牢獄で死んでしまう。
小説の中では当て馬で不憫だったジュスト。
当て馬はどうしようもなくても、不憫さは何とか出来ないか。
小説を読んでいて、ハッピーエンドの主人公たちの影で不幸になった彼のことが気になっていた。
それならヒロインを虐めず、義兄を褒め称え、悪意がないことを証明すればいいのでは?
そして義兄を慕う義弟を演じるうちに、彼の自分に向ける視線が何だか熱っぽくなってきた。
ゆるっとした世界観です。
身体的接触はありますが、濡れ場は濃厚にはならない筈…
タイトルもしかしたら途中で変更するかも
イラストは紺田様に有償で依頼しました。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる