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トーマ視点
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ノエルがノックもなしに部屋に入ってきた。
驚いた俺と姫はすぐに密着していた体を離した。
俺は何でもないようにノエルと話していて、姫はノエルに悟られないように赤くなった頬を隠すように下を向いていた。
名残惜しいが、まずはこれを片付けなきゃな。
どうやら英雄ラグナロクの尋問が終わったそうだ。
俺は聞きたい事をノエルに代弁するように頼み姫が心配だからと部屋にやってきた。
ノエルと数人の騎士で尋問をしていたみたいで俺に報告していた。
「なかなか口を割らなくて大変だったんだぞ」
「そうか、それで?」
「トーマが言っていた資料、トーマの家から持ち出すように頼んだ…それを聞いた英雄ラグナロクが面白いぐらい取り乱してな」
前は英雄ラグナロクの元部下に先を越されて証拠隠滅されたからな。
あれは今まで英雄ラグナロクがしてきた悪事の証拠資料だ…絶対に確保しなければならない。
まだ英雄ラグナロクの元部下に捕まった事は知られていない…大丈夫だ、見つかるまでに全てを終わらす。
資料が届くまで聞き出した情報を整理する。
英雄ラグナロクが昔シグナム家との戦いで城から家宝である聖剣を盗み出し戦った事を詫びた。
しかし、そうしなければこの街はシグナム家に乗っ取られてしまうから仕方なかったんだとノエルに言っていたそうだ。
シグナム家と魔獣と戦ったのは英雄ラグナロクだと知っている。
あの聖剣の力を使えばそれも不可能ではないだろう。
しかし、そうじゃない…俺が聞きたいのは…
フェランド王国との関わり、それだけだ。
しかし何を聞いても英雄ラグナロクは同じ事を口にして言いきった顔をしていたそうだ。
…どうやら本人は口を割る気はないようだ。
ならば言い訳が出来ないほどの結果的な証拠を言うまでだ。
俺はきっと母は資料を取りに行った騎士団に母が持ってる資料を渡さないだろうと思い、俺も家に向かう事にした。
英雄ラグナロクは応接室にずっと居ても他に客人が来た時困るから空き部屋に入れるか。
「俺も家に向かう」
「分かった、俺はまだ本調子じゃないからラグナロク様の見張りをやるな」
俺とノエルは頷いた。
姫が落ち着いたのかこちらを見ていた。
俺は姫に近付き耳元で「全てが終わったら、続きをしよう」と囁いたらまた顔が赤くなった。
本当に可愛いな、俺の姫は…
いつ帰ってくるか分からなかったからずっと待たすわけにもいかず姫にどうするか聞くと姫は書斎のようなところはないかと聞いてきた。
書斎、確か寄宿舎の地下に資料庫があったな。
暇潰しに本でも読むのだろうか。
「階段の近くに地下への階段がある、地下の奥が資料庫だが…それでもいいか?」
「うん、十分だよ…ありがとう」
「まだ姫をよく思わない奴がいるから念のために誰かと一緒に行動してくれ」
姫は頷き、寄宿舎の入り口まで見送ってもらった。
短く息を吐き歩き出した。
母にあったらきっと前とそう変わらない会話をするだろう。
…きっと変わるとしたら、俺の心情の変化ぐらいだろう。
英雄ラグナロクの悪事を暴いた後はシグナム家との戦いだ。
それが終わったら、この国は平和になるのだろうか。
それがたとえ一時的なものだとしても、姫を脅かす存在がいなくなる。
……きっと本当のハッピーエンドとはそういうものなのだろう。
完全に平和にならなくても俺の隣で笑ってくれたら俺は他には何も望まない。
国民を守れてもたった一人を守れないようだと騎士団長とは呼べないからな。
そう考えていたら家に着いた。
家のチャイムを押す。
今はまだ騎士団がいるからか中で慌ただしい音がしてドアが開いた。
母は記憶の母よりは元気そうだった、まだ父が捕まったと聞いたばかりだからかもしれない。
俺は母を見て安心させるように笑った。
「…トーマ」
「母さん」
俺は母に案内されるままに家の中に入った。
驚いた俺と姫はすぐに密着していた体を離した。
俺は何でもないようにノエルと話していて、姫はノエルに悟られないように赤くなった頬を隠すように下を向いていた。
名残惜しいが、まずはこれを片付けなきゃな。
どうやら英雄ラグナロクの尋問が終わったそうだ。
俺は聞きたい事をノエルに代弁するように頼み姫が心配だからと部屋にやってきた。
ノエルと数人の騎士で尋問をしていたみたいで俺に報告していた。
「なかなか口を割らなくて大変だったんだぞ」
「そうか、それで?」
「トーマが言っていた資料、トーマの家から持ち出すように頼んだ…それを聞いた英雄ラグナロクが面白いぐらい取り乱してな」
前は英雄ラグナロクの元部下に先を越されて証拠隠滅されたからな。
あれは今まで英雄ラグナロクがしてきた悪事の証拠資料だ…絶対に確保しなければならない。
まだ英雄ラグナロクの元部下に捕まった事は知られていない…大丈夫だ、見つかるまでに全てを終わらす。
資料が届くまで聞き出した情報を整理する。
英雄ラグナロクが昔シグナム家との戦いで城から家宝である聖剣を盗み出し戦った事を詫びた。
しかし、そうしなければこの街はシグナム家に乗っ取られてしまうから仕方なかったんだとノエルに言っていたそうだ。
シグナム家と魔獣と戦ったのは英雄ラグナロクだと知っている。
あの聖剣の力を使えばそれも不可能ではないだろう。
しかし、そうじゃない…俺が聞きたいのは…
フェランド王国との関わり、それだけだ。
しかし何を聞いても英雄ラグナロクは同じ事を口にして言いきった顔をしていたそうだ。
…どうやら本人は口を割る気はないようだ。
ならば言い訳が出来ないほどの結果的な証拠を言うまでだ。
俺はきっと母は資料を取りに行った騎士団に母が持ってる資料を渡さないだろうと思い、俺も家に向かう事にした。
英雄ラグナロクは応接室にずっと居ても他に客人が来た時困るから空き部屋に入れるか。
「俺も家に向かう」
「分かった、俺はまだ本調子じゃないからラグナロク様の見張りをやるな」
俺とノエルは頷いた。
姫が落ち着いたのかこちらを見ていた。
俺は姫に近付き耳元で「全てが終わったら、続きをしよう」と囁いたらまた顔が赤くなった。
本当に可愛いな、俺の姫は…
いつ帰ってくるか分からなかったからずっと待たすわけにもいかず姫にどうするか聞くと姫は書斎のようなところはないかと聞いてきた。
書斎、確か寄宿舎の地下に資料庫があったな。
暇潰しに本でも読むのだろうか。
「階段の近くに地下への階段がある、地下の奥が資料庫だが…それでもいいか?」
「うん、十分だよ…ありがとう」
「まだ姫をよく思わない奴がいるから念のために誰かと一緒に行動してくれ」
姫は頷き、寄宿舎の入り口まで見送ってもらった。
短く息を吐き歩き出した。
母にあったらきっと前とそう変わらない会話をするだろう。
…きっと変わるとしたら、俺の心情の変化ぐらいだろう。
英雄ラグナロクの悪事を暴いた後はシグナム家との戦いだ。
それが終わったら、この国は平和になるのだろうか。
それがたとえ一時的なものだとしても、姫を脅かす存在がいなくなる。
……きっと本当のハッピーエンドとはそういうものなのだろう。
完全に平和にならなくても俺の隣で笑ってくれたら俺は他には何も望まない。
国民を守れてもたった一人を守れないようだと騎士団長とは呼べないからな。
そう考えていたら家に着いた。
家のチャイムを押す。
今はまだ騎士団がいるからか中で慌ただしい音がしてドアが開いた。
母は記憶の母よりは元気そうだった、まだ父が捕まったと聞いたばかりだからかもしれない。
俺は母を見て安心させるように笑った。
「…トーマ」
「母さん」
俺は母に案内されるままに家の中に入った。
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