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実戦授業
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「アルト、部屋にもらった焼き菓子があるんだ…食べるか?」
「うん!」
トーマと手を繋いで、一緒に部屋に向かいながら二人きりの時間を楽しんだ。
そうだ、実戦授業の話をトーマにもしておこう。
トーマは学園の卒業生なんだし、なにかアドバイスしてくれるかもしれない。
こういう時、学園の先輩がいてくれると助かるよな。
部屋に到着して、トーマが焼き菓子を用意して俺は紅茶を淹れる。
テーブルに二人分のカップを置いて、トーマに実戦授業の話をした。
懐かしそうな顔をしていたが、心配した顔もしていた。
「実戦授業は魔法が苦手な奴もいるから、魔法を使わなくてもいいが…危険な魔物を相手にする授業だ…大丈夫か?」
「大丈夫だよ、俺にはルカとリカルドもいるし…あの時の何も出来なかった俺とは違うから」
トーマに守られてばかりだった俺は嫌だった、誰かを守る男になりたい。
そのためにこっそりと修行して、銃の扱いに慣れてきたんだ。
いつか、トーマの右腕として…トーマを守れるように…
自分の気持ちをトーマに伝えると、トーマは「怪我をしない事だけ考えてほしい」と俺の頬を撫でた。
あくまで学園行事だから生徒が死ぬ事はないが、怪我はするかもしれないとトーマはそれが心配だったようだ。
トーマには内緒だから、俺だって鍛えてるからと内心思いながら大丈夫だよと笑った。
それに俺だけじゃない、頼もしい仲間が二人もいるんだ…エルゼくんもそんな友達になりたい。
そう思っていたが、結局エルゼくんは実戦授業を欠席して、俺達は三人のグループで参加する事になった。
ルカの熱意は伝わらなかったようで、落ち込んでいた。
俺達がいるから大丈夫だってルカを二人で慰めていたら先生が実戦授業の話をしていた。
街外れの広い草原で行われる授業で、そこまで離れた場所ではないから街に流れ弾が行かないからあちこちで心配されていた。
万が一の事があっても街に被害は出ないように先生達が結界を張るから俺達は授業に集中しろと先生に言われた。
この授業は先生が魔法で作り出した幻獣と呼ばれる魔物を倒す事で合格となる。
倒し方は問わないが、逃げたりあらゆる理由で危険と判断されて授業を中断された場合は不合格になる。
実戦授業はグループ戦だから、全て連帯責任になる。
俺はトーマからもらった銃を持ち、戦う事にした。
先生が手を上げると、先生の横に大きな魔法陣が出現して幻獣が現れた。
「では、最初のグループから……始め!!」
どんどんグループが参加していき、合格したり不合格になったりしていた。
三グループずつだからすぐに俺達の出番になり、武器を構えると先生が手を上げた。
緊張する…心臓が一秒一秒うるさく鳴り響く。
俺達の前に現れたのは虎のような姿の魔物だった。
魔物が大きく雄叫びを上げると、地面がピリピリと揺れた。
すぐに治まると思ったが、なにか違和感を感じた。
これは、魔物の雄叫びだけの地震じゃない気がする。
俺が立ち止まっていると、ルカとリカルドは不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?早くやらないの?」
「…う、ん」
俺が一歩動き出そうとしたら、何処からか歌が聞こえた。
綺麗な声だ、でも…不思議とずっと聞いていたくない声のように思えた。
耳に残る、スッキリしない嫌な気分が残る声だ。
今は授業に集中しようと思って、再び銃を構えると他のグループの人達から悲鳴が聞こえた。
そちらを見ると、幻獣の目が赤く光り暴れ回っていた。
先生は慌てて、幻獣を押さえつけようと魔法を使うが幻獣は生徒達に牙を向けた。
もう一つのグループの幻獣も襲いかかってきて、パニックを起こしていた。
俺達のところの幻獣も目の色を変えて、鋭い爪で襲ってきてリカルドが剣で受け止めた。
凶暴さが増して、力も強くなっているように感じる。
押され気味になっていて、リカルド一人では身動きが取れなくなる。
「なっ、んだコイツ…重いっ」
「リカルド!!」
「応戦するよ!!」
俺とルカは武器を構えて、リカルドを助けようと魔物に向かって走った。
ルカが剣で切りつけて、その傷口に俺が銃を当てると頭の中で作戦を考える。
そう思っていたら、ルカの剣は魔物に当たる事なくリカルドと一緒に投げ飛ばされた。
体がぶつかり、地面に叩きつけられた二人に向かって駆け寄る。
痛みで動けないのか、顔を歪ませていて…俺は魔物に向かって銃を放った。
その銃は貫通して、魔物が跡形もなく消えていく。
二人に魔物が気を取られていたから倒せたが、一人だったらどうする事も出来なかった。
早く二人を医者に見せないと…と思っていたら、突然大きな音と共に突風が吹いた。
なにが起きたのか、一瞬だけ分からなくなった。
王都がある場所の空が赤い……いろんな叫び声が王都から聞こえる。
魔物が王都内に潜入したのかと思ったが、それは教師が必死に食い止めているからその心配はしなくてよさそうだ。
だとしたら、別の理由で王都に異変が起きているという事になる。
その光景は、まるで…地獄を見ているかのようだ。
「うん!」
トーマと手を繋いで、一緒に部屋に向かいながら二人きりの時間を楽しんだ。
そうだ、実戦授業の話をトーマにもしておこう。
トーマは学園の卒業生なんだし、なにかアドバイスしてくれるかもしれない。
こういう時、学園の先輩がいてくれると助かるよな。
部屋に到着して、トーマが焼き菓子を用意して俺は紅茶を淹れる。
テーブルに二人分のカップを置いて、トーマに実戦授業の話をした。
懐かしそうな顔をしていたが、心配した顔もしていた。
「実戦授業は魔法が苦手な奴もいるから、魔法を使わなくてもいいが…危険な魔物を相手にする授業だ…大丈夫か?」
「大丈夫だよ、俺にはルカとリカルドもいるし…あの時の何も出来なかった俺とは違うから」
トーマに守られてばかりだった俺は嫌だった、誰かを守る男になりたい。
そのためにこっそりと修行して、銃の扱いに慣れてきたんだ。
いつか、トーマの右腕として…トーマを守れるように…
自分の気持ちをトーマに伝えると、トーマは「怪我をしない事だけ考えてほしい」と俺の頬を撫でた。
あくまで学園行事だから生徒が死ぬ事はないが、怪我はするかもしれないとトーマはそれが心配だったようだ。
トーマには内緒だから、俺だって鍛えてるからと内心思いながら大丈夫だよと笑った。
それに俺だけじゃない、頼もしい仲間が二人もいるんだ…エルゼくんもそんな友達になりたい。
そう思っていたが、結局エルゼくんは実戦授業を欠席して、俺達は三人のグループで参加する事になった。
ルカの熱意は伝わらなかったようで、落ち込んでいた。
俺達がいるから大丈夫だってルカを二人で慰めていたら先生が実戦授業の話をしていた。
街外れの広い草原で行われる授業で、そこまで離れた場所ではないから街に流れ弾が行かないからあちこちで心配されていた。
万が一の事があっても街に被害は出ないように先生達が結界を張るから俺達は授業に集中しろと先生に言われた。
この授業は先生が魔法で作り出した幻獣と呼ばれる魔物を倒す事で合格となる。
倒し方は問わないが、逃げたりあらゆる理由で危険と判断されて授業を中断された場合は不合格になる。
実戦授業はグループ戦だから、全て連帯責任になる。
俺はトーマからもらった銃を持ち、戦う事にした。
先生が手を上げると、先生の横に大きな魔法陣が出現して幻獣が現れた。
「では、最初のグループから……始め!!」
どんどんグループが参加していき、合格したり不合格になったりしていた。
三グループずつだからすぐに俺達の出番になり、武器を構えると先生が手を上げた。
緊張する…心臓が一秒一秒うるさく鳴り響く。
俺達の前に現れたのは虎のような姿の魔物だった。
魔物が大きく雄叫びを上げると、地面がピリピリと揺れた。
すぐに治まると思ったが、なにか違和感を感じた。
これは、魔物の雄叫びだけの地震じゃない気がする。
俺が立ち止まっていると、ルカとリカルドは不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?早くやらないの?」
「…う、ん」
俺が一歩動き出そうとしたら、何処からか歌が聞こえた。
綺麗な声だ、でも…不思議とずっと聞いていたくない声のように思えた。
耳に残る、スッキリしない嫌な気分が残る声だ。
今は授業に集中しようと思って、再び銃を構えると他のグループの人達から悲鳴が聞こえた。
そちらを見ると、幻獣の目が赤く光り暴れ回っていた。
先生は慌てて、幻獣を押さえつけようと魔法を使うが幻獣は生徒達に牙を向けた。
もう一つのグループの幻獣も襲いかかってきて、パニックを起こしていた。
俺達のところの幻獣も目の色を変えて、鋭い爪で襲ってきてリカルドが剣で受け止めた。
凶暴さが増して、力も強くなっているように感じる。
押され気味になっていて、リカルド一人では身動きが取れなくなる。
「なっ、んだコイツ…重いっ」
「リカルド!!」
「応戦するよ!!」
俺とルカは武器を構えて、リカルドを助けようと魔物に向かって走った。
ルカが剣で切りつけて、その傷口に俺が銃を当てると頭の中で作戦を考える。
そう思っていたら、ルカの剣は魔物に当たる事なくリカルドと一緒に投げ飛ばされた。
体がぶつかり、地面に叩きつけられた二人に向かって駆け寄る。
痛みで動けないのか、顔を歪ませていて…俺は魔物に向かって銃を放った。
その銃は貫通して、魔物が跡形もなく消えていく。
二人に魔物が気を取られていたから倒せたが、一人だったらどうする事も出来なかった。
早く二人を医者に見せないと…と思っていたら、突然大きな音と共に突風が吹いた。
なにが起きたのか、一瞬だけ分からなくなった。
王都がある場所の空が赤い……いろんな叫び声が王都から聞こえる。
魔物が王都内に潜入したのかと思ったが、それは教師が必死に食い止めているからその心配はしなくてよさそうだ。
だとしたら、別の理由で王都に異変が起きているという事になる。
その光景は、まるで…地獄を見ているかのようだ。
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