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第2章
5 旅行は移動も楽しむもの、でも流石に長過ぎるのは嫌だと思う
しおりを挟むヴァールブルク王国。
学院がある王都ハイブルクを正面から見て頭とした時、右足の辺り。
そこがカールの地元、王国南西に位置する都市群ルルハ地方である。
豊かな自然と2つの国境を持つ地だ。
政治的には重要な軍事拠点の1つで、ヴュステマン辺境伯の擁する鷲獅子騎士団と金鹿騎士団が屈強として有名だ。
ハイブルクから竜車に乗って5日ほど。
移動間に立ち寄った街でも軽く観光などしたがここでは割愛する。
「いやーやっぱり早いなあ」
カールが窓の外を見ながらつぶやく。
馬車に比べればそうだろう。
この国で都市間を移動しようと思ったら、一般的には徒歩か馬車が基本になる。
徒歩での移動速度が比べるべくもないのは良いとして、ここでいう馬車は乗り合い馬車になる。
最速最短で目的地に到達するわけでもない。
今回に関しては、我が家の竜車で最短ルートを通ってきた。
まあ、間に観光を挟んだりしているのでそれでも最速ではないわけだが。
ともあれそうしてようやくボク達はルルハに到着したわけである。
地方の名を関する都市ルルハは盛況であった
2つの隣国からの輸入品が一手に集まる交易都市であることを知識としては知っていても、こうして目の当たりにすると実感が湧く。
人種も言語も様々でどこか猥雑さを感じるものの、それこそがこの街の魅力となっている。
「それで、まずはカールのご家族にご挨拶させてもらうということで良いよね?」
「まあ、別にご挨拶なんて大層な家族でもないけどな」
「そういうわけにもいくまい」
カールの実家のカペル家は代々騎士の家系で、現当主は鷲獅子騎士団長であるカスパル殿だったと記憶している。
十分大層な人物であるし、相手如何に関わらず長期で宿泊させてもらう友人家族に挨拶するのは当然であろう。
「そうよ、あんたそんなんだから礼儀の授業が落第寸前なんじゃない」
「あー聞きたくない」
ディアナの容赦のないツッコミにカールが耳を塞ぐ。
そうして益体もない話をしている内に竜車が止まる。
「お、着いた着いた」
どこかホッとしたようにカールが言うとおり、到着したようだ。
ここは街の中でも上流階級が居を構えるエリアで、カペル邸もそれに見合った立派な屋敷だ。
竜車が再び動き出し、門を抜け車止めに止まったところでドアが開かれる。
それぞれが降りたところで待ち構えていた紳士に声をかけられる。
「ようこそ諸君。私はカペル家当主カスパル・カペル。愚息が世話になっている」
年の頃は40前後といったところで、相当に鍛えられた体格を持つ偉丈夫といった風情と、立派な髭をいじりつつもこちらを観察するような瞳の中に稚気を宿した不思議な雰囲気をもつ御仁だ。
高名な騎士団の長ともなれば、凡人では務まらないのかもしれない。
カスパル殿の挨拶に対し、代表してボクが返礼する。
「はじめまして、ボクはアトリシア・グーテンベルクです。この度は我々の宿泊を快くお引き受けくださり、誠にありがとうございます。皆を代表しお礼申し上げます」
そんなボクの姿を一瞥した後、屋敷を示すカスパル殿。
「礼については屋敷の中で話を聞いてもらってからにしようか」
やはり一筋縄ではいかない人物であるようだ。
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