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63.どこまでが公式になりますか?

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「ん、んん」

 腰をしっかりと抱かれ、股間同士が何度もぶつかっている。頭は後頭部からしっかりとホールドされているため、動かしようがないため逃げられなかった。「俺も初めてが欲しい」なんてちょっとかわいらしい我儘だなんて思ったら、そんなことはどこにもなかった。今現在、食いつくされそうな勢いでキスをされている。

「貴文さん。好きです。大好きです」

 唇が離れた瞬間義隆が囁く。

「う、うん」

 鼻で息をすればいい。なんて高等技術、話には聞いているが、実際できるかどうかなんてわかったものではない。貴文は今現在肩で息をするほど酸欠状態になっていた。

「貴文さん、教えてくだい。この後ここでは何をするんですか?」

 コンドームの付け方まで教わっておいて、義隆はそんなことを貴文に聞いてきた。ついさっき貴文を射精させて、それを眺めながらとんでもないことを口走ったことはもう忘れたようだ。

「だから、ラブホは、愛を確かめ合う場所だから」

 貴文が答えると、義隆は嬉しそうに笑った。

「じゃあ、俺と貴文さんも愛を確かめ合いましょう?」
「むりだよ、義隆くん。俺、ベータなんだから、さぁ」

 貴文がそんなことを口にすれば、義隆は悲しそうな子犬見たいな目をして貴文を見る。

「これ使ってほぐしてあげます。ね?貴文さん。貴文さんだけずるいですよ。俺だけ何も知らなくて、貴文さんだけ経験してて、俺に最後まで教えてください」

 ぬるっとした感覚があって、そのあと出口であるべき箇所をほぐすようにまさぐられた。軽く押されるたびに下腹に力が入っていたけれど、だんだんと力が抜けてゆき、ふとした瞬間に胎内にすんなりと入り込んできた。入り口辺りをゆっくりと円を描くように動かし、ゆっくりゆっくりと奥に進んでくるのは義隆の指だ。奇妙な異物感に貴文の体が小刻みに震えていた。

「貴文さんの胎内温かいです。教えてください。この後どうするんですか?」

 義隆が潤んだ目で見つめながら聞いてくるから、貴文は応じなくてはならないという奇妙な義務感で動き出した。

「俺が、教えてあげるから……ちゃんと、準備するから」

 貴文がボトルの中の残りのローションを自分の手のひらに出し、自分の尻をまさぐりだした。膝立ちをして、腰を浮かせて行為をする姿はどこか淫靡だ。

「教えるって、約束だから、ね。ちゃんと最後まで、教えるから。アルファ用のゴムがないけど、俺ベータだから妊娠は、しないから……でも、感染症が怖いから、奥までローションで綺麗にする、から」

 貴文の指が根元まで入っているのが見えた。そうしてぐちゅぐちゅという音が聞こえれば自然と義隆の喉が鳴った。

「もうちょっと待って、て。義隆くんのおっきいから、ほぐさないと」

 懸命に指を動かしているせいか、貴文の息遣いが荒くなってきた。そうして貴文はいったん手を止めて、上の下着を自ら脱いだ。

「女の子のつけてるブラなら後ろにホックが付いてるから、キスとかしながら外せると思うんだ」

 義隆の目の前に貴文の胸がさらけ出された。ベータ男子らしく少し筋肉のついたしっかりとした体つきをしている。しいて言えば肌の色がだいぶ白い。恥ずかしそうに少し俯いているから、伏目がちになっていて、目の下の辺りに薄いそばかすが見える。そして頬が上気してほんのりと赤くなっていた。

「女の子なら、優しく胸を触ってあげるといいんだよ」

 そんなことを言って貴文は義隆の手を取り自分の胸に導いた。

「俺はベータで男だからふくらみがなくてあれだけど、優しくもんであげて。皮膚が薄くて敏感な場所だから、強く触られると痛いんだ。男でも乳腺があるから、刺激されると反応するんだよ」

 そんな誘い文句を言われたら、言われたとおりにするしかないわけで、義隆は手のひらに触れた貴文の胸をゆっくりともみだした。

「あ、のね。その、皮膚の色が違うでしょ?乳首と唇って、だから敏感なんだよ。守るために色素が付いてるとも言われてるし、視力の弱い赤ちゃんが見つけやすいようにってもいわれてるけどね」

 そんな説明をしながらでも、貴文の腰は小刻みに揺れていた。義隆を向かい入れるために懸命に自分でほぐし続けているのだ。だが、貴文の腹の奥に眠るオメガの子宮が目覚めれば、分泌液が出され、自然と弛緩してアルファを迎え入れることが可能になる。義隆がほんの少しアルファのフェロモンを貴文に浴びせさえすればいいことなのに、目の前で懸命に自分を迎え入れようと準備する貴文のけなげな姿が可愛すぎて、義隆はあえて見ていることにしたのだ。

「あっ」

 ゆっくりと胸を揉んでいた手を、すっと中央に指を寄せ、その真ん中にあった小さな尖りを摘まんでみた。貴文の言ったとおり、だいぶ敏感な箇所なことははっきりとわかった。

「貴文さんの乳首はつつましやかでかわいらしいですね。こうやって、引っ張り続けたら大きくなりますか?」
「え?そ、そんなのわかんないよ」
「じゃあ、試してみましょう?ね?」

 義隆はそんなことを言って貴文の乳首を指先で転がし始めた。貴文の白い肌において、そこの二か所だけが茶色がかった淡いピンク色をしていた。義隆は両手を使って転がし始めた。

「片方だけ大きくなったらかわいそうなので、両方しましょうね。貴文さん」

 ほぐすことに必死になっていた貴文は、そんなことを言われ驚いて顔を上げた。その瞬間を逃さず義隆が唇を重ねてきた。本日二度目の濃厚なキスだ。義隆の舌が貴文の口内に入り込み、エナメル質の歯列をゆっくりとなぞる。行き止まりにたどり着けば、今度は歯の隙間から内側をなぞり、上あごの裏をつつくようにねっとりと舐め上げた。そんなことをされれば、貴文の口は閉じることを忘れ、くちの端からよだれが垂れていく。

「んあ、あ……も、三本、入ったか、ら。続き、し、よ」

 空いている左手で何とか義隆の肩を掴んで口を離した貴文が必死に口を開いた。ほんのりと色づいた舌からも、よだれの糸が引いていた。もちろんつながっていた先は義隆の舌だ。

「この体勢だと、義隆くん、見えないから……お願い、寝て?」

 いくら教えると言ったからとはいえ、貴文がずいぶんと大胆になっていた。二度目のキスで義隆の、アルファのフェロモンを飲み込んだからだろう。貴文の腹の中で眠っていたオメガの子宮が目覚め始めたのかもしれない。その証拠に貴文の尻からローション以上の液体が零れ落ちてきていた。もちろん貴文自身には見えていないので、気が付いてなどいなかった。

「わかり、ました」

 言われて義隆は背中をベッドに預けた。だが、何かあったらすぐに貴文の体を支えられるように両手は腰のあたりに置いておいた。

「ここに、ね。入れるんだよ。女の子だったらここにもう一つ穴があるんだけど、俺は男だから一つしかないよ」

 そう言って貴文は左手で義隆のモノを掴み、右手で入り口を広げるように指を使った。貴文自身は手元などろくに見えてはいないだろうが、寝ている義隆には恐ろしいほどよく見えた。滴る分泌液で濡れたそこは、見事に赤く熟していた。そこを貴文の細い指が広げている。半立ちした貴文のモノからは透明な液体が先端からこぼれているのだ。そんな卑猥なものを見せつけられれば、まだ若いオメガを知らないアルファである義隆の分身はさらなる誇張をしめしてしまう。

「義隆くん、おっきくなっちゃだめだよぉ」

 狙いを定めたところで、手にしていた義隆の分身が膨張したため、貴文がそんな泣き言を口にしてしまった。

「俺だって初めてなんだからぁ、困らせないでよ」

 必死な顔で上から訴えられれば、義隆だって我慢などできなかった。
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