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24.コレがアルファ様の結論かぁ
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「へ?」
突然のことに驚く貴文をよそに、義隆はさっさと準備を進めていく。まずは貴文に膝にブランケットをかけ、それからアイマスクを取り出した。
「パソコン操作で目が疲れますよね?これで癒しましょう」
貴文が理解する前にアイマスクをかけてきた。じんわりと温かいものが貴文の目の周りを優しく包み込む。
「はぁぁ」
思わずおっさん臭い声が出てしまったのは仕方がないことだろう。だって29歳だ。三十路一歩手前のアラサーなのだ。
「シート、熱かったりしませんか?」
耳元で義隆の声がした。言われて考える。そういえば、座った瞬間嫌な感じがしなかった。高級感溢れるシートだったから、ドキドキしながら腰掛けたのだ。だが、以外にも座り心地がよくふんわりと包み込まれるような座り心地だった。
「いや、全然。凄く気持ちいい、です」
こんな座り心地のいいシートに座ったのは初めてだった。いつも乗せてもらう姉の車は軽自動車で、シートはベンチシートだ。いい歳をして助手席に座ると肩がぶつかりそうでなんだか気恥しくなる。父親の車はミニバンだ。10年以上乗っている。買い出しに便利だからと乗り続けているが、後部座席は貴文たちが乱暴に乗っていたから座り心地はかなり悪い。母親も姉と同じく軽自動で、とにかく小さくて狭い。電車通勤をしている貴文は車を持っていないという訳だ。
そんなわけで、貴文にはシートが個別に分かれているということが既に衝撃的だった。しかもシートが暖かくなるなんて驚きだ。冬は車がなかなか温まらないと姉がボヤいていたのを思い出した。
「良かった。熱くなったら言ってくださいね。温度を下げますから」
温度調整までできると知って、貴文はますます驚いた。乗ったことは無いがまるで飛行機のファーストクラスみたいだと思ったのだった。
「気持ちいい」
側頭部を大きな手に包み込まれてやさしく揉まれた。偏頭痛持ちでは無いけれど、そんなところも凝るものなのだと初めて知った。
「ゆっくり揉みほぐしていきますから、眠くなったら寝ちゃってください」
なんて贅沢な。と、思ったのもつかの間、貴文は安らかな寝息を立てていた。冬になると電車のシートが温かくなるから、座ったら絶対に寝過ごすと帰りはいつも立っている貴文である。全身が温かくなり、オマケにアイマスクまでつけてしまったら、それはもう寝るしかないのだ。
「寝ちゃいましたね。杉山さん」
義隆は貴文が眠ったのを確認すると、医師に言われた箇所を念入りにマッサージし始めた。まずは首の付け根から、まともに見てしまえば、噛みたくて方がないぐらい魅力的な項だ。そこを親指の腹でゆっくりと押し上げるようにして少しずつ下に下がっていく。オイルを使えば滑りはいいが、それでは貴文の私服を汚してしまう。
だから、アイマスクに染み込ませたオイルで嗅覚を刺激することにした。なんと言ってもアルファとオメガはお互いを香りで認識するのが常だ。義隆は自分のフェロモン近い香りを配合させて、オイルを用意した。まずはリラックスした状態で匂いに慣れてもらう作戦だ。
もちろんそれとなく義隆だってフェロモンをゆっくりと放つのを忘れない。医師が言うことが正しければ、貴文の中に眠るオメガは、義隆のアルファを感じ取ったはずなのだから。
「杉山さん、俺の事を感じてくださいね」
義隆は祈りながらマッサージをするのだった。
「へ?」
突然のことに驚く貴文をよそに、義隆はさっさと準備を進めていく。まずは貴文に膝にブランケットをかけ、それからアイマスクを取り出した。
「パソコン操作で目が疲れますよね?これで癒しましょう」
貴文が理解する前にアイマスクをかけてきた。じんわりと温かいものが貴文の目の周りを優しく包み込む。
「はぁぁ」
思わずおっさん臭い声が出てしまったのは仕方がないことだろう。だって29歳だ。三十路一歩手前のアラサーなのだ。
「シート、熱かったりしませんか?」
耳元で義隆の声がした。言われて考える。そういえば、座った瞬間嫌な感じがしなかった。高級感溢れるシートだったから、ドキドキしながら腰掛けたのだ。だが、以外にも座り心地がよくふんわりと包み込まれるような座り心地だった。
「いや、全然。凄く気持ちいい、です」
こんな座り心地のいいシートに座ったのは初めてだった。いつも乗せてもらう姉の車は軽自動車で、シートはベンチシートだ。いい歳をして助手席に座ると肩がぶつかりそうでなんだか気恥しくなる。父親の車はミニバンだ。10年以上乗っている。買い出しに便利だからと乗り続けているが、後部座席は貴文たちが乱暴に乗っていたから座り心地はかなり悪い。母親も姉と同じく軽自動で、とにかく小さくて狭い。電車通勤をしている貴文は車を持っていないという訳だ。
そんなわけで、貴文にはシートが個別に分かれているということが既に衝撃的だった。しかもシートが暖かくなるなんて驚きだ。冬は車がなかなか温まらないと姉がボヤいていたのを思い出した。
「良かった。熱くなったら言ってくださいね。温度を下げますから」
温度調整までできると知って、貴文はますます驚いた。乗ったことは無いがまるで飛行機のファーストクラスみたいだと思ったのだった。
「気持ちいい」
側頭部を大きな手に包み込まれてやさしく揉まれた。偏頭痛持ちでは無いけれど、そんなところも凝るものなのだと初めて知った。
「ゆっくり揉みほぐしていきますから、眠くなったら寝ちゃってください」
なんて贅沢な。と、思ったのもつかの間、貴文は安らかな寝息を立てていた。冬になると電車のシートが温かくなるから、座ったら絶対に寝過ごすと帰りはいつも立っている貴文である。全身が温かくなり、オマケにアイマスクまでつけてしまったら、それはもう寝るしかないのだ。
「寝ちゃいましたね。杉山さん」
義隆は貴文が眠ったのを確認すると、医師に言われた箇所を念入りにマッサージし始めた。まずは首の付け根から、まともに見てしまえば、噛みたくて方がないぐらい魅力的な項だ。そこを親指の腹でゆっくりと押し上げるようにして少しずつ下に下がっていく。オイルを使えば滑りはいいが、それでは貴文の私服を汚してしまう。
だから、アイマスクに染み込ませたオイルで嗅覚を刺激することにした。なんと言ってもアルファとオメガはお互いを香りで認識するのが常だ。義隆は自分のフェロモン近い香りを配合させて、オイルを用意した。まずはリラックスした状態で匂いに慣れてもらう作戦だ。
もちろんそれとなく義隆だってフェロモンをゆっくりと放つのを忘れない。医師が言うことが正しければ、貴文の中に眠るオメガは、義隆のアルファを感じ取ったはずなのだから。
「杉山さん、俺の事を感じてくださいね」
義隆は祈りながらマッサージをするのだった。
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