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2年生始まりました
第27話 正解とその答えと
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「はーい、今開けますね」
遠山がそう言って扉を開けると、そこには予想通りの人物が立っていた。
「いらっしゃい、二階堂くん」
名前を呼ばれて二階堂は少し驚いた顔をした。
「新入生代表挨拶をしたんだから、顔を知ってて当然だよね」
遠山が笑いながら言うので、二階堂は少し緊張を解いた。が、中にいる人物を見て直ぐに眉間に皺がよる。
「お前しか来ないと思ってた、風紀になったんだって?」
下総の膝の上から佐藤が声をかけると、二階堂は目を見開いて立ち止まった。
「な、なんなの?」
「見ての通り、歓談だ」
「そうじゃなくて」
二階堂はしばらく黙って部屋の中にいる人たちを見渡したが、誰も何も言わないので受け入れることにした。
「これで、どうでしょう?」
訳ししたノートを佐藤に見せる。佐藤は下総の膝の上に座ったままそのノートを見た。
学ランの胸ポケットから用紙を取り出して、二階堂のノートと見比べる。後ろにいる下総にも見せていた。暗にお前も確認しろと言われていることを、下総は理解した。
「なかなかのヒアリング能力だな……訳し方も演説になってて、なかなかいい」
佐藤は至極ご満悦な表情をした。こんな顔、滅多にするものではないから、藤崇がスマホを取り出して連写を始めた。
「ふじくん、何してんの?」
目線だけで佐藤が牽制するも、藤崇は涼しい顔で楽しそうにスマホを向けたままだ。
「いい顔してたから、ね。それと愛人くんとの記念写真」
「愛人?」
そこだけ拾って二階堂が呟く。
「そうなんだ、俺、公認の佐藤くんの愛人」
下総が嬉しそうに言うものだから、二階堂はゆっくりと下総を見て、藤崇を見たあとに佐藤に目線を戻した。
「残酷な現実を伝えると、その人が俺の旦那でこの学園の卒業生で元風紀委員長」
それを聞いて二階堂はもう一度藤崇を見て、何故か元会長である兄を見た。
「最悪」
小声だったけど、しっかり聞こえたそのつぶやきに神山が爆笑した。
「いいね、弟くん素直で」
隣に座る元会長はだいぶ不機嫌そうな顔になった。
「風紀委員の方がそっちの知識を持ってないと対処出来ないよ」
藤崇がやんわりと告げると、二階堂は一瞬泣きそうな顔をして、直ぐに戻った。
「新歓の説明と注意事項を聞いていたんだろう?嫌なら後処理をしなくて済むように、同級生を守ってやるんだな」
元会長でもある兄に言われて、二階堂の肩が小さく跳ねた。
「新歓は、風紀の一年が一番狙われるよ」
下総がノートを二階堂に返した。二階堂が書き込んだ下によく出来ました。と赤ペンで書き込まれている。
佐藤が膝から降りて、パソコン机に置かれたノートの束を持ってきた。
「俺が去年作ったテスト対策まとめノート」
全教科あるだけに、なかなかの厚みだ。
「明李、その紙袋くれよ」
言われて相葉が、神山の持ってきた菓子折が入っていた紙袋を持ってくる。
「お菓子、オマケね」
佐藤がノート入れた上に、相葉がお菓子を一つ乗せた。
「S組は去年と教師が同じだから、これで問題ないはずだ」
「教師が同じ?」
「知らないのか?この学園の教師は学年固定されてるだろう?」
佐藤が意外そうな声を出すと、相葉以外が首を横に振っていた。
「俺らみたいに小等部から居ないとわかんないみたいだね」
相葉が笑いながら言うと、佐藤も笑った。
「エスカレーターだから、担任が成績とか生活態度を気にしてないんだよ」
とは言っても、この学園しか知らなければ外の学校の事情など分かるはずもない。
「俺はあのヤリチンみたいなマネはしなから安心しろよ。ただ、風紀には貸しがあるからデカい態度とるけどな」
また貶されて元会長の、眉間に皺がよる。
「やだなぁ、佐藤くん。元会長の二階堂くんは風紀は乱してなかったよ」
神山がフォローを入れると、佐藤が軽く笑った。
「ああ、そうだった。ちゃんと部屋に連れ込んで防水シーツも使ってたもんな」
「防水シーツ?」
二階堂が聞き返す。
「お前さぁ、自分の出したヤツ、シーツだけで受け止めきれんの?」
佐藤が真面目な顔で聞くけれど、内容はエグい。ハッキリとは言わなかったけれど、風紀なら分かるだろう。という言い方だ。
「えっ?ええ?」
二階堂は狼狽えて、何故か自分の兄を見た。こんなタイミングで頼られても困る。
「…洗濯機ぐらいまわせるからな、俺は」
返答がこれだ。
「案外マメだよな。だからモテたのか」
佐藤はそう言いながら藤崇を見る。目が合うと藤崇はニヤリと笑った。
「同意じゃなかった連れ込みが発覚した時は、俺か榊原がロック解除するから」
「聞きました」
「新歓の合同打ち合わせがあるから、またそんときな」
そう言って、佐藤は二階堂の隣に立って、まじまじと見つめた。
「お前、背ぇ伸びたな」
「え?なに?」
理不尽に睨みつけられて、二階堂が慌てると、下総が笑いながら教えてくれた。
「佐藤くんはね、身長気にしてるの」
「うるせぇ、俺だって大きくなったよ」
「うん、170センチになってるといいね」
「お前、やっぱりバカにしてるだろ」
上からきた下総の手を払い除けて、佐藤か吠えた。
「だって俺、佐藤くんに勝ってるの身長だけだし」
「ムカつく、愛人のくせに」
「愛人……」
「深い意味は無いから」
二階堂のつぶやきに相葉が突っ込む。
「会長と副会長が仲が良くていいだろう?」
佐藤がそう言うと、二階堂は素直に頷いた。
「文彦もたまには俺の部屋に泊まりに来いよ、お前の兄貴にベッド貰ってるから」
そう言って佐藤が笑ったので、二階堂はそこで気がついた。
「だから防水シーツ…」
そのつぶやきを聞いて、神山が盛大に笑った。
遠山がそう言って扉を開けると、そこには予想通りの人物が立っていた。
「いらっしゃい、二階堂くん」
名前を呼ばれて二階堂は少し驚いた顔をした。
「新入生代表挨拶をしたんだから、顔を知ってて当然だよね」
遠山が笑いながら言うので、二階堂は少し緊張を解いた。が、中にいる人物を見て直ぐに眉間に皺がよる。
「お前しか来ないと思ってた、風紀になったんだって?」
下総の膝の上から佐藤が声をかけると、二階堂は目を見開いて立ち止まった。
「な、なんなの?」
「見ての通り、歓談だ」
「そうじゃなくて」
二階堂はしばらく黙って部屋の中にいる人たちを見渡したが、誰も何も言わないので受け入れることにした。
「これで、どうでしょう?」
訳ししたノートを佐藤に見せる。佐藤は下総の膝の上に座ったままそのノートを見た。
学ランの胸ポケットから用紙を取り出して、二階堂のノートと見比べる。後ろにいる下総にも見せていた。暗にお前も確認しろと言われていることを、下総は理解した。
「なかなかのヒアリング能力だな……訳し方も演説になってて、なかなかいい」
佐藤は至極ご満悦な表情をした。こんな顔、滅多にするものではないから、藤崇がスマホを取り出して連写を始めた。
「ふじくん、何してんの?」
目線だけで佐藤が牽制するも、藤崇は涼しい顔で楽しそうにスマホを向けたままだ。
「いい顔してたから、ね。それと愛人くんとの記念写真」
「愛人?」
そこだけ拾って二階堂が呟く。
「そうなんだ、俺、公認の佐藤くんの愛人」
下総が嬉しそうに言うものだから、二階堂はゆっくりと下総を見て、藤崇を見たあとに佐藤に目線を戻した。
「残酷な現実を伝えると、その人が俺の旦那でこの学園の卒業生で元風紀委員長」
それを聞いて二階堂はもう一度藤崇を見て、何故か元会長である兄を見た。
「最悪」
小声だったけど、しっかり聞こえたそのつぶやきに神山が爆笑した。
「いいね、弟くん素直で」
隣に座る元会長はだいぶ不機嫌そうな顔になった。
「風紀委員の方がそっちの知識を持ってないと対処出来ないよ」
藤崇がやんわりと告げると、二階堂は一瞬泣きそうな顔をして、直ぐに戻った。
「新歓の説明と注意事項を聞いていたんだろう?嫌なら後処理をしなくて済むように、同級生を守ってやるんだな」
元会長でもある兄に言われて、二階堂の肩が小さく跳ねた。
「新歓は、風紀の一年が一番狙われるよ」
下総がノートを二階堂に返した。二階堂が書き込んだ下によく出来ました。と赤ペンで書き込まれている。
佐藤が膝から降りて、パソコン机に置かれたノートの束を持ってきた。
「俺が去年作ったテスト対策まとめノート」
全教科あるだけに、なかなかの厚みだ。
「明李、その紙袋くれよ」
言われて相葉が、神山の持ってきた菓子折が入っていた紙袋を持ってくる。
「お菓子、オマケね」
佐藤がノート入れた上に、相葉がお菓子を一つ乗せた。
「S組は去年と教師が同じだから、これで問題ないはずだ」
「教師が同じ?」
「知らないのか?この学園の教師は学年固定されてるだろう?」
佐藤が意外そうな声を出すと、相葉以外が首を横に振っていた。
「俺らみたいに小等部から居ないとわかんないみたいだね」
相葉が笑いながら言うと、佐藤も笑った。
「エスカレーターだから、担任が成績とか生活態度を気にしてないんだよ」
とは言っても、この学園しか知らなければ外の学校の事情など分かるはずもない。
「俺はあのヤリチンみたいなマネはしなから安心しろよ。ただ、風紀には貸しがあるからデカい態度とるけどな」
また貶されて元会長の、眉間に皺がよる。
「やだなぁ、佐藤くん。元会長の二階堂くんは風紀は乱してなかったよ」
神山がフォローを入れると、佐藤が軽く笑った。
「ああ、そうだった。ちゃんと部屋に連れ込んで防水シーツも使ってたもんな」
「防水シーツ?」
二階堂が聞き返す。
「お前さぁ、自分の出したヤツ、シーツだけで受け止めきれんの?」
佐藤が真面目な顔で聞くけれど、内容はエグい。ハッキリとは言わなかったけれど、風紀なら分かるだろう。という言い方だ。
「えっ?ええ?」
二階堂は狼狽えて、何故か自分の兄を見た。こんなタイミングで頼られても困る。
「…洗濯機ぐらいまわせるからな、俺は」
返答がこれだ。
「案外マメだよな。だからモテたのか」
佐藤はそう言いながら藤崇を見る。目が合うと藤崇はニヤリと笑った。
「同意じゃなかった連れ込みが発覚した時は、俺か榊原がロック解除するから」
「聞きました」
「新歓の合同打ち合わせがあるから、またそんときな」
そう言って、佐藤は二階堂の隣に立って、まじまじと見つめた。
「お前、背ぇ伸びたな」
「え?なに?」
理不尽に睨みつけられて、二階堂が慌てると、下総が笑いながら教えてくれた。
「佐藤くんはね、身長気にしてるの」
「うるせぇ、俺だって大きくなったよ」
「うん、170センチになってるといいね」
「お前、やっぱりバカにしてるだろ」
上からきた下総の手を払い除けて、佐藤か吠えた。
「だって俺、佐藤くんに勝ってるの身長だけだし」
「ムカつく、愛人のくせに」
「愛人……」
「深い意味は無いから」
二階堂のつぶやきに相葉が突っ込む。
「会長と副会長が仲が良くていいだろう?」
佐藤がそう言うと、二階堂は素直に頷いた。
「文彦もたまには俺の部屋に泊まりに来いよ、お前の兄貴にベッド貰ってるから」
そう言って佐藤が笑ったので、二階堂はそこで気がついた。
「だから防水シーツ…」
そのつぶやきを聞いて、神山が盛大に笑った。
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