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傲岸不遜なキンピカ見学者
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わたしはギギギと錆びついたブリキ人形みたいに、マルス先生の隣を見た。マルス先生もぎょっとして横を見て、分かりやすく飛び上がった。
「ほわああああッ!!??だ、誰だおまえは!!」
「誰とは失礼な!私は入学希望の見学者だぞ!書類だってさっき提出してきた!」
(キンピカマントさんッ!!!???)
ほらほら!と言いながら、マルス先生の顔面に見学者バッチを押し付けるキンピカマントさん。気の毒なマルス先生は必死の形相でそれを振り払う。「ええい!やめろ!」
突然の闖入者に、周囲は目をこすり口々に声を上げる。
「え、いつの間に」「さっきいた?」「だれなの?学生?」「見学者だって」
そして、ため息交じりの乙女たち。「なんだか、ちょっと」「素敵ね……」
目の肥えた学術院の乙女たちでも、思わず目を奪われる。
鮮やかな金髪に、金の瞳、凛々しく整った容貌。それに背が高くて、マントを着ていても均整がとれた体型だと分かる。クラージュ殿下たちが美しくカットされた色とりどりの宝石なら、彼はでっかい金塊だ。この圧倒的な存在感はとにかく目立つ。
(こんなに目立つのに、どうしてそばに来るまで分からなかったんだろう!?いや今はそんな場合じゃない!わけわかんない人だし他人のふりを……!)
「やあ!さっきぶりだな、ライラ!」
本当に彼の声はめちゃくちゃよく通る。
「ライラの好きそうなアリ塚を見つけたから、あとで観察にいこうな!!」
「アリ……?」「今アリって言った?」「アリ塚?」「というか呼びすて?」
わたしは顔を覆った。その場に崩れ落ちそうなのをなんとか耐える。
他人のふり失敗だ。
相変わらず行動の読めないキンピカさんは、颯爽とこちらに歩み寄り、わたしの肩をガシッと掴んだ。外野から「キャア」とかなんとか悲鳴があがったが気のせいだと思いたい。
「ところで!さっきの火の魔法だが、もう一度挑戦してみないか?マルマル先生だって、ちゃんと成功させたいだろうしな!」
「マルスだ!わしは別に才能のない者がどうなろうとかまわ――」
「分かってないようだが、これは実技の授業だぞ」と、キンピカさんは自分より背の低いマルス先生を見下ろした。
小さな子供に言い聞かせるように、柔らかい口調で続ける。
「『できなかったからハイおしまい』では、学術院が高い講義料を払って来てもらってる意味がない。【象牙の杖】の無能さを晒すだけだ。そもそも年齢も性別も魔力も加護もバラバラな者をまとめて面倒みるというのは、いささか雑すぎやしないか。しかもたった月に2回程度。そのときに魔力のめぐりが悪い者もいれば、環境要因で精霊が寄り付きにくい日もある。職業魔法使ならともかく、学びの段階でそういった配慮も皆無とは指導力だけでなく想像力もないのかな」
とてもアリの話をしていた人と同一人物とは思えない。
キンピカさんは輝くような笑顔のままだ。
食って掛かろうとしていたマルス先生の顔が赤から青へ、それから血の気が引き、白くなっていく。キンピカさんは批判的なことを口にしているが、口調は淡々としているし笑ったまま。なのに、先生は恐怖しているような表情だった。
「私の話は間違っているだろうか、【象牙の杖】シュレヒルト・マルス教授」
「ほわああああッ!!??だ、誰だおまえは!!」
「誰とは失礼な!私は入学希望の見学者だぞ!書類だってさっき提出してきた!」
(キンピカマントさんッ!!!???)
ほらほら!と言いながら、マルス先生の顔面に見学者バッチを押し付けるキンピカマントさん。気の毒なマルス先生は必死の形相でそれを振り払う。「ええい!やめろ!」
突然の闖入者に、周囲は目をこすり口々に声を上げる。
「え、いつの間に」「さっきいた?」「だれなの?学生?」「見学者だって」
そして、ため息交じりの乙女たち。「なんだか、ちょっと」「素敵ね……」
目の肥えた学術院の乙女たちでも、思わず目を奪われる。
鮮やかな金髪に、金の瞳、凛々しく整った容貌。それに背が高くて、マントを着ていても均整がとれた体型だと分かる。クラージュ殿下たちが美しくカットされた色とりどりの宝石なら、彼はでっかい金塊だ。この圧倒的な存在感はとにかく目立つ。
(こんなに目立つのに、どうしてそばに来るまで分からなかったんだろう!?いや今はそんな場合じゃない!わけわかんない人だし他人のふりを……!)
「やあ!さっきぶりだな、ライラ!」
本当に彼の声はめちゃくちゃよく通る。
「ライラの好きそうなアリ塚を見つけたから、あとで観察にいこうな!!」
「アリ……?」「今アリって言った?」「アリ塚?」「というか呼びすて?」
わたしは顔を覆った。その場に崩れ落ちそうなのをなんとか耐える。
他人のふり失敗だ。
相変わらず行動の読めないキンピカさんは、颯爽とこちらに歩み寄り、わたしの肩をガシッと掴んだ。外野から「キャア」とかなんとか悲鳴があがったが気のせいだと思いたい。
「ところで!さっきの火の魔法だが、もう一度挑戦してみないか?マルマル先生だって、ちゃんと成功させたいだろうしな!」
「マルスだ!わしは別に才能のない者がどうなろうとかまわ――」
「分かってないようだが、これは実技の授業だぞ」と、キンピカさんは自分より背の低いマルス先生を見下ろした。
小さな子供に言い聞かせるように、柔らかい口調で続ける。
「『できなかったからハイおしまい』では、学術院が高い講義料を払って来てもらってる意味がない。【象牙の杖】の無能さを晒すだけだ。そもそも年齢も性別も魔力も加護もバラバラな者をまとめて面倒みるというのは、いささか雑すぎやしないか。しかもたった月に2回程度。そのときに魔力のめぐりが悪い者もいれば、環境要因で精霊が寄り付きにくい日もある。職業魔法使ならともかく、学びの段階でそういった配慮も皆無とは指導力だけでなく想像力もないのかな」
とてもアリの話をしていた人と同一人物とは思えない。
キンピカさんは輝くような笑顔のままだ。
食って掛かろうとしていたマルス先生の顔が赤から青へ、それから血の気が引き、白くなっていく。キンピカさんは批判的なことを口にしているが、口調は淡々としているし笑ったまま。なのに、先生は恐怖しているような表情だった。
「私の話は間違っているだろうか、【象牙の杖】シュレヒルト・マルス教授」
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