上 下
49 / 55

友神からの着信

しおりを挟む
………


「ふがっ!?」

ガクンッと身体が揺れて、ディアマンティアナは目を覚ました。

水盤から鈴の音が聞こえてくる。着信だ。

「あう……寝てたぁ……頭イタ……」

目をこすりながら、水盤を映像通話モードに切り替える。

『ディア~!!聞いてよ、またファンミの抽選落ちたッ!!』

幸運と財産の女神アレアフォルトナが、画面いっぱいに現れた。

ディアマンティアナは首を傾げた。

「……?なんか、前もそんな話してなかったっけ?」

『前も落ちたのッ!おかしいよ絶対!だって「また最前列です!」ってプイートしてる神もいるんだよ!?ずるくない!?嬉しいのは分かるけど、そーゆーこと書き込むのってどー思う!?落選者に配慮すべきじゃない!?』

ひとしきり愚痴を言い終わり、昔からの友神は缶ビールを飲み干した。まだ真昼間なのに。

ぷはーッ!と一息ついたアレアフォルトナは、そこでようやくディアマンティアナの様子に気付いた。

『……なんか今日凹んでる?元気ないじゃん』

途端に悲しみが込み上げ、うるるっと涙ぐむ。ディアマンティアナはティッシュでおもいきり鼻をかんだ。

『花粉症?しんどい?電話切ろうか?』

「ううん。よかったら聞いて。実はさ……」

ディアマンティアナは、全部打ち明けた。

ホウキ星の予知夢を皮切りに、お気に入りの国を守りまくった結果、人間にバレて逃げ帰り、主神に怒られた挙句、必死にお手伝いを頑張っている間に、国は滅亡してしまった一部始終を。

『ワーオ』

処刑のあたりでちょっと引いていた友神は、全部聞き終えると真顔になった。

『まず、気になったんだけど……アンタってまだ信者10万人超えてないよね?』

「え?うん、まだ超えてない。もうあと一息なんだけど」

『じゃあ、その彗星の予知夢おかしくない?』

「どこが?」

『あのね、アタシは信者10万人いるし、銀の盾も持ってるから知ってるんだけど……信者10万人以下の神様って、他人の予知夢は見れないんだよ。しか見られないの』

10万人を越えれば、初めて他人の予知夢を見られるという。

『他に予知夢って見たことある?どんなのだった?』

「え、と……7段アイスクリームを全部ひっくり返す夢とか、太陽と月をぐるぐる追いかけてる近所の狼にかまれる夢とか、世界樹の根に足をひっかけておでこをぶつける夢とか……全部予知夢通りになった」

『ほらね、みんなアンタ自身が危なくなる夢でしょ』

ディアランドにホウキ星が落ちて穴ぼこになっちゃう夢は、自分の災いというよりは、ディアランドにとっての災いを表す夢だ。ディアマンティアナ自身は、ちょっと嫌な気分にはなるが、危険というほどではない。

「……よく分かんない。つまりどういうこと?」




『つまりね、アンタの予知夢って、まだ続いてるんじゃない?』



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。  わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。  ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。 「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」  元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。  貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。  なにがあったのでしょうか……?

このままだと身の危険を感じるので大人しい令嬢を演じるのをやめます!

夢見 歩
恋愛
「きゃあァァァァァァっ!!!!!」 自分の体が宙に浮くのと同時に、背後から大きな叫び声が聞こえた。 私は「なんで貴方が叫んでるのよ」と頭の中で考えながらも、身体が地面に近づいていくのを感じて衝撃に備えて目を瞑った。 覚悟はしていたものの衝撃はとても強くて息が詰まるような感覚に陥り、痛みに耐えきれず意識を失った。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ この物語は内気な婚約者を演じていた令嬢が苛烈な本性を現し、自分らしさを曝け出す成長を描いたものである。

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

処理中です...