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第4章
13 ミリオネア(13) -アレスside
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「全く、夜の海に飛び込むなんて何を考えてるんだ」
「ちょっと間違えたんだ」
カリーナが海に突き落とされた時、何も考えずに自分も海に飛び込んでいた。
それがどれだけ無謀な事かという事も、何の意味も無い事だという事も、冷静になればちゃんと分かっている。
おかげで何も出来ずみっともなく海から引き上げられ、部屋に戻って着替えているのだから、言い返す言葉も見当たらない。
カリーナと自分が海の中に落ちて、一瞬船上が大騒ぎになったようだが、結局、ヒューイがその場を収めてくれたらしい。
『大丈夫だよ、ここは僕たちの領域だからね』
そう言って周囲と何か話していたかと思うと、海の中からフワフワと何かに運ばれた二人が現れたのだから船に残った者達が驚いたのは言うまでも無く、これで後日、ヒューイが何者か説明を求められる事になるだろう。
当の本人は、気が付いているのか気にしていないのか、着替えが終わったアレスに文句を言い続けている。
「もう僕達の海域だと分かっているだろう? カリーナだけならともかく、キミを海の中から連れ出すのは大変だったと精霊達がブツブツ言っているよ」
「すまん」
「それでカリーナを突き落とした娘はどうするのさ」
「ミリオネアに着いたら他の船に頼んで、ロートアまで連れ帰って貰う」
「ミリオネアに残しても精霊達が見ているから大丈夫だと思うけど」
「カリーナの近くにいて欲しく無い」
「過保護だなぁ~」
「当たり前だろう。今回の様な事があったらどうするんだ!」
「そうかな、僕はカリーナに嫌な思いをさせたく無いだけに見えるけど」
「それは、、、仕方ないだろう」
「今回の事にカリーナは関係ないだろう? あの子が現実をしっかり見る事が出来なかっただけの話だよ」
「知っている」
「カリーナが罪悪感を持つ必要など無い」
「もちろんだ」
「カリーナだってその位分かっているさ」
「、、、それも分かっている」
「アレス、本当に分かっているのかい? 彼女はいつ迄も小さな女の子では無いよ」
「ヒューイ」
「それにキミ、ちょっと飲み過ぎだよ」
「問題ない」
眠れない日が続いているのだから仕方がない。
「キミらしく無いなぁ、ちゃんと現実を見ていないのはあの子だけでも無いのかな?」
そんな事は無い。
ここ数日、現実を見ているからこんな気分になっている。
彼女は若くこれからどんどん綺麗になって行くのに、自分は反対に歳を取っていくだけなのだ。
相応しい相手が居ないならともかく、そうで無いのならこんな事を考えている方が間違っている事には気が付いている。
甘い匂いがする。
ずっと欲しかったものだ。
柔らかく温かいものを腕に抱いて、ずっと欲しかったものを味わう。
唇を重ね、隙間から舌を差し入れ、身体を押さえつけ、もっと深く繋がりたいと言うように自身を押し付ける。
「アレス様?」
声が聞こえる? 誰の? っと思った時、自分が何をしていたのか気が付く。
一体何をしているんだ?
礼を言いに来たカリーナを無理矢理押さえつけて、自分は一体何をしているんだ!
「あの、、、」
怯えたようなカリーナの声が聞こえる。
「出て行ってくれ」
カリーナを危険にさらしただけで無く傷つけるなんて、許される事では無い。
「ちょっと間違えたんだ」
カリーナが海に突き落とされた時、何も考えずに自分も海に飛び込んでいた。
それがどれだけ無謀な事かという事も、何の意味も無い事だという事も、冷静になればちゃんと分かっている。
おかげで何も出来ずみっともなく海から引き上げられ、部屋に戻って着替えているのだから、言い返す言葉も見当たらない。
カリーナと自分が海の中に落ちて、一瞬船上が大騒ぎになったようだが、結局、ヒューイがその場を収めてくれたらしい。
『大丈夫だよ、ここは僕たちの領域だからね』
そう言って周囲と何か話していたかと思うと、海の中からフワフワと何かに運ばれた二人が現れたのだから船に残った者達が驚いたのは言うまでも無く、これで後日、ヒューイが何者か説明を求められる事になるだろう。
当の本人は、気が付いているのか気にしていないのか、着替えが終わったアレスに文句を言い続けている。
「もう僕達の海域だと分かっているだろう? カリーナだけならともかく、キミを海の中から連れ出すのは大変だったと精霊達がブツブツ言っているよ」
「すまん」
「それでカリーナを突き落とした娘はどうするのさ」
「ミリオネアに着いたら他の船に頼んで、ロートアまで連れ帰って貰う」
「ミリオネアに残しても精霊達が見ているから大丈夫だと思うけど」
「カリーナの近くにいて欲しく無い」
「過保護だなぁ~」
「当たり前だろう。今回の様な事があったらどうするんだ!」
「そうかな、僕はカリーナに嫌な思いをさせたく無いだけに見えるけど」
「それは、、、仕方ないだろう」
「今回の事にカリーナは関係ないだろう? あの子が現実をしっかり見る事が出来なかっただけの話だよ」
「知っている」
「カリーナが罪悪感を持つ必要など無い」
「もちろんだ」
「カリーナだってその位分かっているさ」
「、、、それも分かっている」
「アレス、本当に分かっているのかい? 彼女はいつ迄も小さな女の子では無いよ」
「ヒューイ」
「それにキミ、ちょっと飲み過ぎだよ」
「問題ない」
眠れない日が続いているのだから仕方がない。
「キミらしく無いなぁ、ちゃんと現実を見ていないのはあの子だけでも無いのかな?」
そんな事は無い。
ここ数日、現実を見ているからこんな気分になっている。
彼女は若くこれからどんどん綺麗になって行くのに、自分は反対に歳を取っていくだけなのだ。
相応しい相手が居ないならともかく、そうで無いのならこんな事を考えている方が間違っている事には気が付いている。
甘い匂いがする。
ずっと欲しかったものだ。
柔らかく温かいものを腕に抱いて、ずっと欲しかったものを味わう。
唇を重ね、隙間から舌を差し入れ、身体を押さえつけ、もっと深く繋がりたいと言うように自身を押し付ける。
「アレス様?」
声が聞こえる? 誰の? っと思った時、自分が何をしていたのか気が付く。
一体何をしているんだ?
礼を言いに来たカリーナを無理矢理押さえつけて、自分は一体何をしているんだ!
「あの、、、」
怯えたようなカリーナの声が聞こえる。
「出て行ってくれ」
カリーナを危険にさらしただけで無く傷つけるなんて、許される事では無い。
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