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第四章 ミリオネア
07 ヒューイ(1)
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「船の“精霊使い”がいるな」
「何もしないでよ」
「何かあっても、これ以上状況が悪くなることはないぞ」
「エルメニアに、帰る必要があるんだからね」
「嫌な奴ならサッサと帰って欲しいだろう?」
「単に嫌がらせをする人もいるさ」
***
「困っていない?」
“そう!”
“全然~”
「どうして?」
“子ども達が助けているから”
“楽しいよ!”
“みんな喜んでる”
周囲の精霊が我先にと答える。
ミリオネアで精霊の力が使えないという事は、火や水など本当に基本的なものが使えないので、生活する上で大変なはずだった。
それを夜は、灯りが無いならと暗くなればサッサと眠り、水が無くて水浴びが出来ないなら、外で子ども達と一緒になって水浴びをしていると言う。
それを面倒だとも思わず楽しんでいるようだと言われてしまうと、一体自分は何をしているのかと思えてしまう。
おまけにその様子を見て精霊達まで楽しくなっている様で、今では彼の周囲に沢山の精霊が集まっている。
ヒューイの言葉より、彼の願いを叶えたいと思っている精霊もいるようで、片時も離れず彼の様子を伺っている。
「なぜ彼の側に集まる」
“彼が楽しんでいるから!”
“面白い!”
こちらの世界にいる時は、本来見えない者達がヒューイには見えるので、瞳を開いているより閉じている方が都合がいい。
精霊達はヒューイの視界に入ろうと常に集まってくるので、こうして瞳を閉じていれば気配を感じ、声が聞こえてもそれほど鬱陶しいとは感じない。
その分、近づいてくる人に気が付かない場合もあるけれど、、、
「おい、誰と話をしてる」
彼がヒューイに近づきながら話しかけてくる。
「何の事です」
「話をしていただろ?」
「気のせいですよ」
「ふ~ん」
「貴方は、いつまでイビサにいるんですか?」
「気になるのか?」
「別に、、、」
「あと十日はここにいる事になるな」
「他の島に行かないのですか?」
「行って欲しいのか?」
「そうではありませんが、、、毎日、意味もなくぶらぶらするばかりで、退屈しているようだったから」
「へぇ」
彼がヒューイを見て、とても楽しそうに笑う。
「なんです」
「誰に聞いた」
「何の話です」
「俺が、毎日ぶらぶらしてるって事をさ」
「見ていれば分かりますよ」
「だがお前は、俺達が船を下りてから島にいなかっただろ?」
「、、、いましたよ」
「いや、いなかったさ」
「何を根拠に、、、」
「一度会った事がある人間なら、オルがこの島のどこにいたって探せないはずが無い」
「それは、、、」
確かに黒い瞳を持つオルと呼ばれている人は、“地の力“に長けているはずだった。
「俺が何をしていたか分かるほどお前が近くにいて、オルが分からない訳が無いだろう」
「周りの人達から聞いたんですよ」
「それも違うな。この国の人達は、他人の行動など気にしない」
「、、、貴方は本当に嫌な人だな」
「何を言う、お前も結構、意地が悪いだろう」
「僕がどうして」
「俺は、精霊達に嫌われているみたいなんだ」
「そうなんですか」
「お前、精霊達に何かしただろう」
「突然、何を、、、」
「"精霊使い"にそんな事が出来るとは思わなかったが、船で関わったのはお前だけだし、お前が何かしたとしか考えられん」
「"精霊使い"は、精霊に何か命じる事など出来ませんよ」
「つまり"精霊使い"は無理でも、"お前"は出来るんだ」
「勝手に決めないで下さい」
これ以上話すと、段々話せない事まで聞かれそうなので席を立って彼から離れる。
自分の瞳の事や、精霊の事など、数えるくらいしか会っていない人に、これほど的確に問い詰められるとは思っていなかった。
島に着いてから三週間。
会いたくないとこの島から離れていた方法まで聞かれては、こちらの世界に遊びに来ることまで出来なくなってしまう。
「何もしないでよ」
「何かあっても、これ以上状況が悪くなることはないぞ」
「エルメニアに、帰る必要があるんだからね」
「嫌な奴ならサッサと帰って欲しいだろう?」
「単に嫌がらせをする人もいるさ」
***
「困っていない?」
“そう!”
“全然~”
「どうして?」
“子ども達が助けているから”
“楽しいよ!”
“みんな喜んでる”
周囲の精霊が我先にと答える。
ミリオネアで精霊の力が使えないという事は、火や水など本当に基本的なものが使えないので、生活する上で大変なはずだった。
それを夜は、灯りが無いならと暗くなればサッサと眠り、水が無くて水浴びが出来ないなら、外で子ども達と一緒になって水浴びをしていると言う。
それを面倒だとも思わず楽しんでいるようだと言われてしまうと、一体自分は何をしているのかと思えてしまう。
おまけにその様子を見て精霊達まで楽しくなっている様で、今では彼の周囲に沢山の精霊が集まっている。
ヒューイの言葉より、彼の願いを叶えたいと思っている精霊もいるようで、片時も離れず彼の様子を伺っている。
「なぜ彼の側に集まる」
“彼が楽しんでいるから!”
“面白い!”
こちらの世界にいる時は、本来見えない者達がヒューイには見えるので、瞳を開いているより閉じている方が都合がいい。
精霊達はヒューイの視界に入ろうと常に集まってくるので、こうして瞳を閉じていれば気配を感じ、声が聞こえてもそれほど鬱陶しいとは感じない。
その分、近づいてくる人に気が付かない場合もあるけれど、、、
「おい、誰と話をしてる」
彼がヒューイに近づきながら話しかけてくる。
「何の事です」
「話をしていただろ?」
「気のせいですよ」
「ふ~ん」
「貴方は、いつまでイビサにいるんですか?」
「気になるのか?」
「別に、、、」
「あと十日はここにいる事になるな」
「他の島に行かないのですか?」
「行って欲しいのか?」
「そうではありませんが、、、毎日、意味もなくぶらぶらするばかりで、退屈しているようだったから」
「へぇ」
彼がヒューイを見て、とても楽しそうに笑う。
「なんです」
「誰に聞いた」
「何の話です」
「俺が、毎日ぶらぶらしてるって事をさ」
「見ていれば分かりますよ」
「だがお前は、俺達が船を下りてから島にいなかっただろ?」
「、、、いましたよ」
「いや、いなかったさ」
「何を根拠に、、、」
「一度会った事がある人間なら、オルがこの島のどこにいたって探せないはずが無い」
「それは、、、」
確かに黒い瞳を持つオルと呼ばれている人は、“地の力“に長けているはずだった。
「俺が何をしていたか分かるほどお前が近くにいて、オルが分からない訳が無いだろう」
「周りの人達から聞いたんですよ」
「それも違うな。この国の人達は、他人の行動など気にしない」
「、、、貴方は本当に嫌な人だな」
「何を言う、お前も結構、意地が悪いだろう」
「僕がどうして」
「俺は、精霊達に嫌われているみたいなんだ」
「そうなんですか」
「お前、精霊達に何かしただろう」
「突然、何を、、、」
「"精霊使い"にそんな事が出来るとは思わなかったが、船で関わったのはお前だけだし、お前が何かしたとしか考えられん」
「"精霊使い"は、精霊に何か命じる事など出来ませんよ」
「つまり"精霊使い"は無理でも、"お前"は出来るんだ」
「勝手に決めないで下さい」
これ以上話すと、段々話せない事まで聞かれそうなので席を立って彼から離れる。
自分の瞳の事や、精霊の事など、数えるくらいしか会っていない人に、これほど的確に問い詰められるとは思っていなかった。
島に着いてから三週間。
会いたくないとこの島から離れていた方法まで聞かれては、こちらの世界に遊びに来ることまで出来なくなってしまう。
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